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ワイルドギース  作者: 黄昏のオメガ
第1章 傭兵軍団
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第6話 依頼完了

「やったなラルク。」


「お前もなリック。」


二人は互いを褒め称えた。これで依頼は終わりになるだろう。ただし貨物船は滅茶苦茶だが。


「さて、甲板に上がるか。後は軍隊に任せて…。」


ラルクが言いかけたその時だっだ。コンテナに倒れていたガンドストーカーから音が聴こえた。それも起動音だ。二人はまさかと顔を合わせる。


「おいおい、嘘だろ!?」


ガンドストーカーはまだ生きていたのだ。動力部は完全に破壊されている。それなのにまだ動いている。体勢を立て直すと拡声器越しに猪が喋り始めた。


「驚いたか!こいつには動力部が二つあるんだよ!」


ラルクは会議室で見つけた資料のことを思い出した。ガンドストーカーの改良型と記載されていたことだ。改良型には動力部が二基搭載されており、万が一の場合どちらかの動力部が機能しなくなったらもう片方の動力部がそれを補うため起動する。しかも片方は操縦席の真下にある。分厚い特殊装甲の下に。ラルクとリックは後ろに下がった。


「ラルク、もう弾がねぇ…どうする。」


「どうするって…どうしようもねぇよ」


猪はその様子を見ると言った。


「なめたマネをしやがって…これでも食らいやがれ!!」


するとガンドストーカーの右側にある125mm魔導砲が動き出した。魔力を濃縮して打ち出す魔導砲は航空戦艦の主砲並みの威力を持っている。こんな爆発物だらけの貨物船で撃てば自殺するも同然だ。しかし猪はお構い無しに撃とうとしている。


「お前らもろとも道連れだぁぁぁぁぁ!!」


猪は魔導砲の発射ボタンを押した。が、なにも起こらない。


「何だ!?なぜ発射しない?」


猪はなぜ発射しないのか分からず、魔導砲の方を見た。するとそこには一人の虎族が魔導砲に大剣を突き刺していた。


「やれやれ、こんなモンぶちかますなよ。」


ラトルがそう言うと突き刺した大剣を勢いよく抜き、魔導砲を切り落とした。


「何だと!?仲間がいたのか。」


猪が狼狽えているとラトルはにやけながら言った。


「俺だけじゃねぇよ猪さんよ?」


するとガンドストーカーの足が突然爆発を起こした。よく見ると榴弾ショットガンを持ったリザールが足にめがけ攻撃していた。ガンドストーカーは片方の足を無くしバランスを崩しそのまま前に勢いよく倒れた。操縦席にいた猪はその反動で外に転がり落ちた。


「二人とも助かった。危うく殺されるところだったよ。」


「まったく二人でカッコつけやがってよ。」


「まったくだ。」


すると丁度人質を避難し終わった。アリシアとラクーアが急いで船倉に入ってきた。


「あれもう終わりかしら?」


「だな。」


一方転げ落ちた猪は怒りに駆られていた。上着のポケットから何かのスイッチを取り出し、大声を出した。


「ちくしょう…こうなれば最後の手段だ!」


手に持っているのは貨物船全体に仕掛けられた爆弾の起爆装置だった。猪は交渉が上手くいかなければ人質もろとも貨物船を沈めるつもりだったのだ。


「一体何をするんだあいつ?」


「さあ?最後の一服かしら。あれライターじゃない。」


「ライターにしてはずいぶん長いな。よほどデカイ煙草なんだろな。」


六人は落ち着いて猪の行動を見ていた。


「てめぇら船を爆破されたくなかったら大人しく俺様の言う通りにしやがれ!!」


典型的な悪人が言うセリフ。でもあながち嘘ではなさそうだ。猪の持っているスイッチからにして軍用爆薬だろう。しかも貨物船を吹き飛ばすからにはかなりの量が仕掛けてあるにちがいない。まあ燃料コンテナも含めたら終わりだ。


ラルクは頭を掻きながら猪に言った。


「やれるもんならやれよ。あんたにそれだけの覚悟があればな。」


「本当だぞ!脅しじゃないぞ!」


猪はスイッチを押そうとした。だがそれは束の間の時間だった。船倉に銃声が響く。猪は強い衝撃とともに裏に吹き飛ばされた。何が起きたのか理解することができない猪はふと右腕を見た。そこには肩から手の部分がなくなっていた。


猪は激痛に悶え苦しんでいた。何でこんなことになったのか必死に考えた。痛みに耐えながらラルクの方を見るとその理由がわかった。


「ナイスショット。流石だなザック。」


ラルクが裏を見ると二階の連絡橋から一人の大鷹族の男が自身の倍近くある対戦車ライフルを持って立っていた。


「あれ?スイッチを狙ったんだが…。」


ザック・バジャルートはゴーグルを外し不満そうに言った。ラルクは肉片が飛び散った中からバラバラになった起爆スイッチを見つけた。


「ああ、見事に右腕もろとも粉々になっているよ。」


ザックはライフルを背中に背負うと翼を広げラルク達の場所に飛んで降り立った。


「ふう、ファウルバレットを背負って飛ぶのは流石に疲れるな。」


「重量が25㎏じゃ重いだろいっそのこと軽量ライフルにした方がいいんじゃないか?」


「それもいいんだが…こいつしかメタルバースト弾は使えないからな。」


その会話を猪は残った左腕で出血部分を押さえながら聴いていた。だが痛みと恐怖が混ざったような気持ちに心は崩壊寸前だった。痛みをこらえ口から絞り出すように声を出した。


「早く殺せ…俺様を殺せよ。」


ラルクは猪を見ると近くまで歩いていくと言った。


「迷惑だ、暫く寝てな。」


そう言うと猪の後頭部目掛け回し蹴りを食らわし気絶させた。その後猪を縄で縛り終わると裏を見た。


「依頼完了だな。ボスに連絡するか。」


「終わった~。」


「疲れたよ俺…。」


「さてと帰ったら酒だな。」


「俺は肉だな。それも沢山。」


「お前らは肉と酒だけかよ。魚も食えよ魚。」


「俺は穀物バーだな。」


7人は船倉の出口に向けて歩き出した。船倉の開け放たれた天井から朝日が差し込んでいた。海は貨物船で起きた血生臭い出来事を知らずに穏やかに波をたてていた。




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