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VOL.03:引越し

 ちひろとみちるも4歳になり、少しずつ物事の分別もついてきたころ――

「おひっこし?」

 ある日の夜、さとみたち3姉妹は、両親である俊之とちづるからいきなり引越しの話をされていた。

「そうよ。お隣の竹崎市に新しくおうちを買ったの。いま暮らしているこの家もだいぶ古くなっちゃって、そろそろあちこち直さないと壊れちゃうからね。だから、その間の仮住まいみたいなものよ」

 ちづるが言うとおり、現在一家が暮らしている松海市内でも3本の指に入る広さをもつこの洋館だが、建てられたのはちづるが生まれるよりも前の話だったらしいために、老朽化が進み、本格的な修繕が必要なまでになっていたのだ。

「そこで、だ。今はこの広い家の中で自由に魔法の修行をさせてきたけど、今度の家はここと比べるとだいぶ狭くなる上に、住宅地のど真ん中だから、ご近所さんもいっぱいいるんだ。だから、向こうの家では魔法はほぼダメってことになるよ。さとみはもうお姉さんだから大丈夫だろうけど、ちひろとみちるは大丈夫かな? 魔法を使わない、って約束できる?」

 俊之は、3姉妹の目線までしゃがむと、3人の目を見て言った。

「わかった! 私は大丈夫だよ!」

「あたしたちも! ね、みちる!」

「うん!」

 さとみ、ちひろ、みちるの3姉妹は、それぞれ元気いっぱいに頷いて返事をした。



 それから数日後、一家は竹崎市にある新居へと引越してきた。

「おーい、さとみ、ちひろ、みちる。お隣に挨拶に行くから降りてきなさい」

 ある程度荷ほどきが終わったところで、俊之が上階(うえ)の部屋をあてがわれた3姉妹を呼んだ。

「はーい!」

 3人は元気よく返事すると、階段をドタドタと駆け降りてきた。

「こらこら、女の子なんだからもう少しおしとやかにしないと……。お隣の市原さんには、ちひろとみちる、2人と同じ年頃の男の子がいるって聞いたぞ? 元気なのはいいことだけど、おてんばな女の子は男の子に嫌われちゃうよ?」

 俊之は苦笑しながら、3人に注意をした。

「はーい……」

 とたんにしゅんとして、反省している様子の3人だった。


「こんにちは、隣に越してきた真野ですが」

 俊之が隣の市原家のチャイムを鳴らして呼びかけると、

「はいはい、今出ますよ、っと……」

 などと言いながら、サンダルをつっかけて壮年の男性が出てきた。

「どうも、今日引越してきました真野俊之です。こっちが妻のちづると、長女のさとみ、次女と三女は双子で、ちひろとみちる。ほら、ご挨拶しなさい」

 俊之が挨拶すると、ちづるもペコリとお辞儀をし、さとみたち3姉妹も前に出して挨拶するように促し、それぞれがお辞儀をした。すると、

「これはどうもご丁寧に。私は、市原優佑(ゆうすけ)と申します。ちょっと、待っててくださいね。こちらも妻と長男を連れてまいりますので」

 優佑は、いったん家の中へ引っ込み、30秒ほどでまた出てきた。

「お待たせしました。妻の絵美(えみ)と、長男の峻佑です。ほら、峻佑。新しいお友達だよ」

 優佑が峻佑に挨拶するよう促しても、峻佑は優佑のズボンの裾をつかんで隠れたまま、どうしようか考えているように見えた。と、じっと見つめるちひろとみちるの双子の姉妹と目があった。それで意を決したのか優佑のズボンを放して前に出てくると、

「い、いちはらしゅんすけ、4歳です! えっと――」

 峻佑はとりあえず自己紹介してみたが、相手の名前がわからないことに気づき、赤面して固まってしまった。

「あたしは、ちひろ。まのちひろ。おんなじ4歳よ。よろしくね、しゅんすけくん!」

「あっ、お姉ちゃん先にずるい! 私はみちるです。よろしくね、しゅんすけくん!」

 そんな峻佑の様子を見て、姉妹は自分たちがさっき挨拶したときは峻佑がいなかったことを思い出し、助け船を出す意味で改めて自己紹介した。

「えっと、ちひろちゃんと、みちるちゃん。うん! よろしく!」

 困った顔をしていた峻佑だったが、姉妹の名前がわかると、ぱあっと顔が明るくなって、2人の名前を確認するように呟き、よろしくと言った。



 それからというもの、晴れた日は外で、雨の日は家でと、ほぼ毎日のように峻佑とちひろたち姉妹は遊んでいた。時々ではあったが、姉のさとみも加わって4人で近くの公園へ出かけて遊び、その時はたいていさとみも含めて全員泥まみれになったりし、両家から笑いが絶えることはなかった。

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