革命
90話目です。
教皇サンクトゥス・ヴァルグレイスの失脚後、
アルカ=ヴァリス教皇国は急速に変わっていった。
まず行われたのは、教皇制の完全な廃止だった。
代わりに選ばれたのは、
貴族の中でも実務を担ってきた者、
大商会を率いてきた会長、
その他街を代表すると認められた者たち。
彼らは「代表」として選出され、
合議によって国を運営することとなった。
それは誰か一人が頂点に立つ政治ではなく、
責任を分け合い、管理し合う仕組みだった。
聖職者も、騎士も、特別な存在ではなくなった。
信仰を説く者は信仰を扱う仕事に戻り、
剣を振るっていた者は治安を守る職に就いた。
彼らはもはや「神の代理」でも「神の剣」でもない。
街を動かす歯車の一つとして、役割を果たしている。
そして、かつて神と呼ばれた存在――
アルカ=ヴァリスの姿を見た者は、その後誰もいない。
神殿は残り、像も残ったが、
そこに"神"がいるかどうかは、
誰もわからない。誰も気にしていない。
人々はやがて祈ることをやめ、
代わりに話し合い、自ら決めることを覚えていった。
元教皇サンクトゥス・ヴァルグレイスは、
自らがかつて「ゴミ溜め」として作り上げた死人の町に送られた。
今ではその地下で、
瓦礫の整理と清掃を生業とし、細々と生きているという。
かつて民を選別し、裁いていた男は、
今や誰にも裁かれず、誰にも崇められず、
ただ一人の労働者として日々を過ごしている。
神の国は終わった。
だが、国は滅びなかった。
神を失ったその日から、
アルカ=ヴァリス教皇国は――
ようやく"人の国"として歩き始めたのだから。
ヒルダ「一時はどうなることかと思ったけど…
ま、丸く収まったってことね。
オリバー、ここまで読んでたの?」
オリバー『さあね。でもあのままじゃ誰も幸せになれなかった。
今のこの形も、自分たちで幸せを勝ち取りにいかなきゃならない。
そういう意味では正しい選択だったかはまだ誰にもわからないよ』
ジラト「うむ。そうであるな。
だが、この瞬間を切り取って見れば…
皆、幸せな顔をしておる」
ガッツ「まさか国を変えちまうなんてな…。
世界を変えるならまず国からってか!」
オリバー『そうだね。
さて、少し情報収集をしたら出発するよ』
ネフィア「あ…!あの…!」
オリバー『ネフィア、どうしたの?』
ネフィア「私は…どうしたら…」
オリバー『どうしたらって…。
僕たちの旅についてきてよ。
もう君も仲間なんだから』
ネフィア「でも…私、戦えません。
戦い、得意だったけど…もう魔法は使えないから…」
オリバー『問題ないさ。君の能力…
いや、神罰にもきっと唯一無二の価値があるはずだから』
ネフィア「じゃあ…いいんですか…?」
ガッツ「ごちゃごちゃうっせーな!
ついてこいって!俺らだって呪いのせいでチグハグなんだよ。
みんな助け合って旅してるんだ!
だから…な?」
ネフィア「ありがとう…ございます…!」
ネフィアは涙を流していた。
それ程までに奴隷生活は苦しいものだったのだろう。
そんな状況を簡単に打開してくれた恩人についていける喜びを、
ネフィアはひしひしと感じていた。
オリバー『じゃあ、僕は次の目的地のこととか、
この大陸のことを調べてくるよ。
みんな、疲れたでしょ?宿取ってあるから先に休んでて!』
ヒルダ「さすがオリバー!ありがと!
さあ!行くわよ!」
オリバー『…切り替え早いな…』
一同はオリバーと別れ、宿へと向かった。
そしてオリバーはというと…。
教皇庁――改め、中央塔の書庫へと来ていた。
オリバーはページをめくりながら何かの気配に気づく。
オリバー『…いるんでしょ?少し話そうよ』
「…やってくれたな。私の居場所を…」
アルカ=ヴァリスだった。
オリバー『居場所ならここにある。
アルカ=ヴァリス教皇国でしょ?』
アルカ=ヴァリス「ふっ…。お前、1つ聞きたいことがある」
オリバー『どうしたの?神様から問いかけなんて緊張するよ』
アルカ=ヴァリス「何故、お前には何も与えられないのだ…?」
その声には、苛立ちでも怒りでもない、
理解できないものを前にした戸惑いが滲んでいた。
そして与えようとしたそれは加護か、はたまた"神罰"か…。
神と青年の探り合いが始まる。
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