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おい、嫌な予感がするぞ

 終わった。


 レイファー・フォ・アルセウス。

 相当の強敵だったが、レイとの連携によって、なんとか倒すことができた。


 ふと横を仰ぎ見れば、ダドリーたちも決着をつけたようだな。

 党首マヌーザが、大の字になって寝ころんでいる。反撃してくる気配はもうない。


 しかも。


「ダドリー。おまえ……」


 あいつの変化は、率直に言って驚くしかなかった。さっきフォムスと戦ったときより、さらに強くなっている。


 そんな僕の視線に気づいたのか、ダドリーはにんまりと笑う。


「どうだ。スキル《白銀の剣聖》……いまならおまえにも負ける気がしねえぜ?」

「そうか。なんなら後で戦ってみるか?」

「おう。いまでもいいぜ?」


 二人して構え出す僕たちに、

「ちょ、二人とも。やめてよ」

 レイが呆れたように仲裁してくる。


「はは……悪い。冗談だよ」

 僕は苦笑を浮かべるや、今度は素直な気持ちでダドリーに手を差し伸べた。

「でも、本当に助かったよ。おまえがいてくれてよかった」


「あん……?」


「あいつ、強かっただろ? ダドリーがいなかったら苦戦していたかもしれない。だからありがとな」


「あ……ありがとうだって……!?」

 ダドリーはなぜかわなわなと身体を震わせると、めちゃくちゃ乱暴な動きで僕の手を握り返した。

「はん! おまえのためじゃねえよ! 俺はただエムちゃんのために頑張っただけだ!」


「……なにあんた、照れてるの?」


「て、照れてるわけないでしょうがレイミラ様!!」


「ふーん」

 意味深にニコニコ笑いを浮かべるレイ。

「ま、いいんだけど。仲が良くてなによりだわ」


「「仲良くはないっ!」」

 僕とダドリーの同時突っ込みが入った。


「ふふっ」

 エムが微笑ましげに僕たちを見つめる。


 ……と、そんなこと話してる場合じゃないんだよな。

 まだすべての事件が解決したわけじゃないんだから。


 僕は改めて、地面に這いつくばるレイファーを見下ろした。


 僕とレイの連携によって、彼を取り巻く漆黒のオーラは消滅した。殺しまではしていないが、相当に深い傷は負ったはず。当分は満足に動けないだろう。


「ぐ……ぬ……!」

 そんなレイファーが、呻き声とともに目を覚ます。

「ぐ……うう……」

 頭をさすりながら、ゆっくりと上半身を起こした。


「ここ……は……」


「レイファー。起きたみたいだな」


「君は……そうか。私は敗れたのだな……」


 どこか諦観じみた表情を浮かべるレイファー。


 正直、安心した。

 また突然暴れ出したらどうしようかと思っていたが、きちんと理性が残っているみたいだな。


「はは……アリオス君は……本当にたいした人間だな。まさか私たちまでをも倒すとは。王国のSランク冒険者を集めても、そう簡単にはできまい」


「ああ……そうかもな」

 僕は頷くと、片膝をつき、レイファーと視線をあわせる。

「……そろそろ教えてほしい。こんなところに来て……おまえたちはなにをしようとしていた? そもそもここはどこだ?」


「…………」


 レイファーは瞳を閉じ、数秒だけ黙りこくると。

 たどたどしい記憶を手繰り寄せるように、ゆっくりと話し始める。


「この空間の詳細は知らない。内なる声に導かれるままに、奥までの道を開発していっただけのこと」


「奥までの道を……開発?」


 レイが兄の言葉を反芻する。


「ああ。当初のアウト・アヴニールは道らしき道もなくてな。私たちが急ぎ開発したわけだ」


 なるほど。

 それでアルセウス救済党や第19師団を総動員したんだな。ここまでの長い道程を考えるに、相当の時間を要したに違いない。


 そしてもうひとつ。

 さっきの王子の証言に、気がかりな言葉があった。


「レイファー。あんたがさっき言ってた……《内なる声》とはなんだ?」


「――我々にのみ聞こえる、数奇な声だ」


 そう答えたのはレイファーではなかった。

 マヌーザ・バイレンス。

 あいつも意識を取り戻したらしく、上半身のみを起こしている。


 マヌーザは「っつ……!」と右腕をさすりながら、続けて言葉を発した。


それ・・の正体が、我々に影石を託した者と同一人物なのか……それは不明だが、内なる声に突き動かされてきたのは事実だ」


「…………」


 状況を整理すると、こうだ。

 レイファーとマヌーザは、《内なる声》とやらに導かれ、この異次元にまでやってきた。


 そしてその声に導かれるままに、この最奥部分までやってきたということか……


「たしかに、ここなら潜伏にはうってつけ、か……」


