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こんな僕でも、立派な剣士になれるんだろうか

「え……?」


 ユウヤが素っ頓狂な声をあげる。

 さっきとは別の意味で驚いているようだ。


「アリオス君……? いまのは、いったい……」


「…………」


 正直なところ、僕も驚いていた。


 指定Aの怪物――ジャイアントオーク。すなわちAランク冒険者が三人がかりでも敵わない、恐るべき魔物。


 そんな化け物を――こうも簡単に押し倒すことができるなんて。


 やはりこの能力、通常の《攻撃力アップ(小)》の範疇を超えている。強くなりすぎだ。


 だが。

 物思いに耽っている場合ではない。


 まずは負傷者の手当てだ。ジャイアントオークが転んでいるいまがチャンスである。


「大丈夫ですか? 意識はありますか?」


 女性冒険者のそばに駆け寄り、片膝をついて声をかける。


「う…………」


 意識はあるようだ。

 だが危険な状態である。

 このまま放っておけば――最悪、命にかかわるだろう。


「失礼します!」


 僕は急いでポーチからエリクサーを取り出し、中身を冒険者の口に流し込む。


 エリクサー。

 すぐに身体の傷を癒してくれる希少品だ。 


 戦場に向かう前、レイがこっそりくれたものである。


 希少品たるエリクサーなんておいそれと使えるものではないが、さすがに人を見殺しにするわけにはいかない。


「っ……!」


 かっと目を見開く女性冒険者。

 エリクサーを飲んだことで、急に意識が鮮明になったのだろう。


「い、痛くない……? あなた、もしかしていま飲ませてくれたのは……」


「ええ。エリクサーです」


「そ、そんな……私のためなんかに……申し訳な……」 


「ヌオオオオオオオッッ!!」


 女性冒険者の声は途中でかき消された。


 怒り狂ったジャイアントオークが、凶悪な咆哮ほうこうを轟かせてきたからだ。その音圧に、心なしか周囲の空間さえ歪んでいるように見える。 


 これは――だいぶ怒ってるな。

 ひとつしかない目が血走っている。


「っ……! 化け物め……!」


 女性冒険者は腰をおとし、警戒したようにジャイアントオークから距離を取る。


 そんな彼女の前へ、僕は一歩前に進み出る。


「あなたは仲間たちの救護にあたってください。こいつは――僕ひとりで戦います」


「な、なにを!!」

 女性冒険者が大きく目を見開いた。

「あなたが強いのはわかります! ですがこいつも化け物! さすがにひとりでは無理があります!」


「……ではそのまま戦うのですか? その剣・・・で」


 ちらりと、僕は彼女の剣に視線を送る。


 こう言ってはなんだが、かなりボロボロだった。

 ジャイアントオークとの戦闘によるものか、切っ先もすっぱり折れている。あれではまともにダメージが入らないだろう。


「……ふう」

 女性冒険者が観念したように息を吐く。

「……気づかれていましたか。ちゃんと隠しているつもりでしたが」


「まあ、これくらいのことなら」

 一応、剣の道に進もうとしていたからね。これくらいは見抜けないと。

「大丈夫です。僕だって死ぬ気はありません。なんとか切り抜けて、逃げきってみせますよ」


「……そうですか」

 女性冒険者は折れた剣を鞘に戻し、僕の瞳をまっすぐに見据える。

「最後に教えてください。勇敢な剣士たる、あなたの名を」


「アリオスです。アリオス・マクバ」


「アリオス・マクバ……」

 僕の名を聞いて、冒険者は大きく目を見開く。

「そうでしたか。あなたが……」


 そしてくるりと身を翻し、最後にぼそりと呟いた。


「私の名はカヤ・ルーティス。周囲がなんと言おうと、あなたは立派な剣士です。どうか……生きて」


 そう言い残して、カヤは仲間たちのもとに駆けていくのだった。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前話で「助けて」とか「死にたくない」とか言っていた冒険者とイメージが違う振る舞いに思える。 「逃げなさい」の方が合っている様な気がします。
[一言] むしろワンパンで終わらなかったのが驚きだわ 火属性魔法で一番強いの使ってたら一発で終わってたろ 何故手加減する必要のない相手に攻撃力アップ(小)を選ぶ 近くにいる人を巻き込むからか?
[気になる点] まずは負傷者の手当てだ。ジャイアントオークが転んでいるいまがチャンスである ???ノーダメージの尻餅ついただけの強敵が目の前に居るのに手当てのチャンスなの? いやまあ実際時間有ったけ…
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