始まり
日本 某所 某部落
夏が終わる時期で涼しくなり始め落ち着いた日が続いていた。デニムジーンズにボロボロのミリタリーシャツを着た中年の男性がゴミを出して缶のビールを飲みながら道端を歩いていた時に道の角で作業服姿の男性がしゃがみこんで何かしているのを目撃した。
「おい、あんたそこで何してるんだい?」
ビールを飲んでた男性が作業服の男性に声かけるととてつも無い光景を目に焼き付けてしまった。何と男はトイプードルのような犬を喰い尽くしていたのだ。まるで骨つき唐揚げを食べるかのように。
「おい、正気か?」
ビール呑みの男性が逃げようとすると犬を喰ってた男は彼に飛びかかって首元を食いちぎり始めた。ちぎれた肉片を食してその場を去った。首元を食いちぎられた男は血を吐きながら眠気に誘導されるように目をつぶって倒れた。
3日後 日本 九州
自衛隊を辞めて害虫駆除業を職にしている青年、水無秋水は仕事がたまたま休みで一人旅をしていた。ジブリ系のアニメを連想する綺麗な観光スポットに足を踏み入れ木の幹にもたれかかって深い眠りについた。昨日の激務で疲れたということもあって眠気が残っていたのだろう。
目が覚めて見ると背景が変わっていることにびっくりした。なんと変な建物に入っていた。夢なのかわからない。他の人間の姿も確認できる。他の人も自分がいつの間にか違うところにいる事に気付き動揺していた。他の人間達の中にはオレンジ色の囚人服の白人の人と刺青を入れた日本人のヤクザとそれとどこにでも居そうなごく普通の人たちが集められていた。
「ここはどこだ?なんで俺がこんなところにいる?さっきまでサツの署にいたはずなのによぉ」
ヤクザの男がめっちゃ騒がしく怯えていた。
東堂拓海
広域指定暴力団組員。先ほどまでは警察署で取り調べされていた模様。
ジミー
アメリカのアルカトラズ刑務所にいた囚人。アイルランド系。罪状はギャング殺し。
トニー
同じくアルカトラズ刑務所にいた囚人。メキシコ人。不法入国と警官殺しを現行犯で見つかり他の警官に逮捕される。
そして水無秋水
元自衛官。今は害虫駆除業。なんの取り柄も無いどこにでもいるしがない男。
みんなが集まったところで黒いスーツ着てサングラスをかけた白髪の男が紺色の丈夫そうな服にライフル銃を持った護衛を連れて現れた。
「みなさん改めてこんにちわ。私ここの責任者を務めるトリプル6と申します。本名は大人の事情で言えな〜い。という事でよろしくです。」
スーツ姿の男はみんなをバカにしたように挨拶した。
「てめぇ、舐めやがって」
ヤクザの東堂がスーツ姿の男に飛びかかったが護衛の黒服男に張り倒された。
「これでは、ゲームのご説明をしまーす。今、貴方方は地図に載っていない謎の島に連れてこられたわけです。今あなた方がいる地図の南端にたまに私達の船が来ます。期間は3日与えます。そこでサバイバルしてもらいます。本当は一週間としたいところだけど何かかわいそうなので親切心から期間を短くしました。くれぐれも殺し合いをさせるゲームでは無いので御安心を。3日後には先ほど言った通り私たちが乗る船が来ます。そこでゲーム完了となります。ところでVTRを見てください。」
スーツの男が陽気に説明した後、画面には島の街の様子が映し出され革ジャンにジーパンを履いた悪そうな男がリボルバーを持って人を撃っていた。撃たれた者は怯むがまた彼に向かって行く。
「来るな。来るなぁぁぁぁぁ」
そう叫んでリボルバーを発砲した。
カチリッ
不運にもリボルバーの弾薬は尽きたようだ。そのまま撃たれた人は彼に近づき腕を掴んで首を咬みつき革ジャンの男は断末魔の叫びを上げて血を吐いて倒れた。
「何だよこれ?打たれても死なない。しかも咬みつく。まるでゾンビじゃねえか。」
東堂が動揺を隠しきれずに唖然としていた。