 実験体をつくるのも、テロリストが潜むのも……ここなら誰にも気づかれまい。


「じゃ、じゃあ……このあとはどうするんですか?」

 エムが当然の疑問を投げかけた。

「アウト・アヴニールの奥まで来て……それで終わりじゃないですよね? まだなにか続きがあると思うんですけど」


「ふむ。その通りだ」


 レイファーはそう言うなり、祭壇に置かれた影石に目を向ける。


 あの影石は――大きいな。

 色や形状は他の影石とまったく同じなのだが、大きさは通常の3倍はありそうだ。見ているだけで寒気を覚えるほどの威圧感である。


「あの影石を、祭壇に設置すること。それが私たちの使命だったようだ。聞くところによると、数千年から存在する強固な鎖を打ち破れると……」


「数千年前から存在する……強固な鎖……?」


 なんだ。

 似たような話を、どこかで聞いたことがあるような……


 ――ああ。数千年前は退けることができたんだがな。討伐には至らなかった――


 マクバ流の創始者、ファルアスの言葉だ。

 数千年前に現れた《大敵》は、ファルアスたちですら討伐が叶わず、退けることで精一杯だったという。


 ――影石は、その《大敵》が現代に遺したものってことだ。だから現代では理解できない現象を起こすことができる――


 大敵が遺した影石。

 それをこの場に置くことで、なにかを縛っている鎖を断つことができる……?


 まさか――!!

 瞬間、僕の背筋に冷たいものが走った。


「…………っ!!」


 急いで祭壇に駆け寄ろうとする。

 ――が、間に合わなかった。

 祭壇に祀られた影石が、突如として不気味な輝きを放ち始め。

 周囲一帯を、漆黒に染め上げていく。

 

 ――解放。解放。

 アヴニールノ末裔、ココ二顕現ナリ。アルセウスヲ絶望ニ染メ上ゲヨ――

 

 と。

 さっきまで壁面だと思われていた箇所に、突如として巨大な二枚扉が出現し。


 そこから、見覚えのある化け物が出現した。


「おいおいおい……! マジかよ……!!」


 ダドリーが泣きそうな声を発する。


 そう。

 いま出現した化け物は、僕にもダドリーにも記憶に強く根付いた大敵。


 孤高の影――ヴァニタスロア。


 ダドリーとの決闘時、影石から現れた魔物だ。


 だが、細部はかつてのそいつ・・・とはやや異なる。

 バトルアリーナ会場で戦ったヴァニタスロアは眼孔が紅く光っていたのだが――いま目前にいるこいつは、不気味な青に染まっている。


「ゴォォォォォォオオオ……!」


 ヴァニタスロアは上体を仰け反らせ、おぞましい胴間声を響かせる。

 相変わらずとんでもない威圧感だ。


「ば、馬鹿な……」

 ヴァニタスロアを見上げながら、レイファーは大きく目を見開く。

「ありえぬ……。私は、私は……いままでこんな化け物を生み出すために動いていたというのか……!?」


「レイファーさん……」


 だが、物思いに浸っている場合ではない。

 あいつの恐ろしさは僕が身をもって知っている。

 このまま放っておけば――間違いなく殺される。


「アリオス君……私に責任を取らせてくれ」


 なんと。

 相当の重傷を負ったはずなのに、レイファーは意地だけで立ち上がってみせた。

「あいつは私が倒す……!! 君たちは逃げろ……!!」


「駄目だ! あんなのと一人で戦ったら……」


 しかしレイファーは聞く耳を持たなかった。

 死を覚悟した表情でヴァニタスロアに突っ込んでいく。


「お、お兄様っ!!」

「く、くそ……!」


 と。

 その瞬間だった。


――――――


 受諾。受諾。

 初代国王より、チートコード《&%%$》を授かりました。

 起動しますか?


――――――


 見覚えのあるメッセージが、僕の視界に浮かび上がるのだった。


本作におきまして、書籍化&コミカライズが決定しました!


いつも読んでくださっている皆様、ありがとうございます。


色々大変ですが、こちらでの更新ももちろん頑張りますので、ぜひブックマークや評価で応援していただければと思います。


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大変なときにポイント上がってるのを見るとかなりモチベになりますので……お手数ですが、何卒よろしくお願いします(ノシ 'ω')ノシ バンバン!

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― 新着の感想 ―
[一言] おお!書籍化もコミカライズもおめでとうございます!
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