外伝3 魔王城突入(決着) 千回魔王を倒した勇者。
剣劇の音が玉座の間に響く。魔王の魔法で強化された腕に勇者の持つ聖剣が食い込んだ。
「くっくっくっ、なかなかやりおるわ。暇つぶしには調度良い。」
「暇つぶしだと、貴様は暇つぶしで、世界中の人々を苦しめているのか。」
「当り前であろう。我は魔王ぞ。」
勢いよく二人は同時に後ろへ跳んだ。距離が離れる。魔王の呟きに勇者が問えば、当然とばかりに答える魔王。それを聞いて怒りを燃やす勇者。だが…。
「だが、少々千日手になってきたな。さて、こんな趣向はどうだ。」
魔王が呪文を唱えると、魔法陣が浮かび上がり、魔法陣の中心地から銀で出来たゴーレムが出てきた。
「むっ、シルバーゴーレムか。だが、一匹程度で俺たちが苦戦するとでも。」
「なに、慌てる出ないわ。こんなものも用意してある。」
勇者が息巻くと、魔王は懐から手鏡を取り出した。それを、召喚されたゴーレムに向ける。するとゴーレムが二匹に増えた。
「なんだとっ!!」
「無機物しか増やせないがな。映せば映した物が倍になる魔法の鏡だ。」
「ぐっ、くそ!」
先ほどまで、魔王一人に押されていた。シルバーゴーレム一匹でも増えれば不利になる。だが、まだ何とかなった。しかし、それが二体ともなれば大変なこととなる。
魔王は手鏡を玉座に置き、勇者と相対した。
「がふっ!」
勇者は吹き飛ばされていた。
「くっくっくっ、脆いなぁ。つくづく人と言う生き物は愚かで脆過ぎる。」
魔王が嘲る。
「ぐっ、鼻毛魔王にここまでやられるなんて。」
「……それを言うな。」
勇者の言葉に思わず、目を反らす魔王。
「ねぇねぇ、勇者さん。」
「…なんだ。」
「聖剣貸して。」
「うぉい。この場面で言う言葉か!?」
満身創痍、聖剣を杖替わりに立ち上がった勇者のマントの裾をチョイチョイと引っ張り、上目使いで、 聖剣を強請る聖僧(女)。思わずツッコム勇者。
「魔王に勝つ方法があるのよ。」
「なっ、なに!?」
聖僧(女)が口にした言葉に目を見開く勇者。
「本当なのかっ!!」
「うん。だから、貸して。」
「判った。頼んだ。」
真偽は兎も角、今まで一緒に困難を乗り越えてきた仲間を信じた勇者が聖剣を渡す。
「ふんっ、今さら小細工を弄しても無駄だ。如何しようというのだ。」
「こうするのよっ!!」
魔王の言葉に聖僧(女)は聖剣に、魔法の手鏡を向ける。
「あああああああぁあああぁぁ、ちょっ、おまっ、いつの間に。勇者のパーティーメンバーが盗みなんかしていいと思ってるのかっ。」
「不用心に置いとくのがイケないのよ。」
魔王が思わず叫び、聖僧(女)が開き直る。
その間にも、聖剣は二本に増え、更に四本、八本と増えていく。
「やっちゃって。魔法研究者。」
「いい加減、職業名で呼ぶの止めません?」
聖僧(女)が魔法研究者に合図を送ると、魔法研究者は力場操作の魔法と風の魔法を組み合わせ、聖剣を浮かすと、魔王に向かって打ち出した。
「なっ、にいいいいいいいいぃいいっ…!!!」
その数、隙間なくびっしりと。文字道理逃げ場等無い。
「いいのかな?こんな勝ち方で。」
ポツリと呟いた勇者の言葉が玉座の間に虚しく響いた。
「ぐっ、ぐふ。」
体中に聖剣を突き刺した、虫の息の魔王が、様式美とばかりに無理やり口を開く。
「ぐっ、ははははははは、我を倒しても無意味よ。直ぐに、第二第三の我が生まれるだけだ。ぐはっ。」
そういって完全に事切れる魔王。やがて光になって消えて行った。
「やれやれ終わったか。」
勇者がそう呟いた。
「まだまだ、終わらんよっ!!」
玉座からそう声を掛けてくる魔王。
「なっ、なぜ、今確かに倒したはず!?」
勇者が驚き、叫ぶ。
「決まっているではないか。我がここに居る理由はただ一つ。それは…。」
「リポップ(雑魚等が、倒されても同じ場所から湧いてくる現象)したからだっ!!」
「お前は雑魚かっ!!」
間髪入れずにツッコんだ勇者の言葉が、響いていた。
「まぁ、復活しても関係ないんだけどね。」
そういって、また聖剣を打ち出す聖僧(女)。復活してすぐ死ぬ魔王。
「ぐっ、ぐふっ。ぐっ、ははははははは、我を倒しても無意味よ。直ぐに、第三第四の我が生まre」
そしてまた復活する魔王。
聖剣打ち出す。
「第四第五」
復活魔王。
聖剣バビューン。
魔王アボン。
………………。
「第千一第千二の我がre…。」
「ああ、もうメンドクサイ。こうすればいいでしょ。」
「ちょっ、おまっ、がふっ。」
そういって、玉座に聖剣を複数突き刺す聖僧(女)。魔王のリポップ場所は玉座なので、魔王は聖剣を体内に突き刺した状態で復活する。当然すぐ死ぬ。苦しみながら……。
「おおいっ!!(汗」
思わず勇者がツッコム。
「これっ、外して、ぐふっ。」
「せめて、喋らせろ。がふっ。」
「おまっ、鬼畜っ、げほっ。」
「俺が、魔王だと、ぎぃやぁっ。」
「いつ、言った、げはははらぁっ。」
「本当の魔王様は、ぎぇえええっ。」
魔王は何か言いたいのか、死にながら喋り出す。
そして、何とか絞り出した言葉が……。
「最初の町の宿屋に居る。」
「なっ、なんだとっ!!」
「すごい根性だよね。あの鼻毛魔王の雑魚。」
驚いた勇者に、ズレタ事を考える聖僧(女)。
「それは、やめろぉぉぉぉぉぉぉっ、げはらぁっ。」
ツッコみつつ死ぬ魔王だった。
これにてプロローグは終わりです。
次話から、勇者が宿屋《魔王城》で、ドタバタに巻き込まれます。
勇者が旅立ってから2年が経過しました。はたして最初の町はどうなっていることでしょう。それでは、第一章も宜しくお願いします。
追伸 誤字脱字の指摘ありましたら感想でお願いします。
またこんな駄文ですが、評価、感想の程お願いします。