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ワイルドギース  作者: 黄昏のオメガ
第1章 傭兵軍団
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第2話 悪人達の末路

ラルクは偽物の札束の入った袋を両手に持ちながら通路を歩いていた。この札束は今回襲撃された輸送貨物船の会社が用意した物だ。会社としては金塊の方が大事らしく、船員の命は二の次だった。

人命の方がよっぽど大事だろうにラルクは心の中で思った。


すると、船倉の方から怒鳴り声が聞こえる。ラルクは尖った狼族特有の耳をすました。かなり不味い状況になっている。どうやら海賊が船長を拷問しているらしい。


「ヤバイな。海賊どもがかなり気が立っている。」


ラルクは腰にあるバックパックから無線機を取り出し、電源を入れた。


「ラルクだ。リック、聞こえるか?」


無線機越しにリック・アルフレッドが応答した。


《ラルク、どうした?》


「海賊達が人質を拷問している。このままだと殺すかもしれん。」


《分かった、こっちもあと少しで配置が終わる。お前の合図があればいつでも行けるぜ。》


「ああ、頼む」


ラルクはそう言うと無線機の電源を切り、バックパックの中ににしまってから通路を足早に歩いていく。


一方、猪の頭の暴力は続いていた。船長の体を何度も殴り、蹴り上げたりしていた。船長は今にも死にそうな状態だった。無理もない2ヶ月以上もろくに食べることができなかったせいで、体力もほとんどないに等しい。


それでも暴力は続き、猪の頭は笑いながら言った。


「へへ、どうだ?助けに来てくれない気持ちは。奴らはお前の命よりも、会社の利益を優先したぞ?」


船長は酷い怪我を負い、出血もあちこちから流れている。猪の頭は暴力をやめ、手下に命令を出した。


「おい!誰か俺のスライスアックスを持ってこい!」


手下はあわてて箱の上に置いてある両手斧を持ち、頭の方へ持って来た。


「それと魔導カメラもだ。こいつの処刑を撮る。」

猪の頭は倒れた船長を片手で持ち上げ、近くの箱の上に座らせた。手下は魔導カメラを三脚の上に乗せ、スイッチをいれた。魔導カメラは東側では一般的に使われている物だ。西側の電動カメラよりも性能は劣るものの、数百年前から魔導士達に愛用されているベストセラー製品として帝国魔導賞を受賞するほどでもある。


「頭、録画スイッチ入れやした。いつでもどうぞ。」


「ああ、ものすごい物が撮れるな…。お前らこっちにこい。」


「へい!!」


手下達は頭の後ろに並ぶように集まった。頭は船長の隣に来ると、カメラに向けて喋り始めた。


「さすがに、俺様の我慢も限界だ。お前らは俺様の要求を無視したあげく、こいつらを見殺しにした。」


血まみれになった船長の首もとにスライスアックスを近づけた。船長は気絶しているが今にも死にそうだった。


「お前らが悪いからな。こいつの命よりも、利益を優先した罰だ。せいぜい苦しめよ?」


頭がスライスアックスを降り下ろそうとしたその瞬間。



「待ちな!」



その場にいた全員が出口の方を向いた。出口には一人の狼族の男がいた。


「誰だ?てめえ。」

頭がスライスアックスを降るのを止めて、ラルクの方を見た。


「その処刑はまだやらない方がいいぜ?猪の旦那。」


「お前らの要求を受けた会社が、雇った傭兵さ。約束の金を持って来た。」

ラルクは金の入った袋を頭の近くに投げ、袋は鈍い音を立て落ちた。


頭は袋を確認すると手下に命令を出した。

「中を調べろ。」


手下が袋の方に歩いていくと、袋を持ち中を開けた。

「随分、待ったぞ?」


ラルクは苦笑いをして言った。


「雇い主も色々とあってね、結構大変だったらしからな。おたくらに貨物船を襲撃されたから信頼もがた落ちだそうだ。」


「フン、そんなこと知るか。ちゃんと金額通りなんだろうな?」


「もちろん、連邦通貨700万ルド丁度確かにな。狼族の俺が苦労して運んだんだ、問題はない。」


ラルクはさりげなく船長の方を見た。船長はかなり酷い怪我をしている。出血も多い。早くけりをつけるか、ラルクは思った。(偽物だと分かればやばいからな…。)


「おい!金は本物か?」


手下は少し困惑した様子で答えた。


「頭…、これ偽物ものです!全部!」


ばれた。


猪が怒りを露にした。


「このやろう…、俺様をなめやがったな?ふざけやがって!こいつは殺す!」


スライスアックスを勢いよく回し、船長の首もとを落とそうとした。だが、ラルクはそれよりも素早く、腰につけたホルスターからリボルバーを取りだし、海賊の頭に向けて引き金を引いた。発射された弾丸は頭の肩に吸い込まれるように命中した。頭は衝撃でスライスアックスを落とし、後ろに倒れた。


「悪いな、人質は絶対生かして返すように言われてるもんでね。」


頭は肩を押さえながら言った。


「キサマ…。ただの傭兵じゃねえな?」


ラルクはリボルバーを回転させながら、頭の顔を見た。


「俺はワイルドギース傭兵団所属、ラルク・フォールだ。」


再びリボルバーを元の位置に戻し、狙いを定めながら言った。

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