おい、みんなでいくぞ!
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ぜひご覧くださいませ!
「な……」
僕は思いきり目を見開いた。
この土壇場でのチートコード受諾か。
いつもながら急だが、ここで使わない手はない。あの人たちはいつも僕を助けてくれた。
スキル《チートコード操作》発動。
――&%%$。
僕が心中でそう唱えた瞬間、すぐ近くで眩い光が発生した。
それはすぐさま人の形をなしていく。光が集っていくにつれ、見覚えのある人物ができあがっていく……
「はああああああっ!」
だが、あまりモタモタしていられる時間はない。
レイファーは途端にヴァニタスロアとの距離を詰め、剣を振りかぶった。
その気迫はあっぱれだが――いまの王子は満身創痍。しかも影石という後ろ盾を失っている以上、さっきまでの動きとは明らかに見劣りしている。
「む、無茶よ……!」
レイが真っ青な表情で悲鳴をあげる。
仕方ない。
かくなる上は、僕の《原理破壊》で助太刀を――
「……いや、ここは余に行かせてくれ」
威厳のある声に呼びかけられたのはそのときだった。
オルガント・ディア・アルセウス。
またの名を、アルセウス王国の創始者。
彼は威風堂々たる振る舞いでヴァニタスロアを見上げるや、なんと鞘から剣を引き抜いた。
「……まさか」
王みずから戦うつもりか。
たしかに、古くから伝わる文献には、オルガントとファルアスによる勇姿が多く描かれているが……
「あの馬鹿たれ子孫は余が目を覚まさせる。アリオス殿、迷惑をかけてすまんな」
「いえ、それはいいんですが……」
オルガントはぐっと親指を突き出し。
地を蹴るや、驚くべきスピードでヴァニタスロアに突っ込んでいった。
一方、第一王子のレイファーはヴァニタスロアに剣を突き刺したところだった。
「ガアアアアアアッ!」
だが、当のヴァニタスロアには全然効いていない。レイファーの攻撃に怯むこともなく、その獰猛な腕でレイファーを掴み上げた。
「う、うおあああっ!」
自分より何倍もあろうかという巨人に握りしめられ、レイファーは悲痛な叫び声を発する。骨の折れる音がここまで聞こえてくる。
「ぐううう……! これが罰か……。申し訳のないことをした……レイミラ……アリオス君……アルセウスのすべての民よ……」
「――貴様はそれでも我が血を引く者かぁっ!!」
一閃。
重量のある怒声とともにヴァニタスロアに斬りかかるは、オルガント・ディア・アルセウス。
その威力はさすがの一言だった。
レイファーの一撃にはびくともしなかったヴァニタスロアが、明確な悲鳴をあげて仰け反るではないか。
「ぬおおおおおおっ……」
ヴァニタスロアの魔手から離れたレイファーが、そのまま落下していく。オルガントはそんな子孫をしっかりと受け止めた。
「この馬鹿者が……。そう自棄になるでない」
「な……あ、あなたは……!?」
「なに。余はもう存在するはずのない人間。名乗る必要はなかろう」
「どうして……どうしてあなたが……」
「……そなたならだいたい察しはついているだろう。あそこに類稀なる力を持つ者がいてな。その者の能力じゃ」
「馬鹿な……アリオス君は本当にご先祖様の友人だったと……」
「――やめてくださいよ。話がどんどんややこしくなる」
呆れた声とともに、僕は二人に歩み寄る。
「僕が陛下と友人なわけないでしょう。そんな恐れ多い」
「ほほほ、余が嘘をついたわけではないだろう。レイファーが勝手に《友人》と言っただけじゃ」
「はぁ……」
このドシリアスな状況で、ほんと、いつまでもマイペースなご先祖様だ。
逆を言えば、どんなときにも怯まない精神力を持っている……とも取れるわけだが。
「こほん」
僕は咳払いをかまし、無理やり話題を切り替える。
「レイファー殿下。あなたの罪が消えることはきっとありません。でも……あなたも被害者なんだ。黒幕の正体はわかりませんが……この事件の裏側には、とてつもなく大きな敵が潜んでいる」
「…………」
「だから……死なないでください。本当のアルセウス王国を想うなら、生きて、これから民を導いてください」
「アリオス……君……」
レイファーの瞳が激情に揺れる。
「許されるのだろうか……。こんな……こんな罪深き私が……」
ああ、そうか。
レイファーの本当の性格はこっちなんだろう。感情の読みとれない笑顔の裏側には、僕らと同じ、人生に悩む顔があったんだ……
「――ああ、任せとけ」
ふいに会話に割り込んでくる者がいた。
ダドリー・クレイス。
かつてレイファーに傀儡とされたはずの彼は、輝ける瞳でどんと自身の胸を叩いた。
「マクバ流は破邪顕正の剣! あいつは俺たちでぶっ飛ばすから……あんたはせいぜい休んでな!!」
「……マジか」
……こりゃ驚いた。
あのダドリーがこんなこと言うなんてな。マヌーザ戦を経て、精神的にも成長したということか。
彼だけじゃない。
レイやエムも、僕の隣に歩み寄ってきていた。
さっきまで激戦を繰り広げていたはずだが、全員が覚悟の決まった表情でヴァニタスロアを見上げている。
「ダドリー君……みんな……。私はこんなに将来有望な若者を陥れていたとは……なんと愚かなことを……」
「ふん、なにを言うか馬鹿者」
オルガントが小さく笑った。
「お主も有望な若者のひとりじゃ。我が国を導くためのな」
「はは……なにを……仰いますか……」
そこまで言って、レイファーは意識を失ったようだ。ぐったりと表情を弛緩させ、起きあがる気配もない。
「心配はいらん。気を失っただけのこと」
オルガントはそう呟くと、すこし離れた位置にレイファーの身体を横たえた。
そして改めて、ヴァニタスロアと対峙する。
「申し訳ないが……どうか力添えをよろしく頼みたい。あの化け物は、思念体の姿で倒すには少々辛くてな」
「ええ……もちろんです」
ゆっくりと頷く僕。
どの道、あいつを放っておくわけにはいかない。
ここは異次元空間ではあるものの、前みたいにアルセウス王国に来ないとも限らないからな。
「……というわけだ。レイ、エム、ダドリー。ここが踏ん張りどころだ。絶対に、あいつを倒すぞ!!」
「「おおっ!!」」
仲間たちの威勢のいい返事が響きわたった。
【書籍の発売日が決定しました!】
1月30日に、モンスター文庫様より発売致します!
ただいま予約も開始していますので、ご確認だけでもしていただけたら幸いです。
嫌になるくらい何回も原稿見直して、さらに編集さんからいただいた赤でかなり改良されてます。
ですから自信を持って、《絶対面白い!》と断言できます(ノシ 'ω')ノシ バンバン
予約だけでもしていただけたらめっっっっさ助かります!
ぜひ、よろしくお願い致します。




