表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/188

おい、剣聖の道を諦めるな!!

「ふふふ……ははは……」


 ひとり残されたフォムス・スダノールが、妙に怪しげな笑いを浮かべる。自分の頬を垂れる血を一舐ひとなめめするや、奇怪な瞳でダドリーを見据えた。


「素晴らしい。さすがは伝説に伝わりし剣聖候補たちだ。私など遠く及ばぬ、果てなき境地に立っているな」


「ば、ばっかおまえ! こいつと一緒にすんなよ!」


 ダドリーは不満げに僕を指差す。


「それについては同感だね」

 僕も負けじと肩を竦めて言った。

「僕もダドリーとだけは一緒にされたくないよ」


「お、おい、そういうこと言うなよ。傷つくだろ」


「……そこで傷つくのかよ」


 相変わらず訳のわからん奴である。


「ふふ、ははは。素晴らしい! 素晴らしいぞおまえたち!」

 フォムスは両腕を広げるや、なおも余裕綽々とした笑声を響かせた。

「これでようやくあの力・・・を試せるというものだ! ことわりを超えた――神の力を!!」


 神の力。まさか。

 僕が目を見開いたときには、フォムスは片腕に影石えいせき――漆黒の宝石を掲げていた。


 なるほど……そういうことか。


 影石は使用者に尋常ならざる力を与える。奴の不自然な余裕っぷりはそれが原因か。


「――だが奇妙だな、フォムス。影石はアルセウス救済党が持っているという話だったが、なぜおまえが持ってる?」


「ふふ。おまえが知る必要はないッッッッッッ!!」


 フォムスは狂った叫び声を響かせるや、影石に絶え間なく魔力を流し込んでいく。


 ドクン――と。

 影石から闇色の波動が次々と放たれていく。

 影石から放出する漆黒のオーラが、丸ごとフォムスを包み込んでいく……


 そして。


「ハァァァァァァ……」


 数秒後には、最悪の化け物が誕生していた。


 漆黒の霊気を身にまとい、瞳さえも紅く変貌したフォムス・スダノール。恐ろしいことに肌の色も変わっているのか、ところどころで金色の紋様が不気味に光っていた。


「…………」


 なんだ。

 戦闘力的には、さしたる変化は見られない。

 いったいなにが変わった……?


