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超短編

うすっぺらな。

作者: しおん

これは、ある女の子のお話。

どこにでもいる、ちょっと内気な女の子の、昔話。



遥か昔、その女の子がまだ小さかった頃の事。

女の子が幼稚園児から小学生に変わり、周りはみんな知らない友達ばかりになりました。

ちゃんと友達できるかな?

クラスにうまく溶け込めるかな?

そんな不安ばかり抱え、学校に行く事すら辞めてしまいたい、そう女の子は思っていました。


でも、女の子の不安は同じクラスに幼稚園からの親友がいたというだけで、なかった事になってしまったのです。


あの子が一緒なら大丈夫。


そう、思ってしまうぐらい、女の子にとってその親友はとても大切な存在でした。


小学校に通い始めて一年。

女の子とその親友はいつも一緒に居ました。はためからみても仲の良い友達同士。それ以外には見えなかったのです。


でもある日、その関係は音もなく崩れ去ってしまいました。


その日は、いつもと何も変わらない普通の日でした。朝ご飯を食べて、学校に行って、授業を受けて、昼休み……。


いつも通りの昼休みなら、女の子と親友はお話をしたり、簡単なお遊びをしたり、仲良く二人で過ごしていたんです。

そう、いつも通りなら。


でも、この日は違った。


よくある女の子の仲良しグループ。その一つに親友が話しかけていったんです。そうなれば、当然女の子はひとり。

こんな日もあるさと、その昼休みは女の子一人で過ごしました。


次の日。

昨日は何もなかったかのように、女の子は親友と今まで通りの昼休みを堪能しました。


でも、何日も何日も、日を重ねるごとに親友が遊んでくれなくなって行ったんです。

そして、まるで距離を取るかのように関わらなくなって行き、最後には話す事すらなくなってしまいました。


もしかしたら何か理由があったのかもしれない。でも、女の子はまだ幼すぎました。


何で遊んでくれないのか、どうして離れて行くのか、自分がなにかしたのか、女の子は考えました。


一人でずっと、考えました。


でも、所詮は小学生。

答えなど見つかるはずがないのです。

だから女の子は、答えを見つけないまま、その悩みを自分の内にしまい込みました。

それをなかった事にするために。

傷ついたところを隠すように。


親友と話さなくなってから、女の子は人と関わる事を無意識に避け始めました。


昼休みは一人で本を読み、本の世界にうもれて行きました。誰かが話しかける隙も与えないぐらいに、一人の世界に閉じこもって行きました。


でも、女の子が三年生になって親友とクラスが離れた時、新しい友達に出会いました。


その友達は、女の子に人と関わる楽しさを思い出させてくれました。それ以降二人は親友と呼べる仲になるのですが、それはまた別のお話。


その新しい友達と出会ったことで、女の子はまた友達を作り始めました。

でも、親友との事があったからか、女の子は心から友達と呼べる存在を作る事を怖がってしまいました。また、離れて行ってしまうんじゃないか、一人になってしまうんじゃないか。そんな事ばかりが頭をよぎり、話しかける事すら億劫になってしまいました。


でも、そこで思ったのです。


嫌われなければ、だれも離れて行く事はないって。

いい子でいれば、きっと一人にはならないって。


だから女の子は、人に嫌われないいい子になろうとしました。みんなに合わせ、決して自我を主張しない、ありきたりな、どこにでもいる女の子になろうとしました。


それが今後女の子を苦しめてしまう要因になるとも知らずに。


でも、いい子を演じ始めてから、女の子は一人になる事はなくなりました。これが正解だったんだ。女の子はそう思い、その現状にとても満足してしまいました。


だからか、その代償に心から信用出来る友達がいなくなりました。


人はどうせ裏切るんだ。言葉だけの友達なんだ、親友なんだ。

そう、心に刻み込まれてしまったから、それを当たり前に受け入れてしまったから。女の子は心の底ではだれも信用ていないような人間になってしまいました。


それは昔からずっと変わりません。女の子が大きくなった今も、人間を本当の意味で信用などしていないのですから。



読んでくださり、ありがとうございます。

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