咬まれた革ジャンの男は起き上がり呻き声を上げてカメラ目線に睨んだ。囚人2人はニヤニヤしていた。
「みなさん、お分かりですか?病原菌に侵され噛んで仲間を増やし宿種の子孫を残すために動き回る怪物がいるのでくれぐれも気をつけてください。私達は彼のことを感染者と呼んでます。先ほどの革ジャンの人と同じ目に合わないことを祈るばかりです。」
スーツ姿の男トリプル6は満面の笑みで説明し終えるとさらにサブマシンガンを持った護衛が現れた3日分の食料と水分、大きめのサバイバルナイフ、地図、救急品、スマホと充電器とイヤホン2つ入ったリュックサックを渡された。もちろん軍用手袋も入っていた。
「ハンデーギャップでククリナイフかマチェットか選んで各人ととってその場を出てください。私達を殺ろうなんて下手のことをしてると痛い目に遭うからね。」
みんなトリプル6の言うことに従って外に出た。
「おい、兄さん、名前は何ていうんだ?」
「水無秋水です。」
「ここに、来る前は何をしていた?」
「一人旅をして秘境巡りした際、眠りについて目覚めればここにいました。」
「そうか。俺は東堂拓海。地元で弱々しくヤクザをしてたが警察に捕まり取り調べを受けて捜査官が去って居眠りをして目覚めればここにいたさ。しかもこの島にはゾンビみてぇな化け物がいるんだろう。何としてもここを脱出しないとな!」
2人は会話をして前へ前進した。
南に行くにはひたすら前進めばいけないことは無い。問題はさっきVTRで見た感染者だ。奴らに出くわさないことを祈ろう。秋水は地図を確認した後、周囲を確認しながら感染者と遭遇しないように最善の注意を払いながら移動した。
一方、囚人のジミーとトニーはククリナイフを持って草を切り仲間らニヤニヤして東堂と秋水とともに移動していた。
「ここを出るはことができたら金もらえるのかな?」
「何とも言えんな。何か裏がありそうだぜ!」
2人の囚人は英語で話している。
ククリナイフはもともとネパールの少数民族のグルカ族が昔さながら民生品として草切りなどで用いており東南アジアでもグルカ兵と呼ばれる傭兵や軍隊も使用していることで有名だった。映画にも度々登場する武器になり得る代物だった。
今、みんながいる場所は港町で建物がいくつかあった。まず小さな建物に入り食料と武器を探し見つかったのは缶詰めと缶切りデッキブラシ3本と包丁にガムテープだった。
「包丁とガムテープとデッキブラシの柄で槍が作れるよ。ゾンビがいるのが本当ならこれで頭を潰せば何とかなるかも」
秋水は槍を作りそれを2人の囚人に渡した。囚人のトニーは槍の使い勝手を試すようにして振り回していた。
「こいつは名案だ。秋水。わざわざ危険を冒さなくても良い」
トニーは刑務所にいた頃を思い出した。刑務所内は白人と黒人、ヒスパニック、アジアンで人種別に振り分けられていた。人種間の内部抗争を避けるためだ。探し同じ人種同士の抗争は絶えなかった。アメリカ人とロシア人が殴り合ったり日本人とベトナム人が刃物で切りつけあったりメキシコ人とブラジル人で睨みあったりが激しく続いた。時には完全武装の看守が来ないと治らない時もあった。「何もしなければ舐められる。舐められたらおしまい」と心の中で悟ったトニーは割れたガラスや壊れた模型のパーツで武器を作ったりして身を守っていた。トニーにはそれなりのサバイバルスキルはある。
東堂はククリナイフを構えながら他の部屋を捜索した。中には釘と針金などを見つけリュックサックに入れた。缶詰を開封しみんなで食事を始めた。中身はツナに野菜煮とコンビーフ。かなり当たりくじを引いた気分だった。
「こいつはイケる。なかなか旨い。これさえあれば何とか今日は何とかなりそうやな。それに期間は3日だから。」
白人の囚人ジミーはかなり満足したようだ。
「感染者が見当たらないな。」
