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おい、このお姫様、強くなりすぎなんだが

「ヌハアアアアアッ!!」


 人ならざる胴間声どうまごえをあげるレイファー・フォ・アルセウス。


 彼を取り巻く漆黒のオーラが、さらに濃度と大きさを増している。ただでさえ強かった彼が、さらにどんどん強くなっている……


 やはり影石の効果は反則級だな。

 あれを作った《大敵》というのはどれほどの人物なのか……現状では想像もつかない。


「ヌハアアアアアアア!!」


「…………」


 叫び声をあげ続けるレイファーに対しても、レイは微塵も動じない。ただただ、決然たる瞳でもって兄と対峙するのみ。


 と。


「オオオオオオオ!!」


 レイファーは右手を突き出すや、突如、漆黒の可視放射を放った。その周囲を細い電流がまとっており、触れただけでも相当のダメージを喰らうことが予見される。


「あれは……闇属性の魔法か……!」


 知らず知らずのうちに僕は呟いていた。

 その高威力から、相手を痛めつけることに特化した魔法だ。レイの聖魔法と同じく、上位属性に認定されている。


 火、水、地、雷、闇、聖――


 これら属性のうち、最も高威力の属性だな。だから魔法使い同士では、闇属性の使い手は圧倒的に恐れられている。他の属性では勝ち目ないからね。


 だが――そんな闇属性の魔法を、あのレイファーが使えるなんて聞いたことがない。


「これも……影石の影響かよ……!」


 しかもレイファーの奴、自分の攻撃力が落とされていることを感じ取っているのかもしれないな。だから物理攻撃ではなく、魔法に転じたのだろう。


「……っ! 上位魔法……!」


 レイは一瞬だけ驚愕の表情を浮かべたあと、同じく右手を突き出し、神聖魔法を発動した。


 瞬間、彼女の周囲に透明の壁が出現し――

 ドォォォン! と。

 レイファーの可視放射を、丸ごと受けきってみせた。


 その衝撃に、すさまじい振動が発生する。アウト・アヴニール全体が大きく揺れる。


 とんでもない振動だったが、レイ自身は無傷みたいだな。うっすらと目を開け、驚いたように自分自身の両手を見下ろしている。


「…………え? あれ? 私、無事なの……?」


「はは……すごいな。あれは」


 僕も苦笑を禁じえなかった。

 超威力として知られている闇魔法――しかも影石で強化されている魔法――を、完全に防ぎきるなんて。最強クラスの魔術師でもそうそうできないんじゃないか?


