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知らない山

「とりあえずこれで良いか…」

シッシーバーに括り付けていたキャンプ道具などを外し、待避エリアの柵にチェーンロックでバイクを繋いで思わずため息混じりに呟いてしまう。


何が悲しくて再度手に入れたばかりの愛車を置いて行かなきゃならないんだ…


「ゴメンな…」

あの日とおんなじだ…

タンクに触れながらつい謝ってしまった。

「連絡ついたら取りに戻るから!どうか盗まれませんように!」

トンネルの薄明かりに、タンクが鈍く光った気がした


非常出口の看板下には、ぽっかりとコンクリートむき出しの穴があった。

そこから結構な勾配で階段が続く。

出口は見えない。

「運動不足には厳しい展開だな…」


黙々と足元だけを見て登り続ける。

階段の幅は割と広く、大人二人ぐらい余裕で並べて登れそうだ。

手摺りがないからちょっと不安だけど…


いい加減喉も渇いたし、腹も減ってきた。

外に出られたらまずは腹拵えだな。

キャンプ道具一式にはクッキングストーブやコッヘルなどのほか、インスタントコーヒーや少しばかりの食材が入っている。

小腹を満たすぐらいなら充分だ。


休み休み登り、1時間は経っただろうか?

扉だ


鉄の扉だ


ドアノブは無くて、両開きの扉に閂が掛かってる。

鍵は無いようだ。

コレ、反対から開けられるのか?

まぁ、俺には開けるしか選択肢は無いけど。



閂を外し扉を押し開く…

「ギギッ!ギギーッ!」

重い!

片方の扉に肩から体重をかけて押すッ!

「ギギギギッ!」

「ギーーーーッ…」

開いた!



大きく息を吸い込む…


濃い緑の空気とも言おうか、木々の香りがする新鮮な空気だ!

「やっと出られた…」

久々の外の光に目が眩む。


だんだんと目が慣れて来ると周りの景色が見えてくる…

出口の前は6畳ぐらいのスペース

コンクリートにしては歪みのある灰色の地面。

空は辛うじて見えるが、高い木々に囲まれている

周りは背丈ほどもある下草や灌木で道などは見えない。

「どこから降りれるんだ?コレは…」

思わず呟いてしまう。



ひとまず荷物を降ろし、ペットボトルの水をあおる。

半分ぐらい一気に飲み、人心地。

ストーブとコッヘルを出して湯を沸かす。



スマホは通じない。圏外だ。

山梨県内なんだろうけど。

時間は9時ちょっと前。

家を出たのが6時過ぎだから結構時間経っているな…


沸いた湯にインスタントコーヒーの粉を入れ、息を吹きかけつつ一口。

「ふー……」

ホッとする香りと味だ…


「知らない山の中…下手に動くと遭難の危険もあるか…どうしたら良いもんかね」






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