秋水は不思議そうな気持ちになりつぶやいた。すると約50メートルぐらいの距離に人の姿があった。
「誰か居るぞ。」
「どこだ?あっ、本当だな。よく様子を見てみよう!」
4人は匍匐の姿勢で遠くの人を見てみた。何か動きがおかしい。よろめいている感じがするし服も血まみれだった。
「まさか感染者か。何てこった。」
ジミーは頭を抱えた。感染者らしき人は入院着みたいなのを着ていた。どうやらどこぞかの患者らしい。
ジミーは喧嘩に自信があったのか槍を持って感染者らしき人を確認してもし感染者だったら殺す勢いで近づいた。
感染者はゆっくりとジミーに近づいて行き餌を求めるかのように移動を始めた。
「これでも喰らいやがれ。化物め!」
ジミーは暴言を吐きながら槍を感染者の頭に刺して撃退した。感染者はピクリとも動かなくなり後ろに倒れていった。
「まさかゾンビが本当に居るとは!バイオハザードかデッドライジングのゲームにしか存在しないものだと思ってたわ」
秋水は驚きの表情で動揺していた。
次は少し大きめの廃墟の建物に入るとあらゆるものが散乱していた。中は袋や木材などが多く落ちており東堂は前の建物で手に入れた釘を角材に取り付けて金棒みたいな鈍器を製作した。角材もまあまあ長いしよっぽどのことがない限り折れることはないだろう。
「長居しても時間の無駄だしそろそろ出ようぜ!日本人の旦那。」
トニーが片言の日本語で言うと秋水と東堂は出る準備を整わせてみんなで建物を出た。
先を進んでみると森林になるが木々に囲まれたかのように木製の建物が多く存在していた。まるでキャンプ場みたいだった。4人とも警戒しながら建物の中に入ると釜とショットガンを発見した。ジミーはショットガンを拾い弾が入っているか確認して使う弾の種類を確認した。どうやら12ゲージ弾と呼ばれる一般的な弾薬を使うそうだ。弾は7つしかなかった。
「これじゃ足りないな。ここぞという時じゃないと使えないし念のために取っておくか…」
ジミーは弾薬をポケットに入れてショットガンはリュックに入れた。
「あまりむやみに発砲しないほうが良い。感染者は音で反応するかもしれん。」
「そうだな。ひとまずショットガンは後回しやな。」
ジミーとトニーは感染者をやたらと警戒していた。
感染者の姿はまるでゲームや映画に登場する俗にゾンビというものそのものだった。本能のまま正常な人間に襲いかかって仲間にしようとするのだ。
「奴ら地図には載っていないとある所の島と言っていたな。俺たちを試す実験なのか?」
「分からんな。3日後には船が来るというがあてにもならない。国の極秘実験なのか?それとも秘密組織の策略なのか?それが気になる。」
東堂と秋水は自分たちを導き出した者の正体を気にしていた。
ジミーが持っているショットガンはアメリカでは一般的に使われているレミントン社のM870だった。それのミリタリー仕様にM4ストックで改造したような物だった。グリップも握りやすくなっており扱いやすい。
ショットガンと釜の他の使えそうなものが無いのか捜索していた時、東堂がみんなに警告した。
「おい。お前ら気をつけろ。感染者が2体俺らのところに向かってきている。」
「ショットガンの出番が来たか?見せてもらおう威力を。」
「やめておけ。他に奴らがいるかもしれん。音で寄って来るぞ。」
「一体ずつ槍で頭を潰そう。」
みんな、攻撃態勢に入り心の準備をした。感染者は黒のカーゴパンツに防弾ベストみたい物を着ていた。いかに警察の特殊部隊が来てそうなアーマーだった。腕が片方欠損していた。もう1人は緑色の軍服みたいな服を着ていた。
「まずは片方の腕だけの奴を倒そう。」
ジミーは槍で奴の頭を潰しもう1人の緑の軍服感染者の額を刺して倒した。
「2体のゾンビの持ち物検査でもするとしますか?」
