受ケ入レラレナイ結末
Ⅵ
担任の言葉に教室中がざわめき出す。
静かに、と担任は大きな声で言う。
それでも、生徒達のお喋りは止まらない。
寧ろ悪化していく一方だった。
聞こえるのは、本当に雑音になった声のみ。
「第一発見者によると、桐沢が飛び降りたのは昼休みが始まってすぐらしい。
現在は病院に運ばれていて、意識不明だ。
かろうじて息はしていたらしいが、外傷がひどいらしい――」
大きな声が教室中に響き渡る。
俺は、ただただ担任の言葉に呆然とするしかなかった。
言葉が何度も頭の中で巡る。
―昼休みが始まって、すぐ……?
担任は、教室で待機していろと告げると、荒らしく教室の扉を開け、出て行った。
再び始まるお喋り。
雑音が五月蝿くて、たまらない。
思考が停止したように上手く動いてくれない。
夕は昼休みが少し過ぎた後、俺と喋っていたはずだ。
それは間違いないはずだろう。
けれど、第一発見者の証言ではそれは矛盾していることになる。
あの夕は一体なんだったんだろうか。
夕の魂が俺に会いに来たとでもいうんだろうか。
けれど、そうだと思う他に、俺の体験した奇妙な出来事の説明は出来ない。
突然曇りだした空、冷たい風、消えそうな夕。
あれは、本当に――
「……でもさ、居ても気付かなかったよね」
考え込んでいた思考を覚醒させたのはそんな些細な言葉。
けれど、俺を覚醒させるには容易い言葉。
「だよねー、影も薄いし」
「うんうん! 地味だしね」
「居なくても別に平気でしょ」
女子の不快な笑い声が耳を突き刺す。
彼女達にとっては何気ない言葉。
「俺、桐沢が同じクラスだってこと忘れてた」
「あ、お前も? 実は俺も」
嫌なくらいハッキリした会話が耳に届く。
雑音交じりの会話。
「欠席とかしてたんだし、仕方ないんじゃね?」
「いや、今年一回も欠席してねえぞ? 去年も皆勤賞で表彰されてた」
「あれ? 表彰されてたっけ……」
「ま、影薄いしな」
男子の不快な会話が胸を突き刺す。
彼らにとっては何気ない会話。
―誰とかそんなのはないんだよ。
夕の言葉がふと、頭の中に浮かぶ。
そうか、そういうことか……。
何気ない言葉、それが人を傷つけるんだ。
自分にとっては当たり前の言葉。
相手にとっては有害な言葉。
―誰もそのナイフの存在に気付かない
言葉のナイフは目には見えないから。
誰も、誰も自分の言葉の恐ろしさに気付かないんだ。
俺は初めて、同級生達の言葉が教室中を飛び交う何百ものナイフに見えた。