おい、緊張感が台無しだぞ
★
王都アルセウス。
地下通路にて。
「来たぞ、アリオスだ!」
「全力で迎え撃て!!」
侵入した僕を、兵士たちが武器をもって出迎える。
――予想通りだった。
レイの言っていた通り、地下通路には多くの兵士が常駐していた。
表向きの理由としては、《大型の魔物が出没した》ため。だから地下通路に通じる扉は固く封鎖されていた。
だが、僕にそんなものは通用しない。
女神から授かった二つ目の最強スキル――《原理破壊》。
これを用いれば、世の理をことごとく蹴散らすことができる。今回の場合は《転移》を使ったわけだな。この能力さえあれば、鍵を使わずして内部に転移できる。
「おい、アリオスはどこだ!?」
「急に消えたぞ……!」
現在、兵士たちは大混乱に陥っていた。
そりゃそうだろうな。
奴らにしてみれば、僕はいきなり姿を消しているように見えているはず。
「おい馬鹿! 後ろだ!」
「へ……」
遠くにいた兵士が絶叫するが、もう遅い。
「おおおおおっ!!」
僕は数人の背後に転移すると、剣の柄に手を添え、抜きざまの一撃を見舞う。
淵源流、一の型。
冥府ノ一閃。
「かはっ……!」
「う、嘘だろぉ……!?」
かすれ声とともに倒れ込む兵士たち。
もちろん、攻撃の際に《攻撃力アップ(小)》をかけることも忘れない。これさえあれば、鍛え抜かれた兵士といえど一撃でノックダウンすることができる。
「くっ、誉れ高き19師団を一撃でだと……!」
「うろたえるな! 相手はひとり! 連携してかかれば、決して敵わぬ相手ではない!」
「イ、イエス・マイロード!!」
一瞬にして覇気を取り戻したのはさすがというべきか。
――だが、それでも僕は負けない。
スキル発動。チートコード操作。
使用する能力は《水属性魔法の全使用》。
ファルアスとの訓練後に身につけた新能力だ。
火属性の魔法だと、周囲の建造物にまで被害を及ぼしかねないからね。だから戦闘時にはあまり使ってこなかったけれど――水魔法ならその点は安心だ。
「む……! くるぞ、アリオスの魔法だ!」
兵士のひとりが大声をあげる。
「作戦Cを施行! チームCは前へ!!」
「イエス・マイロード!!」
数十名の兵士たちが前列に出る。そしてそれぞれ魔法を発動させるや、総員で半透明の壁をつくりあげた。
――なるほど。
魔法に対する防御魔法か。しかも質もかなり高そうだ。
さすがは王国軍なだけあって、動きが統率されている。僕に対抗しうるため、あちらも訓練を重ねたんだろうな。
いま、僕の目前には、見るも巨大な壁が作成されていた。
「さあ、やるならやるがいいアリオス! いかに上位の魔法といえど、容赦なく弾き返してくれるわ!」
うん。
あの防御魔法には相当の自信があるようだな。
たしかに正面から撃つのは得策ではないだろう。
であれば、背後から回り込めばいい。
スキル発動。《原理破壊》。
――――――
《原理破壊一覧》
・飛翔
・転移
――――――
選ぶ能力はもちろん転移。
これの有効範囲は半径5メートルのみだが、何度か繰り返せば奴らの背後に回り込めるはず。
「なっ……! また消えた!」
「ま、まさか……っ!!」
恐慌をきたす兵士たちだが、もう手遅れだ。
兵士らの背後に回り込んだ僕は、誰にも邪魔されることなく水魔法を発動。
上級魔法。ウォーター・ウォー。
瞬間、見るも巨大な一本の水流が、兵士たちに襲いかかる。
「う、うわあああああああ!」
「嘘だろぉぉぉぉぉおお!!」
「おい、誰だよこんなガバガバ作戦考えたのぉぉぉお!」
「ガバガバじゃない! アリオスが化け物すぎるんだっ!!」
悲鳴をあげながら水流に蹂躙される兵士たち。我ながらとんでもない勢いである。実戦では初めて水魔法を使ったが、火属性に負けず劣らずの威力だな。
そして数秒後には、すべての兵士たちが無力化されていた。
立ち上がる者はひとりもいない。身体をぴくぴくさせながら、ただ突っ伏すのみ。
これでいったん落ち着いたかな。
僕は地下通路の出入り口にまで歩み寄ると、内側から鍵を外す。すぐそこで仲間たちが待機しているはずだ。
まず僕が先陣を切り、常駐している兵士たちを全滅させる。その後に仲間たちと合流する――というのが、今回の作戦内容だ。
「ジャジャーァン!!」
一番近くにいたのは、あらかじめ召喚しておいた古代兵器――ウィーンだった。
ウィーンはかなり目立つが、この場所自体がそもそも閑散とした地域であるため、問題なく事前に召喚できたわけだな。
「アリオス様! 私、オカシクナッテシマッタカモシレマセン!」
「は? おかしく?」
「ハイ! 《大勢ノ兵士 VS アリオス様ヒトリ》……。コノ状況デ、私ハアリオス様ノ心配ガデキマセンデシタ!!」
「うんうん。同感」
レイもうんうんと頷いている。
「アリオスが負ける状況が、まったく想像できなかったわ」
「お、おまえたち……」
思わずため息をつく僕。
「練度の高くない兵士が多かっただけだ。油断はできないぞ」
「フフ、第19師団ヲ《練度ガ低イ》トハ……サスガデスネ」
含み笑いを発する兵器。
こいつは相変わらずだな。いるだけで場の緊張感を和らげてしまう。
「こほん」
僕は咳払いをして無理やり会話を中断すると、全員を見渡して言った。
「これより、王城への突入を敢行します。目的はアルセウス救済党の殲滅と、レイファー第一王子の陰謀阻止。油断することなく突入していきましょう。特にウィーン!」
「ハイッ!」
またしても緊張感のない返事をする古代兵器だった。
本作におきまして、書籍化&コミカライズが決定しました!
締め切りが近いので、絶賛追い込み中です。
休憩時にはやっぱりアイス(ノシ 'ω')ノシ バンバン
今後とも面白い作品を届けたいと思いますので、ぜひブックマークや評価で応援していただければと思います。
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