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Automata: Program.  作者: 巫 夏希
第一章
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第四話 レジスタンス④

「はー、彼女、話が長かったですね、ローズ。良く耐えられてましたね? ずっと無言を貫いていたように見えましたけれど」

「あまり。そういうことは言わない方が良いと思う。私も確かにそう思ったけれど。無言を貫いて我慢した方が。楽だと思ったから」

「そうですか? ああいうのを我慢すると駄目なんですよ、ローズは! 一応言っておくと僕たち機械人形にも人間と同じように感情とストレス感知プログラムが入っていて……」

「一応。言っておくとあなたも。五月蠅いと思う。気づいていないだけで」

「え!? 今、なんて、なんて言いましたか、ローズっ!!」

「着きましたよ。ここがあなたたちの部屋です」


 ムラサキの言葉に遮られて、彼らは部屋に到着した。


「え? 僕たちの部屋ってことは……一つだけ?」

「ごめんなさい。部屋は広く取ってあるんで! でも別々の部屋は用意出来なかったです! すいません、場所の都合で」

「別に。いい」

 ローズはずかずかと中に入っていく。

 それを見ていたシロは、仕方なしと言いたげな表情を浮かべて中に入っていった。

「ああ、そうだ。私のトークンアドレスを教えておきますね」


 そう言って、識別番号を言っていくムラサキ。

 識別番号――別名、トークンアドレス。簡易な連絡をする時にその番号があれば脳内で連絡することが出来る非常に便利なものだが、識別番号と言われているとおり、その番号によって機械人形がどの機械人形であるかを簡単に分かってしまうという裏表を持っている。まあ、あまり気にすることでも無いのかもしれないが。

 トークンアドレスを聞いたシロは、自分から発信を行う。直ぐにムラサキに繋がった。


(接続、確認しました! もし何かありましたら、トークンアドレスで私を呼び出してくださいね!)

(了解、ムラサキさん)

(私の名前にさんは要りませんよー。ムラサキ、と呼び捨てにして貰って結構です!)

(分かりました、ムラサキ)


 そうして、簡単な連絡を済ませて。

 ムラサキは外に出て行った。



 ◇◇◇



「機械生命体は文明を築いている。それは、月面政府が考えている以上に壮大で歪な、ね」

「壮大で……歪?」


 次の日の朝、ムラサキ経由でノワールに呼び出されたシロとローズはそれを聞いてそれぞれ違った反応をしていた。

 目を丸くして、驚いたような様子を見せていたのはシロ。

 対照的に何も考えていないような様子で、ただぼうっとしているような様子を見せているのはローズだった。


「ああ。そして、機械生命体も完全に我々機械人形を嫌っている訳ではない。一部の機械生命体だけが機械人形を嫌い、争っていると言えば良いかな。だから、今回君たちにはそこの調査をお願いしたい」

「…………ほんとうに、問題無いんですか?」

「私が嘘を吐いていると思うかね?」

「いや、思いはしませんけれど……」

「だったら、従って貰えるかしら?」


 それを聞いて、何も言い出せないシロとローズだった。



 ◇◇◇



「座標的にはこの辺りですね……。いったい何があるのかと思っていたら……」


 わいわい。

 がやがや。

 そこに広がっていたのは、小さな公園だった。

 公園だけではない。公園の周囲には木や藁で出来た小さな家が何軒か軒を連ねていた。


「何だ、これは……? 確かに、機械生命体が文明を作っているとは言っていましたけれど……」

「あら。あなたたちは機械人形ではなくて?」


 言ってきたのは、一人の機械生命体だった。丸く整ったボディは、人間でいうところの女性のような形をしている。

 機械生命体の話は続く。


「あなたたちは、機械人形でしょう? そうでしょう? ああ、嬉しい! 私たちの文明を認知してくれる機械人形がやってきてくれるなんて! ほんとうは私たちのほうからご挨拶に窺いたかったのだけれど、あそこって、かなり面倒なところでしょう? だから、どうしようか悩んでいたのよ!」

「あ、あの……」

「我々は。ここの調査にやってきただけ。あくまでも調査だけだから。交渉に来たつもりではない」

「あら、そうなの……? ちょっと残念……」


 機械生命体は少しだけしょんぼりとした表情をした。

 というか、機械生命体には表情があるのか。そう思ったシロだった。シロも、いわゆる機械人形にも感情はあるのだけれど、ここまで事細かな感情を抱ける機械生命体が居るのも珍しい、そう思ったのだ。


「だったら、私たちの文明のことを教えて差し上げますね! この文明がどういう文明なのかを。私たちが、あなたたちに敵意を持っていないということを!」


 こうして。

 成り行きから彼らは機械生命体の文明を調査することが出来るようになったのであった。

 調査といえども、やることは変わらない。ただ確認して、採取できるものは採取して、できる事なら話し合いで解決する。

 後者はなんとかなりそうだが、問題は採取だ。採取をしても問題無いかと聞いたら、


「ええ、良いわよ! できる限り、私たちも協力させてもらうわね!」


 協力と言われてしまうと、何だか硬くなってしまう。

 ちょっとした小競り合いも予想していたからかもしれない。

 いずれにせよ、協力して貰えるならこちらとしても有難い。そう思ったシロはできる限りのサンプルを採取し始めるのだった。



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