表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
詩集♡季映(ときばえ)  作者: 詩織
13/170

朝の匂い(後)




180度遮るものなく



見渡せる穏やかな海、



なだらかな稜線を連ねる島々、



さざ波にただよいし夜光虫



夜の闇に堕つる星を拾う











「もう 行くの?」



「ああ…」




微睡みの中 目覚めると雨が降っていた。




「今度は いつ?」



と、

聞きたい言葉を「コクン」と飲み込む…





友人には、



「お互いに独り身なんだから 」

と言われるけれど………



寂しい過去を抱えた男と


辛つらい現実を抱えた女の間には、



細い一本のリボンが


よく似合うのかもしれない。








あなたに抱かれているときは


時が止まってしまえばいいのにと


祈るように願う わたし…




そんな気持ちを汲むように


狂おしいほどの


接吻くちづけをする あなた…





たとえそれが


どんなに唇を噛みしめた


恋であったとしても









「ふふふ♪(笑)」


泣き出してしまいそうな気持ちを

忍おし殺して笑う。




「ん?」




「、、、気をつけて…」




「ああ…」

「ありがとう♪」




「君も、」




「ん♪」




「あっ、」




「ん?」




「ううん、こんど、こんど話すわ。」




「(笑)ん、わかった♪」




つまらない話を先延ばしにする癖


まるで、”こんど”が、


来ないかのように。





別れ際に過よぎる寂しさが


彼女を不安にさせる



また、こんどと言いながら


哀しそうな顔をする。



「じゃあ、」



「ん、」






一歩 外に出る



波の音が心地いい





いつのまにか止んだ雨の代わりに



空が真っ赤に燃えていた。



恐いぐらいの朝焼けの海をひとしきり眺め




ヘルメットを被り


走り出す。





厳冬に為なりを潜めてた


さまざまな匂いが脳髄に響く


空と海が近い


波の調べは


呼吸のように止まることはなく


湿った潮風のべっとりとした

匂いにつつまれる。


それにバイクの排気ガスが加わる。





海岸線をフルスロットルで


右に左に駆け抜ける。





俺は、


なにから逃げているのか





死神に魅入られたように、







大自然の営みの中で


俺がどんなに

一喜一憂しようと


空のしたには変わることなく


海がある。







海岸線を抜ける頃



東の空が白み始める。




やがて、


潮の匂いはなくなり


都心の渇いた匂いの中を走り


コンクリートの埃っぽい匂いと


錆びかけた鉄の匂いに包まれる頃






陽が昇り。






空はグレーに薄く。




交差点の喧騒に身を晒しながら感じる



朝の匂い





「今年は暑くなりそうだな、、、」


蒸れたメットから流れる汗が塩辛い。





それは置いてきた

あいつの涙なのかもしれないと思った、




往く夏を刻む。







挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