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ワイルドギース  作者: 黄昏のオメガ
第1章 傭兵軍団
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第1話 傭兵達の日常

グアイ暦1855年7月12日 ポリナタ洋沖

カルバニア輸送貨物船船倉


「くそ、いつになったら身代金を用意するんだ。あいつら人質はただの駒だと思っているのか?」


大柄な猪族の男は苛つきながら椅子に座り、葉巻を吸う。その回りには男の手下なのか10人ぐらいの男達がいた。


「頭、やっぱり無理なんですかね?この仕事…。」


「バカ野郎、こっちには人質がいるんだぞ!?海賊である俺達に占拠されたら身代金ぐらい用意すはずたろう!」


「し、しかし、もう2カ月ですよ?こいつらの会社に声明を出したのに返事すらないんです。」


猪の男は頭を抱え込んだ。それもそうだろう、彼らはこの海域で悪事を働く海賊である。彼らは大型貨物船を狙う海賊で、船から金目の物を奪いそれで生計を経てている。今回はこの場所に"金塊を積んだ貨物船"が航行すると言う噂を聞き、貨物船を襲撃したのだ。

お目当ての金塊もあり、ついでに人質もとって身代金を要求したものの、あまりにも反応がないので困り果てていた。


「頭、金塊だけでも盗みましょうよ?このままじゃ軍隊が来ちゃいますよ。」


「そんなこったわかっている!」


猪の男は怒りが頂点に達したのか机をひっくり返した。

手下達はさすがに呆れムード一色だ。あれだけ頼もしく見えた頭も随分酷いものだな、と思い始めた。

時刻はちょうど夜中の1時、海はこの険悪な船内よりも穏やかに波をたてていた。


カルバニア輸送貨物船船橋


海賊の手下の男は暇そうに見張りをしていた。それもそうだろう、2カ月近くも船にいるせいか緊張感も薄れている。早く陸に上がり酒を飲みたい、それと女。最初は金塊が手に入り喜んだか、体の欲求はそれ以上に欲した。下の欲望が限界だった。


男は人質の中に女がいないことに後悔した。もしいたら、やりまくれるのに。(こんな仕事受けるんじゃなかった。)そう思いつつ頭からくすねた酒を飲み干す。


波の音に紛れ、男の背後に忍び寄る影があった。次の瞬間、男の首に何かがかすめた。男は異変に気づいたが何かがおかしかった。だが、それも束の間だった。

男の首からおびただしい量の鮮血が飛び散り、甲板を赤黒く染めた。男はそのまま倒れ絶命した。


男の亡骸の近くに一人の女が立っていた。黒い戦闘服を身に纏い鋭いナイフを持った猫人族の女だ。女は周囲を確認すると海のほうに手をあげ、合図を出した。

その合図を待っていたのか、次々とコンテナにワイヤーアンカーが撃ち込まれる。


アンカーを伝い登りながら甲板に5人の男達が来た。彼らも同じ黒い戦闘服を身に付けている。よく見ると様々な種族がいた。狼族、人間、虎族、リザードマン、鮫族。猫人族の女は狼族の男に話をかけた。


「こっちはだいぶ片付けたわ、あとは船倉ね。」


「早いな、後は人質を助けるだけか…。予定通り。」


その言葉を聞いて虎族の男が言った


「けっ、何で俺らが軍隊の下請けをやるんだよ?あいつらがやりゃいいだろうに…。」


すると、人間の男が言った。


「仕方ないさ、連邦もそれだけの人員を割くことができないのさ。でも金は沢山貰えたからいいだろ?」


「俺は別にいいけどな。海生まれだから。」


鮫の男は懐かしそうにいった。まあ鮫から進化したから懐かしいがるのはわかる。


「おめぇだけだぞ。そう思うのは」


虎の男は呆れた様子で言った。


「よし、じゃあ皆そろそろ作戦を始めよう。まずは海賊を始末する。そのあと人質を救出。」


狼の男は言った。


「ラルク、人質は全員船倉に居るそうよ。それと海賊達と一緒にね。」


狼の男、ラルク・フォードは猫人の女の顔を見た。


「厄介だな…。まあ2カ月もほっといたら不味いよな。」


ラルクは考えた。海賊達が人質を近くに置いているとなるとかなり厳しい状況になる。戦闘になれば奴らが人質を盾にする可能性もある。なんとか人質から離すことができれば作戦がやり易くなる。


「私に考えがあるわよ。ラルク。」


猫人の女、アリシア・ロマネスクが提案した。


「聞かせてくれ」


月明かりに照らされ、波が不気味に見えた。



その頃船倉では海賊達が金塊を運ぶ準備をしていた。身代金は諦め、とりあえず金塊だけでも運んで逃げる方法に切り替えたのだ。身代金よりは高くなるだろうと猪の頭は考えていた。頭は金塊の一つを持つと人質の一人に近づいた。


「これだけか?船長さんよ。他に隠してねぇよな?」


人質である船長は殴られたのだろうか、顔が血まみれだった。体もアザだらけで死にかけていた。


「隠していない…。金塊はそれだけだ。本当だ。」


猪の頭は少し裏を向くと、いきなり船長を殴り飛ばした。船長は壁に叩きつけられ、そのまま倒れても、猪の頭は倒れた船長を何度も蹴り続けた。


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