「へっ、なんだよテメェ。変わったのは見た目だけじゃねえかよ」


 ダドリーはなんの危機感も感じないのか、ヘラヘラと笑い続けたまま。白銀のオーラを迸らせながら、再び戦闘の構えを取っている。


「おい、気をつけろダドリー。あいつ……なにかが違うぞ」


「関係ねえ。あいつがどんなに強くなろうが、問答無用でぶっ飛ばしてやらぁ!!」


 雄叫びとともに走り出すダドリー。

 そのスピードはさすがだが、しかし――


「無駄だ」


「うげっ……!」


 ダドリーは途中で見えない壁に遮られたかのように、大きく弾き飛んだ。


「痛ってて……。なんだぁいまのは」


「クク。泣いて驚くがいい。古代に伝わりし伝説のスキル――万物反射だ」


「ば、万物反射ぁ?」


「そうだ。おまえたちは私に……傷ひとつつけることはできない」


「はん! ばぁか! んなわけねーだろうがッ!!」


 そしてダドリーは再び突進するが、さっきと同様、見えないなにかに弾き返されてしまう。


「うがあああああ!」


 以後、様々な方法で攻撃を試みるも、ことごとく返り討ちに遭ってしまう始末だった。


「ぜぇ……ぜぇ……う、嘘だろ……!?」


 右胸を抑えて呻くダドリーに、不適に笑うフォムス。


「フフ。しかしダドリーよ。おまえはたしかに強いが、自分の才能に溺れきっているな。攻撃の軌道は丸見えで、隙も見つけ放題だ」


「な、なんだと……?」


「――今度は私の番だ。せいぜい苦しむがいい……!!」


「な、う、うわああああああっ!!」


 その宣言通り、それ以降、ダドリーは著しく劣勢に陥ってしまった

 ダドリーの剣はことごとく弾かれ。避けられ。

 その隙に、的確な一撃を見舞われてしまうのだった。


 そしてこれこそが――僕が決闘時に見出したダドリーの弱点でもあった。


 彼のステータスはたしかに強い。

 だが剣を学び始めて間もないゆえに、太刀筋は未熟そのものなのだ。視線がそのまま攻撃の軌道になっているので、まるで防いでくれと言っているものだ。


 ましてや現在のフォムスは《万物反射》という異常な能力を手に入れた状態。


 こんなの――勝てるわけがないのだ。


「はぁ……はぁ……くっそ……!」


 ダドリーは早くも満身創痍まんしんそういになってしまった。

 服はボロボロ、全身傷だらけだ。疲労もピークに達しているのか、剣を持つ腕がぶるぶると震えている。


「ありえねぇ……。こ、この俺が、こんな……!」


「ふふ。ダドリーよ。悲しいなぁ。おまえは結局、何者にもなれない半端者でしかないようだ」


「な、んだって……!?」


「生みの親に捨てられ。リオン殿にも捨てられ。剣聖にもなれず、さぞ楽しい生活を送っているだろうなぁ?」


「ぐ、ううううううううっ!」


 泣き叫ぶダドリー。

 もう反撃する体力も残っていない様子だ。


「ち、違う……! 俺は剣聖になるんだっ……! 憧れの剣聖になって……それで……っ!!」


「ふふ、惨めなものだ」

 低い笑みを浮かべるフォムス。

「だが、そんな苦しい生活にも終止符を打ってやろう。我が剣で、絶望に喘ぎながら逝くがいい」


 つかつかとダドリーに歩み寄り、剣を掲げるフォムス。

 対するダドリーは懸命に動きだそうとしているようだが――もはや一歩たりとも動けない様子。


「死ね。偽物の剣聖よ――!!」


 そうして振り下ろされたフォムスの剣を。

 ガキン! と。


 ――二人の間に割り入った僕が、静かに受け止めた。


「な、なんだと……? アリオス・マクバ、なにをしている」

 剣を押し込みながら、フォムスが苦笑いを浮かべる。

「そいつはおまえにとって憎き男だろう。なぜ助ける必要がある」


「……さあな。自分でもわからない」

 言いながら、僕は背後でへたり込むダドリーを横目に見やる。

「ただ、家族に捨てられた悲しみは……僕にもよくわかってしまったから」


「アリオス、おめぇ……」


 そう呟くダドリーの瞳は、心なしか涙に濡れていた。


「ダドリー……よく頑張った。ここからは任せてほしい」


 言いながら僕は反撃に転じる。

 押し込んでくるフォムスの剣を弾き返すべく、全身に力を込める。


 と。


 スキル《万物反射》が発動したのか、フォムスの全身が黒く輝く。


「はっはっは! 愚か者めが!! 私に攻撃は通じない! 何度言えばわかる!!」


「……悪いな。似たようなスキルなら、僕も持ってる」


 スキル発動。チートコード操作。


 ――無敵時間(極小)。


 次の瞬間、《万物反射》によって襲いかかってきた衝撃波を、僕も同じく弾き返した。


「ぬ、ぬあああああああっ!!」


 さすがにこれを弾き返すことはできなようだ。

 衝撃波を丸ごと喰らったフォムスが、大きく吹き飛んでいった。


 


【恐れ入りますが、下記をどうかお願い致します】


すこしでも

・面白かった

・続きが気になる


と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。


評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます。


今後とも面白い物語を提供したいと思っていますので、ぜひブックマークして追いかけてくださいますと幸いです。


あなたのそのポイントが、すごく、すごく励みになるんです(ノシ ;ω;)ノシ バンバン


何卒、お願いします……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


▼【※超速報※】 「コミカライズ一巻」が【 2022年9月30日 】に発売されます! 下記の画像クリックで書報ページに飛べますので、ぜひ今のうちに予約してくださいますと幸いです!▼ 明日9/30、チートコード操作のコミカライズ一巻が発売します! 超面白い内容となっていますので、ぜひお手に取りくださいませれ(ノシ 'ω')ノシ バンバン ↓下の画像クリックで商品紹介ページに飛べます! i000000
― 新着の感想 ―
[一言] これは……逆デルタアタック!
[一言] 反射能力持ちのやつにはカラシでも目に塗りつけたくなる
[一言] >「そいつはおまえにとって憎き男だろう。なぜ助ける必要がある」 憎いから助けない、それも悪いとは思わん。 ただ家族に捨てられたダドリーを放ておくことはできなかったのだろう、アリオスは。 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