脱獄
高く分厚い灰色のコンクリート塀が刑務所を取り囲んでいる。
長く服役している囚人からすれば、何の変化もない見慣れた灰色のコンクリート塀など味気もない。また、刑務所にやってきたばかりの囚人でも、三日と見れば直ぐに飽きるだろう。
ある日、昼の休憩時間にコンクリート塀の上部から、囚人服やカーテンを結び合わせた簡単な布をつたい、一人の囚人が降りてきた。その囚人に、中庭にいた囚人が尋ねた。
「せっかく脱獄に成功したものを、何故また戻ってきたんだ?」
降りてきた囚人は頭を掻きながら答えた。
「俺も塀に登るまではわからなかったのだが、ここは無数の刑務所が密集しているらしく、俺は隣の刑務所の塀を越えてきたんだ」