第10話 食事と拷問
ワイルドギース傭兵団アジト
一階 食堂
大浴場から出たラルクはその足取りで食堂へとやってきた。昨日の夜から何も食べてないせいかひどく空腹になっている。とりあえず何かを腹に入れることにした。廊下を歩いていくと食堂の入口が見えた。その入口の暖簾を潜ると広い空間があり、長いテーブルと椅子が大量に置かれていた。
ラルクは料理を注文するため厨房を覗くと三体のアイアンゴーレムが作業をしていた。ずんぐりとした体型と四本の腕で調理をする光景は少し変わっているが東側の国々ではこれが一般的らしい。魔力で動くアイアンゴーレムは効率よく料理を調理することができ、なおかつ定期的な魔石交換をするだけで半年間休みなく働き続ける。
アイアンゴーレムの一体がラルクに気付いたのか作業をやめ、厨房の受け渡し窓の近くに来る。
《注文は?》
無機質な声で言うアイアンゴーレム。
「う~んと、ニウラのステーキを10枚。それとワゾーのフライドチキンと肉トマトスープ大盛。以上で。」
一人が食べるには流石に多いと思うがラルクのような狼族はこれだけ食べるのは不思議ではないらしい。むしろこれが普通の量の食事。
注文を聞いたアイアンゴーレムはそのまま厨房の奥へと戻った。ラルクは料理が来るまで近くのテーブルの椅子に座った。一息つくと注文をする際に持ってきた。ビールの三本のうち一本を牙を使って栓を開けた。栓を吐き出すとビールを一口飲む。
ラルクはあまり酒を飲まないがビールなどのアルコールの弱い物は飲むことが出来る。狼の口の中に広がる苦味と刺激が乾ききった喉を潤していく。
「やっぱビールは苦いな…。」
顔をしかめていると、同じく食堂にリック、ザックの二人が入ってきた。
「お?ラルクも食堂に来たのか。」
「二人も食事か?」
「ああ、俺達も腹がへったからな。」
ラルクの目の前の席に二人が座るとビールを開けて飲み始めた。丁度ラルクの注文した料理をアイアンゴーレムが運んできた。
「お、きたきた!」
ラルクは尻尾を振った。獣人は心理現象を尻尾で表現できるため尻尾の状態でその獣人の喜怒哀楽を知ることが出来る。ラルクの前に料理が並べられていく。分厚いステーキと骨付き肉、大盛スープ。リック達は苦笑した。
「はは、凄いな…。」
「ラルク、こんなに食って平気なのか?」
二人の反応をよそにラルクはステーキをフォークで突き刺し、口に運ぶ。鋭い牙で肉を噛み砕き咀嚼する。
「ほいき、ほいきこんごらいあはへひまお。」
(平気、平気こんぐらい朝飯前。)
「食って言うな。」
ラルクは口の中に入ってるものを飲み下すしビールを飲む。今度は二人の料理が運ばれてきた。だが量はラルクと同じぐらいだろうか、肉料理が多数占めている。
「おい、お前らも大丈夫か~?そんな沢山の料理。」
「大丈夫だ、こんぐらい食える。」
リックは運ばれてきた肉料理をナイフとフォークを使い切っていく。ザックは大鷹族なのに鶏肉を食べている。回りから見たら共食いだろうと思うだろう。
「そういえばアリシアは?」
フライドチキンを食べながらラルクはリックに聞く。
「いつものあれさ。ラクーアと二人で地下にいる。」
「ご熱心だな…。まあ食事した後じゃ食った物はリバースだろうな俺達じゃ。」
ザックは器用にくちばしで骨の回りに付いた細かい肉を食べてる。
同時刻
傭兵団アジト地下
アリシアは地下へと続く階段を下りていた。数メートル間隔で蝋燭に火が灯り、弱々しく周りを照らしている。階段を降り終えると木製の扉がある。アリシアは木製の扉を手前に引きながら開ける。先には広い空間があり棚がいくつもある。棚にはワインボトルが置かれている。
元々はこの屋敷の持ち主が造らせた地下ワインセラーらしく様々な年代のワインがある。だがアリシアはそれを無視して通り過ぎるとワインセラーの奥にある廊下へと歩いていく。廊下の両端には鉄格子がある部屋がある。突き当たりの部屋から悲鳴が響いた。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
アリシアが部屋の前に着くと頑丈な鉄製の扉を開け、中に入った。そこには血塗れの猪の頭が椅子に固定されていた。その近くには血の着いたペンチを持った手術着姿のラクーアがいた。
「どう、何か話した?」
「牙を四本くらい抜いてやったがまだだ。」
小さな台の上の皿に猪の牙が四本あった。他にも色々な肉片がある。ラクーアがナイフを使い削ぎ落としたらしい。
「後は目玉をくり貫くだけだな…。」
ラクーアはナイフを置き、拷問道具箱からスプーンを取り出す。猪は必死に叫んだ。
「頼む…殺さないでくれ。頼む!」
「それじゃあたしの質問に答えなさい。」
猪はアリシアの言葉に頷く。アリシアは質問を始めた。
「あなた達はどこで武器を手に入れたの?」
「それは…。」
猪は言わなかった。アリシアはラクーアの目を見るとラクーアはナイフで猪の残った左手の親指の爪を無理やり剥がした。猪は苦痛に声を上げた。ラクーアは次々と爪を剥がす。剥がす度に血が溢れていく。
「早く言わないと今度は足の指を落とすわよ。」
獰猛なハンターのようなアリシアの顔を見た猪はあまりの恐怖に失禁した。すると観念したのか口を開き始めた。
「武器と兵器はある武器商人からもらった。」
「もらった?買ったんじゃなく?」
「俺達が拠点としている港の酒場で会った商人だった。そいつは武器と兵器をタダでやる代わりにあの貨物船を襲ってくれと。貨物船の積み荷は自由にしていいと。」
アリシアとラクーアはお互いの顔を見た。アリシアは続けて質問をした。
「その港はどこ?」
「ラビア王国のムアグアイ港だ…。」
「武器商人の名前と風貌は?」
「そいつはガリムという名前だった。黒い服とフードを被っていた。」
アリシアは猪の言った事をすべてメモ用紙に書き出した。書き終えるとラクーアに耳打ちした。
「ラクーア、ありがといつも通りにやっていいわ。」
「わかった。終わり次第魚の餌だな」
アリシアは急いでボスに知らせるべく、部屋を足早に出た。数分後ワインセラーに悲鳴が響いたのは言うまでもなかった。




