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ワイルドギース  作者: 黄昏のオメガ
第1章 傭兵軍団
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第16話 灯台もと暗し

「イッテェ…。くそ!」


立ち上がろうとしたがラルクの顔の前に刀がつきつけられていた。


「ラルク!」


リックとアリシアが驚いた。その時二人の裏に大柄な人物が現れた。


「ダメですよ。よそ見は。」


優しい女性の声で二人の首元に鋭い2本のナイフを突きつけてきた。二人はゆっくり裏を見るとそこには白い毛並みの白熊族の女性がいた。


「二人とも!」


ラルクが叫ぶ。だが目の前にはラルクを投げ飛ばした黒い人物が刀をラルクの首に付けたままだ。ラルクは黒い人物を唸りを上げながら睨み付けた。


「てめえ、この村を襲った盗賊の連中かよ!?」


「盗賊?勘違いしないでほしいわね…あたしはここで待ち合わせしてだけよ?」


黒い布を被った人物は迷惑そうに言った。だがラルクはその声が気になった。


「ん?その声は…。」


「あら?もしかして?」


黒い人物は刀を下げ、フードを外した。 するとラルクはその人物を知っていた。


「お、お前は!?」


月明かりに照され白い毛並みが光輝き、和服姿の狼族の女性が現れた。


「久しぶりね、ラルク。」


女性はそう言うと刀を鞘に戻し、ラルクに手を差し伸べた。ラルクはその手を掴むと立ち上がり、再び女性の顔を見た。


「なんだあんたが現地協力者なのか?レズン。」


レズン・ジーペリアンは溜め息をつくと、ラルクを見た。


「そうよ。あたしが現地協力者として先に情報を集めていたのよ?ねぇ?ターニャ。」


「まあレズンさんの読みは的中しましたね。」


ターニャ・コルシアが礼儀正しい言葉を言うとリック、アリシアの首にちらつかせたナイフを降ろした。二人は寿命が縮むかと思い、胸を撫で下ろした。ラルクは少し怒鳴った。


「もう少しで刀が俺の首に刺さるとこだったんだぞ?」


「素早い判断力も時には必要よ。ラルク。あんた最近たるんでるわね?」


「それは…。今は関係ないだろ!あれはあんたが…。」


ラルクが言いかけようとしたがレズンに手で遮られてしまった。


「まあまあ終わった事は後にして仕事の話をしましょう?」


「仕方ね…。それで状況は?」


ラルクは不満そうな顔をしながら聞く。


「場所を変えましょうそれから話すわ。」


そうだなとラルクが言うと5人は街に戻ることにした。だが帰り道は悪路を通らなければならなかった。あのガタガタ道を。ラルクは心で最悪だと思った。尻尾も下がり気分が暗くなった。10分後、再び砂漠にラルクの悲鳴が響いた。






1時間後…。


ラビア王国国際空港 自家用機専用駐機場



アルー村から戻ったラルク達は酒の酔いから覚めたラトルら四人と合流し、輸送機スペクターⅢの前で会議を行うことになった。ライトに照らされた地図と写真が真ん中に置かれ、全員その回りに座っていた。レズンが写真を指差しながら言った。


「あたしらがこの2週間調査した結果…このナヒブーンっていう人身売買組織が今回の誘拐を企てた事がわかったわ。」


「ナヒブーン?何だそれ。」


リックが言った。するとターニャがそれを答えた。


「この国の言葉で略奪者と言うそうです。」


人を誘拐する人身売買組織にお似合いの悪名。この組織はラビア王国最大の犯罪組織でもあり他にも麻薬、窃盗、殺人の数々の悪行を行い、今ではラビア王国を影で牛耳る程の力を持っている。


「それで、奴らの本拠地はどこだ?」


ラルクが聞いた。


「場所はわかったわよ。でも意外な場所にあったのよね。」


「意外な場所?」


レズンが和服の懐に手を入れて1枚の写真を取り出し、真ん中に置いた。写真にはどこかのホテルらしい建物が写っていた。


「この国で一番最上級の宿、バンゲールホテルの地下に奴らの隠れ家を見つけたわ。」


全員が驚く。


「おいおい嘘だろ?あそこは貴族も入る所なんだぞ。」


「何かの間違いじゃ?」


「そう思うでしょ?でもこれを見たら確信するわ。」


レズンが真ん中にある写真の1枚を指差す。そこには多くの奴隷が乗った馬車がバンゲアールホテルの裏口らしい場所に入って行くところが写っていた。よく見ると馬車には様々な種族の女性達が乗っていた。


「正に、灯台もと暗しかしら。」


「くそ…。こんなに酷いなんて。」


ラルクは1枚の写真を見ながら言った。その写真には身体中アザだらけの女性が乗っていた。


「レズン、誘拐された少女については?」


アリシアがレズンに聞いた。レズンはキセルを取り出し火を点け吸った。白い煙を吐き出しながら。


「少女は無事よ。今のところはね…。」


「今のところは?」


「エルフの女性は傷物じゃ売れないのよ。客には新品の状態で売りたいからね。」


「それじゃ無事なの?」


「彼女は地下の牢屋に監禁されてる。三食付きでね。」


三食付きならまだいい方だろう。彼女はあくまでも特別なのだ。だけど他の女性は酷い扱いを受けている。

奴隷に売られる女性は大体が暴行されたり、薬漬けにされて廃人になって売り出されてしまうのだ。うまく助け出されても社会に復帰出来ず自殺してしまう女性もいる。


「明日彼女はオークションに賭けられて売り出される。その時に救出を実行出来るチャンスが生まれるわ。」


ザックがレズンに質問した。


「もしチャンスを逃すと?」


「彼女は永久に救い出せないわ。」


ラルクは一息着くと全員を見ながら言った。


「皆、とにかく少女を何としてでも救出するぞ。さっそく作戦を立てよう!」


「おお!」


ラルクの言葉に全員が一斉に声を上げた。












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