発見
新学期が始まった。俺は晴れて2年になったが、全くと言っていいほど目当ての女は見つけられない。どうでもいい女は寄ってくる。この見た目のせいだろうか?
変に女どもが寄ってくるせいで風紀を取り締まる教師に目をつけられた。その教師は何処か神に似た雰囲気を纏う不思議な人ではあるが目当ての人間ではないので取り敢えず無視することにした。
いつまで経っても見つけられない。こうダラダラとしている暇はないのだと分かってはいるもののどうしようも無い。何せ情報が少なすぎることが原因だ。せめて今の名前くらい教えてくれてもいいじゃないか。
今日はいつもとは違う道で帰宅した。いつもは通らない公園の近くを通って。もちろん無意識のうちに足が向いていた。ただそれだけの事だった。
いつも見ないその公園は雰囲気が少しだけ違うように思えた。子どもが来るような所ではない。かと言ってカップルがイチャつくような場所ではない。そんな雰囲気だった。後になってから知ったが、そこは公園ではなくとある名家が無料で解放している庭だそうだ。どうりであんな雰囲気だった訳だ。
その雰囲気とはかけ離れたような会話が俺の耳に入った。はじめは聞き流そうと思ったのだが、どうも同級生の声らしい。何を話しているのか無性に気になって聞いてしまった。
「もう、嶺ったら今度は金平糖食べてるの?ついさっきチョコチップクッキー食べてたのに?」
「あれとこれとは別物なの!」
「はいはい。昔っから同じことばっかり言ってる」
「言わせているのは美樹でしょ?」
「それはあんたの体を心配してだよ!弁当だって甘いものばっかり!その上、金平糖は酷い時で一瓶開けるとか───」
成程、嶺と呼ばれた方は金平糖を初めとする菓子が好きなのか…それにしても、美樹とかいうのは過保護すぎるようだ。何においても結局のところ本人が何もしない限り、周りが言っても無駄なのだ。放っておけば良いものを、何故そこまで面倒を見るのだろうか…俺には分かり兼ねる。
「!やっぱり金平糖が一番美味しい!」
「ちょっ、人の話聞きなさいよ!」
その会話に呆れてその場を後にしようとした時、嶺の金平糖を食べ幸せに浸っているような顔を見て頭の中で何かが音を立てて噛み合い動き出す音がした。それはまるで、パズルの足りなかったピースがはまるかのように歯車が合わさり、それぞれの歯車がそれぞれの仕事をまっとうするかのようだった。
そして、その音とは別に一人の声が聞こえた
『確証はない。しかし、あの者が嶺の方かもしれぬ』
と。やっと尻尾を掴めたわけだ。