秋水は防弾ベストの中を漁り始めた。見つけたのは旧ソ連製のトカレフと呼ばれるピストルだった。日本の暴力団で広く使われている代物だ。マガジンポーチを探ると2つの弾倉が見つかり弾も入っていた。トカレフを調べてみると口径は9×18ミリだった。ロシア版9ミリパラベラム弾だ。
「トカレフはヤクザのお得意武器だろう。」
秋水は東堂に差し出した。
「お前は要らないのかよ?」
「俺は使い方は分かるか不安だ。あんたなら裏社会でお世話になったかどうか分からん。」
東堂は秋水から受け取った。
緑の軍服の感染者の持ち物を調べてみると12番ゲージ弾が出てきた。ジミーは大喜びで鷲掴みで回収してまたポケットに入れていた。
「俺はついてるぜ。神に感謝だな!」
M870ショットガンに弾を装填した。
建物を離れてまた移動を開始するとログハウスのような建物を見つけジミーがM870を構えて先頭に立って入って行った。中に迷彩ズボンをはいた感染者の姿があった。ジミーはストックで感染者の顔面を押し叩いて怯ませた後に前蹴りで後ろに倒した。そして起き上がろうとする感染者の頭をサバイバルナイフで刺して動きを止めた。
秋水と東堂は他の部屋を捜索してトイレも調べた。建物の中には作業服と迷彩柄のベストや作業用のヘルメットに米軍払い下げの古い迷彩柄の戦闘服が何着か置き去りにされていた。
「なかなか良いもんがあるじゃねえかよ。俺たち運が良すぎだろ!こんなシチュエーション、映画にも見たこと無いぞ。」
東堂は興奮していた。2人の囚人は米軍払い下げの迷彩服に着替えた。さすがにオレンジ色の囚人服のままは嫌だから。
秋水が隅に置かれていたボックスを開けると米軍が仕様しているM4A1カービンアサルトライフルとMP5サブマシンガンが入っていた。各銃2つずつ入っておりおまけに弾薬を込められた弾倉が沢山入っていた。
トニーはM4アサルトライフルを手にとって弾倉を装填した。
東堂は蛇模様のジャンパーを着ていたがあまりにも汗臭さを感じ上だけ迷彩ジャケットに着替えた。秋水はリュックサックに迷彩服を入れて弾薬もありったけの分入れてMP5を手に取った。
何故、迷彩服と武器が沢山あったのか秋水には理解ができなかった。他の生存者が拾って集めたのか?それとも軍隊が派遣されていたのか?なんか気になっていた。
幸い感染者は走るわけでもなくトロトロとしたノロさだったから助かった。もし走るゾンビなら確実に勝算は無いだろう。今のところ他の生存者と出くわしていない。自分らだけなのだろうか?もし他にいるのなら出来れば助け合いたいし心強い。
みんな何かしら迷彩柄の物を身につけており、まるで民兵集団みたいだった。迷彩の柄は昔のデザインということもあり緑色の一般的な迷彩柄だった。古着屋に行けば買えるような代物ばかりだ。
「確かゾンビは音に反応すると聞いたような気がするな。でも銃があることだし出来れば頼るべきやな。」
トニーがそう言うと4人全員は銃を手に持った。
森林を抜けたぐらいの平地に行くと感染者が十何匹か群れをなして行動をしており彷徨っていた。ジミーがM870ショットガンをポンプを引き発砲した。
ショットガンの12ゲージ弾を食らった感染者の顔は吹き飛び撃たれた感染者はひざまづいて倒れた。東堂が感染者の頭をトカレフで狙撃。感染者はバタバタ倒れていく。
「まるでシューティングゲームじゃねえかよ。ここに来たのが楽しく感じるぜ。」
ジミーはショットガンを楽しそうに乱射して感染者を殺していった。
「頭を狙え。せめて顔を撃てば死ぬ。そこが弱点だ。」
秋水はMP5サブマシンガンを単射で発砲して感染者の顔を狙い撃ちしていった。感染者の顔は砕けて血が吹き出た。
感染者は一匹だけならどうにでもなるが群れをなしてくれば脅威の存在となる。おぞ回しき団結力で成り立っているようだった。感染者は何匹も4人の男たちに群がっていき本能のまま襲いかかる。