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Automata: Program.  作者: 巫 夏希
第一章
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第六話 レジスタンス⑥

「今日も調査ですか?」

「今日も、って何よ。今日も、って。別に毎日依頼することがあるんだからいいでしょう。何も無かったらあなたたちただ飯食っているだけなんだからね」

「ただ飯と言われても燃料ペース的には一週間ぐらい給油しなくても問題無いぐらいに、効率は良いんですけれどね……」

「ん? 何か言ったかしら?」

「いえ、何も」

「……とにかく、今回もあの『タツマキの村』に調査に向かって欲しいのだけれど」

「この前、っていうか昨日、使者を送るって言っていませんでしたっけ?」

「直ぐに使者を送れる程楽じゃないのよ。……ところで、一緒に使者の役割も担って貰えないかしら?」

「え?」

「だって、機械人形が少ないし直ぐに使える機械人形ならあなたたちぐらいしか居ないのよ……」

「そんなこと言われたって!」

「良い。分かった」

「ちょっとローズ!」

「ほらほら、ローズちゃんもOKって言っているし! だったらこれプレゼントに持って行ってちょうだい! 機械生命体も使える固形燃料だから。これ持って行けば先ず喜んでくれるはずだから!」


 そう言って。

 そのまま部屋から追い出されてしまったシロとローズ。

 仕方なく、シロとローズはタツマキの村へと向かうのだった。



 ◇◇◇



「あらあら! また来てくださったんですね! 嬉しいですー! それに固形燃料までプレゼントとは! 有難いです! 燃料はなかなか手に入りませんからねえ」

 そう言って嬉しい表情を浮かべるタツマキ。受け取った燃料はそのまま使うという訳にはいかないだろうに、どのように使うのだろうか?


 そんなことを考えていたら、タツマキが何かを持ってきた。


「これは?」

「我々の技術で開発しているフィルターです。きっと機械人形の皆さんは、フィルターが無いと生きていけないと聞いたことがありますから……。あ、でもあなたたちはフィルターをつけていないですね? フィルターが無くても問題無くなったんですか?」

「新型だから、フィルターをつけなくても問題無いんですよ。でも、旧型の機械人形も未だ居るから有難いです。これは受け取っておきます」


 これで交換取引は成立。

 問題はこれからだ。これからどのようにしていくか、という問題がある。山積みな問題だらけではあるが、一個一個片付ければ何の問題も無い。山積みな問題であろうとも、その問題は一つ一つに分割すれば小さな物なのだから。


「……それにしても、問題は山積みですねえ。そう簡単に機械人形と機械生命体で友好関係を築けるとは思っていませんでしたけれど。まさかここまで簡単にできるとは思っていませんでした。……ところで、ええと、お名前を伺っていませんでしたよね」

「シロです。こちらはローズ」

「どうも」


 ようやっとローズが口を開いたと思ったら一言だけだった。


「シロさんにローズさん…………。おお、良い名前ですね! 分かりました。この名前はメモリーにしっかと刻んでおきましょう」


 メモリーに記録する、ではなくメモリーに刻むというのがどこか人間くさい表現だ。

 まさか……人間の知識も持ち合わせているのだろうか?

 いや、それは考えすぎだ。機械生命体は宇宙人が作り上げた、いわば、人間にとっての機械人形と言っても良い。そんな存在を簡単に許してはならない。友好関係を築いたとはいえ、その関係はいつ崩壊してもおかしくないのだ。


「ところで、最近、こちらで問題が起きている話ってご存知ですか?」


 昨日ここに来たばかりなのに知るはずが無いだろう。そう言いたかったが、そう言ってしまうと、関係性が崩壊してしまうので、言わないでおいた。


「いえ、知りませんが」

「実は、このコミュニティの北側に城塞があるんですが、その城塞に住んでいる機械生命体は、我々と協力関係を築きたくないんです。機械生命体の中でも仲が悪いのが居ると大変ですよね」


 何だか、他人のようなことを言っているけれど、自分のことだよな?

 シロは思ったが、それも言わずにしておいた。


「それで私たちは力を持たないので……お願いです。一度その場所を見に行って貰うことは可能ですか?」

「え?」


 何で僕たちが? と言おうとしたがそれも溜飲。


「駄目ですか。駄目ですよね。急にそんなことを言い出したら……」

「良いよ。見に行っても」

「ちょっとローズ!?」

(急に何を言い出しているの? これは、任務とは別の内容だよ!)

(調査をする。という点に関しては同じなはず。だから問題無い)


 それはそうかもしれないが。

 さらにローズは話を続ける。


「私たちが見に行って。何か問題があれば報告する。何も問題が無かったとしても……そのときも報告する。それで構わない?」

「ええ、ええ。全然問題ありませんよ! ああ、まさか見て貰えるなんてほんとうに有難い! 私たちは、機械生命体の中でも珍しく、力を持ちません。武器も全て焼却しましたから、むざむざ殺されに行くようなものです。ですからそれが出来ないと思っていたのですが……いやはや! ほんとうに有難いこおです。ありがとうございます!」


 未だ『行く』としか言っていないのに、まるで物事が解決したかのような言い草だ。


「分かりました! 分かりましたから……。それじゃ、見に行きます。見に行って、何があるのか報告します。それで問題無いですよね?」

「ええ、ええ。問題ありません!」


 結局、彼らはタツマキの村の北側にある城塞へと向かうことになるのだった。



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