「ヌウウウウウウウ!!」


 レイファーは完全に恐慌に陥ったらしい。何度も同じ可視放射を放つが、そのすべてが神聖魔法によって防がれている。

 そのたびに轟音が響き、アウト・アヴニールが揺れていく。


「……お兄様。私は、信じております」


「ヌオオオオオオオッ!!」


 レイファーはなおも闇魔法を放つ。


「……お兄様は聡明な方。いくら影石の効果が強くても……絶対に、絶対に呑み込まれないはずです」


 コツコツ、と。

 絶大な威力を誇る闇魔法をその身に受けながら、レイは少しずつ王子に歩み寄っていく。


「カアアアアア!!」


 それでもレイファーの暴走は止まらない。焦ったように冷や汗を流しながら、ひっきりなしに魔法を打ち込んでいく。


「お兄様……」

「ダアアアアッ!」

「うっ!」


 今度は物理攻撃に走ったらしい。レイファーは焦ったようにレイの頬を殴打する。


「レイ!!」


「……大丈夫。アリオスのおかげで、あんまり痛くないから……」


 そうか。

 僕のチートコードで攻撃力が1/10になっているからな。いまのレイにはさしたるダメージになっていないようだ。


「お兄様。目を――目を覚ましてください!!」

 自身の頬をさすり、瞳に涙を溜めながら、あくまで決然と王子と向かい合うレイ。

「お兄様は……お兄様は本当は優しい方。悪魔に呑み込まれないで! 本当の自分を思い出して!!」


「ワ……ワタシ、ハ……」

「お兄様!?」

「ワタシハ……守ラネバナラナイ……迫リクル脅威カラ……国民スベテヲ……」


 すこしは理性を取り戻したのか、ぽつりとそう呟くレイファー。


 だが。

 より一層大きなオーラが発生し、レイファーの胸部に取り込まれていった。


「ヌアアアアアア!!」

「お兄様!」


 そのときだった。

 僕の脳裏に、聞き覚えのある声が響きわたった。


 ――レイミラさん。彼も《災厄》に取り込まれています。かつて私がエムさんにそうしたように、災厄を引き剥がしてください――


「こ、この声は……」


 どうやらレイにも同じものが聞こえてるみたいだな。目を丸くして立ち尽くしている。


「アリオス、この声って……」

「女神様だ。ラスタール村で、一度だけ見たことあるだろ?」

「あ、あるけど……」


 たしか、あのときはエムの《災厄》を引き剥がすのに一役買ってくれたんだよな。

 何者かに支配されているエムから、その元凶を引きずり出してくれた……


 ――レイミラさん。神聖魔法とは、その名の通り神のみが使える魔法です。現世においては、あなたのみが使えます――


「え……。神様の魔法ってことですか……!?」


 ――そうです。アリオスさんの《チートコード操作》があれば、あなたも神に匹敵する力が扱える。そしてその力があれば……かつて私がそうしたように、《災厄》そのものを引き出すことができるはずです――


「災厄を……!?」


 ――ええ。たとえ影石に呑み込まれていても、その力があれば救えるはずです。どうか、どうか、その力で……――


 そこで女神の声は途切れた。

 例によって時間切れらしいな。本当、いつも来てほしいときに来てくれるというか……


「ヌアアアアアアア!!」


 レイの目前では、レイファーが依然として叫び声をあげている。


 完全に理性をなくしてしまったようだな。

 あいつ自身がレイから距離を取り、ひとり、暴れている。


 そんなレイファーを警戒しつつ、僕はレイの隣に並んだ。


「レイ……いま女神様が言ってたこと……できそうか?」

「うん。なんとなくだけど……やり方が身体に染み着いているっていうか……」

「はは……そうか」


 僕の《チートコード操作》と似たような感覚だな。きっとレイなら問題ないだろう。


「じゃあ、引き剥がした《災厄》は僕が始末する。レイは引き剥がすことに集中してくれ」


「うん……!」


 レイが威勢よく返事をした、その瞬間。

 僕と彼女を、温かな光が包み込んだ。なぜだかわからないけれど、誰かに見守られているかのような、不思議な温かさだった。


「いくよアリオス! サポートはお願い!」

「ああ! 任せてくれ!」


 僕が返事をした瞬間。

 レイの両腕から、いかずちの光が放たれ。

 それがレイファーの身体を丸ごと包み込んだ。


「グオオオオオオアア! ナアアアアアアアアッ!!」


 苦しいのか、レイファーは自身を抱えてもがく。その間にも、王子を取り巻いていた漆黒のオーラが外に放出され――とある一点に溜まっていく。

 もくもくもくもく、と。

 みるみるうちに漆黒のオーラはリング状に形作られていく。


 そして数秒後には、それは見覚えのある物体に変化した。


「クオオオオオ! バカナ! 人ゴトキガ、我ヲ顕現サセルナド――!!」


「……おまえが、レイファーを蝕んでいたものの正体か」


 そんな黒い物体に向けて、僕は堂々と歩み寄る。

 これと同じモノを一度倒したことはあるが、もちろん油断はしない。


「オノレ……オノレ! 人ノ分際デ、我ヲ始末デキルト思ウナ!! 今度ハ貴様二乗リ移ッテヤル!」


 黒い物体は奇声をあげて僕に飛びかかってきた。


 ――が。


「遅いんだよ……!」


 淵源流。一の型。

 真・神速ノ一閃。


「ヌアアアアアア!!」


 僕の放った一撃によって、黒い物体は無惨にも切り刻まれていった。


 


 

クリスマスですが、なにもすることがないので更新しちゃいました(ノシ 'ω')ノシ バンバン


いつも読んでくださっている皆様、ありがとうございます。


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