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八。異様な学園生活開始

「みんな、よく聞いてくれ!大変なことが起きた。あの有名な『ヴィーナス家のワガママ姫』がこの平和な学園に侵略してくる! 来年からは、より一層気を引き締めて学園生活を送るように。呑気に過ごせるのは今年までだ」

癒し系の雰囲気を持った教師は、これ以上ないくらい真剣な顔して言った。


ヒロインのいない学園生活は、なんにも特筆することもないごくごく普通としか言えないものでした。

私エレクトラ・アースは、通常12歳から魔力持ちの子どもの入学が義務付けられるプライスレス学園に10歳から通っています。

これは、私が無詠唱で魔法を行使できること、デレクお兄様がすでに学園に通っていること、ネイラお姉様が学園に入学することから特例として10歳から入学することになったわけです。


さて、このプライスレス学園の入学条件ですが、「魔力持ちの子ども」と「学園卒業生からの推薦」があります。

学園卒業生からの推薦というのは、魔力のない子どもを親がプライスレス学園に入学させたい時に、知り合いの卒業生から推薦してもらう方法です。

ただし、なぜか身内に対しては使うことができない。

なので、この学園卒業生からの推薦というのは、ほとんどが貴族のお金持ちが金に物を言わせて卒業生から推薦状を購入します。

純粋に卒業生が、将来性を見込んでその子を推薦するというのはめったにありません。

乙女ゲームでは、この学園卒業生からの推薦という入学の方法はありませんでした。

いくらゲームと現実は違うと理解していても、現実のヒロイン様のためだけに世界が用意した『ヒロイン補正』としか思えません。

乙女ゲームという、乙女の夢が詰まった?らしい世界なのに、夢を粉々に破壊する入学方法って一体...

この世界に神様がいたとして、神様は一体何がしたいのでしょうか?

さて、こんなことを脳内で語っている理由は私が12歳になった今年から乙女ゲームの舞台であるこの学園に、乙女ゲーム時期にヒロインが転入してくるからです。


乙女ゲームでのヒロインは、魔力過多による体力低下でドクター・ストップがかかり、体力が学園生活に耐えうるまで入学を待っていた状態でした。

現実では、病弱なだけで学園入学を待つほどではありません。

そして、魔法に選ばれなかったヒロインは当然のように魔法を扱うことができなかった。

それでも、ヒロインの両親は自分の出身校であるプライスレス学園に自分の子を入学させたかった。

なので、権力や金に物を言わせてとか、あの手この手でヒロインをプライスレス学園に入れようとしていました。

だが、そう簡単にはいかなかった。

ヒロインの『ワガママ姫としての評判』を高位のお貴族様まで聞きつけていたからです。

結果、元両親は自分たちより身分の低い貴族をありもしない罪で陥れてから、恩を売るようにみせかけてその貴族から『プライスレス学園卒業生から推薦状』を得たわけです。

大人の世界って、汚いですね...


ヒロインが学園に侵略してくると決定してからは、国の上層部たちと学園関係者たちで会議を何度も開き大変だったそうです。

議題は、『ヴィーナス家のワガママ姫から子どもたち(男の子)を守る方法』です。

結果だけ言うと、大変残念なものになったそうです。

おもに、ベン・ジュピター第二王子様とネイラお姉様が会議に乱入したせいで。

「ヴィーナス家のワガママ姫が、顔で男を選定するなら顔を隠せばいいのですわ」とネイラお姉様が名案を言ったでしょ!と得意げな顔をして言いました。

そして、それに続くベン・ジュピター第二王子様。

「なら、学園の全男子にお面か着ぐるみの着用を義務付けるのはどうだろう」

そう言って、ベン・ジュピター第二王子様はさりげに『ひょっとこ』のお面を出し顔につけました。

目をあからさまに背ける国王様。

頭を抱えるダーレン・ジュピター第一王子様。

私だけの特権、普段着が着ぐるみを他人も真似するのかと恐れ戦くリーマ。

「やっぱり、こうなってしまいましたね」といつもの執事スタイルでやり過ごそうとするセバスチャン。

ベン・ジュピター第二王子様を褒め称えるネイラお姉様。

「なら、これはどうだ?」と冗談半分で、『ヒーローもののお面』をどこからともなく出したお父様。

誰もが収拾できない事態になった時、セバスチャンの一声で会議がまとまり終了しましたとさ。


乙女ゲーム世界が待望のヒロイン様の学園侵略開始です。

プライスレス学園の敷地に入ったヒロインは、

「なんで、この学校の男子はみんな『残念な着ぐるみ』と『残念なお面』を着用している人たちしかいないのよ―――――!ここは、この世界のヒロインのための舞台なのよ――――!この学校の男子イケメンは、私をちやほやするためにいるのに、こんなのはおかしいわ!乙女ゲームにこんな展開はなかったわよ――――!」

と大声で喚き叫んでいて、子どものように癇癪を起していました。

そして、学園の教師に職員室まで連行されていきました。

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