革ジャンドクロとお話し2
灌木や草を掻き分けつつ、足元に気を付けて降りていく。
「トンネル、異常に長かったよな〜」
「後ろからは何にも来てなかったぜ。車一台追いかけて来ねえ。」
「どの辺から紛れ込んじまったんだろう?」
「さてねぇ…俺が(目が覚めた)って思ったのは、バイク停める少し前ぐらいだぞ?」
「その時に話しかけてくれても良かったんじゃないか?」
「イヤイヤ、毅さあ…バイクで走行中に突然知らない声が背中から聞こえて来るってどうなのよ?
しかもトンネル内だよ?
ホラーじゃねぇ?」
「確かに…」
なんだか、ちょっと馴染んできた。
会話を重ねると、コイツは正に昔から俺をよく知っている友人の様で。
割と俺が覚えていない様なことまで事細かに記憶?していた。
俺が革ジャンを着て行動している時に、強く感情が揺さぶられた記憶。
感動とか喜びと哀しみとか怒りとか、感情の起伏が激しいタイミングの出来事が、すり込まれた様に鮮明に記憶というか、記録されているみたいだ。
「なぁ、お前さ〜…」
「あー!毅! お前とか、革ジャンとかじゃなくてさ、なんか呼び名付けてくれよ!
せっかく会話できる様になったのに、侘しいじゃねえか!」
「侘しいとか…もう立派な知性体じゃん…
ん〜…それもそうか…名前ねぇ…」
「ポチとかタマはイヤだ」
しねえよ。
そんな名前に。
「性別的なのはあんのか?」
「イヤ、革ジャンだしな。一応、背中の絵に引っ張られてる感じはするんだよな。
女の方が良いならそっちに寄せるぜ。」
「寄せるって…何をだよ?
そういえば、何でドクロの方が喋ってんだよ?
金髪美女じゃない?そこは空気読んでさ。」
「面白いかと思って。」
「チェンジお願いします」
「それが無理みたいなんだよね〜」
マジか!
「最初に話しかけた時に毅が意識したのは女の顔じゃなくてドクロの方だったんだぜ?
そしたらさ〜そっちで固定されたみたいなんだわ。」
なんてこった…俺のせいだったのか…
「ああ!でもよ、外見は変えられるんだぜ?」
「?どういう事だ?」
「例えばだけどな、犬とか猫とかの形になることもできるぜ?」
「形になるって?そりゃどうやるんだ?」
俺が答えた途端に脱げた。
革ジャンの奴が勝手に…
「おい!急に脱げるな!びっくりするだろうが!」
「悪いな。どうせなら見たほうが早いだろう?
やって見せようってんだよ。ホラ。」
言うが早いか、革ジャンがグルリと勝手に丸く纏まったかと思うと四足で立ち竦む何かがそこにいた。
「お前、それじゃ猫にも犬にも見えねえよ…」
画伯と言われてしまう様な…
そんなナニカ。
革ジャンにはデザインセンスが無いようだった。