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Automata: Program.  作者: 巫 夏希
第一章
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第五話 レジスタンス⑤

「私の名前、タツマキって言うの。良い名前だと思わない?」


 こちらから特に聞いてこなかったのに、そんなことを言ってきた機械生命体、もといタツマキ。どうやら機械生命体のくせにお節介焼きのようだった。


「でね、でね! 私たちには子供も居るの! 挨拶させても構わないかしら?」

(子供? そもそも機械生命体には子供を作れるプログラムなんて存在しないはずだけれど……。もともとそのようにプログラミングされているのかも。だとしたら、宇宙人は変わった存在だと思うけれど)

「ええ、良いですよ」


 サンプルは多ければ多い方が良い。そう判断した彼は、そのまま話を受け流そうとせず、聞くことにした。ちなみにローズはもうとっくに話を受け流しているのか、辺りの草花を弄っている。


(ローズ、もう少し話を聞いている『振り』をして!)

(……だって暇だし)

(だって暇だし、じゃないよ! 情報収集が僕たちの仕事じゃないですか!)

「ねえ、聞いている?」

「はい! 聞いてますよ。それで? 子供達はどちらへ?」

「ここに居るわよ」


 気づけば、タツマキの隣に二人の子供型機械生命体が立っていた。

 わざわざ戦闘させるなら大人だけでも良い気がするのに、どうして子供の機械生命体を用意するのだろうか。宇宙人の気持ちが分からなかった。


「ソラとリクっていうの。良い名前だと思わない? 思わない?」

「……ええ、良い名前ですね」


 もうここまで来たらできる限りのサンプルを取ってやる、という気持ちだった。

 そしてできる事なら早く終わって欲しい、という気持ちも彼の中であった。

 しかしながら、そう簡単に終わってしまう程、彼女の話も中身がスカスカな訳ではない。


(ローズ! 何とか話を聞いている振りをしてくださいよ!)

(……拒否する。だって面倒臭そうなんだし)

(そりゃそうかもしれませんけれど!)

「それでね? この前蝶を捕まえたの。蝶を捕まえて、育てているのよ。……ただその蝶がこの前死んでしまってね。ひどく悲しんだわ。私も、ソラも、リクも。ほんとうに、ほんとうに哀しかったわ」

「そうですか。それは確かに悲しかったですねえ」


 もう話を流す気満々だった。


「……あなた、ちゃんと話を聞いている? 何かさっきから話が長くてごめんなさいねえ!」

(長いと思っているなら、適当なタイミングで切り上げろよ!)

(……それを私に通信しても無駄、だってことぐらい分かる?)

「そうだ! ここの話をしていないわよね。ここの名前は特に決まっていないのだけれど、村長である私の名前から『タツマキの村』と呼ばれているわ! まあ、別にそれぐらいはどっちでも良いわよね?」

「タツマキさんが村長なんですか?」

「ええ、そうよ。私がこの村……小さなコミュニティの長を務めているわ。私が初代の村長。だからタツマキの村。まあ、普通の名前よね。あまり気にしなくても良いわよ。分かっているから、それぐらいは」

「そうですか。なら、この村の説明をして貰っても良いですか?」

「ええ、良いわよ! では、簡単に説明していくわね!」


 ……その後、説明は三十分以上にわたって続くことになるのだが、シロやローズは知るよしもなかった。



 ◇◇◇



「調査、お疲れ様、……何だ、その疲れたような様子は」

「時間的に考慮して貰えると幸いです!」

「ああ。話し好きな機械生命体でも居たのかな?」

「その通りですよええ! もしかして何かカメラでも装着されてますか!?」

「まあまあ、あまり気にすることでもないでしょう? 収穫はその分あったのではなくて?」

「確かにそれは言えてますけれど……。先ず、タツマキの村と呼ばれているコミュニティですが、こちらに敵意は抱いていない様子です。それどころか、こちらと友好条約を結びたいレベルだとか」

「そうなの。それは有難いことね。機械生命体とでかいパイプが出来るのは有難いことよ。……これからの戦争を続けていくにあたって、ね。でも、罠の可能性は?」

「それは無い。と思う。あくまでも私の持論だけれど」


 初めてノワールとの会話で口を開いたような気がするローズ。

 それを見てシロは若干驚いていたが、直ぐに冷静を取り戻し、報告に移る。


「罠の可能性は、僕もないと思っています。なぜなら友好的過ぎる。カードを出しすぎている。もし敵意を抱いているなら、そんなにカードを切らないと思います。カードを切っているということは、あちらも隠し球が無いと言うこと。そうだと思いませんか?」

「まあ、確かにその通りね……。だったら、こちらから特使を送るわ。友好条約を結びましょう、って。そしたらあちらも喜ぶんじゃない? ムラサキ、後よろしく!」

「かしこまりました」


 いつの間にか居たムラサキは、そう言うと外へ出て行った。


「……それじゃ、報告は以上かしらね」

「一個だけ質問したい。どうして私たちにあの村の調査を依頼したのか。別に他の機械人形に依頼する手もあったのでは。どうして?」


 唐突に。

 口を開いたローズは急にそんなことを言い出した。

 確かにシロも気になっていたが、そこまで話をすることでは無いと思っていたからこそ。

 もっと早く口にするべき議題だったのかもしれないから、と思っていたからこそ。

 いずれにせよ、その話題をするのは少し早計過ぎた、というのがシロの持論だった。


「……何ででしょうね」


 そして、予想通り。その言葉を煙に巻いたノワール。その反応は若干予想は出来ていた。そんな反応をしてくる可能性があると思っていたから、シロは口に出さなかったのだ、と。


「それじゃ、僕たちは部屋に戻ります」

「ええ、お疲れ様でした」


 そうして、シロとローズはノワールの部屋から出て行くのだった。



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