教皇庁潜入
85話目です。
ネフィア「はあ…はあ…。
あなた、一体何者なんですか…?
元研究者と名乗る魔法に詳しい盗賊って…」
オリバーによる試験的な組手を終えていた。
オリバー「こうしないと生きていけなかったんだよ。
さあ、教皇庁へ潜入するよ!」
ネフィア「もういくんですか!?」
オリバー「あと、この仮面をつけたら話せなくなるから、
静かについてきてね」
ネフィア「…ちょっと理解が追いつかないんですけど…」
ネフィアはオリバーの静かな姿をジッと観察していた。
盗賊風の男が屋根の上で辺りを見渡しながら魔導筆記をしている。
筆記が終わればまた見渡す。
そして時折、何もしていない時間がある。
今、何の作業を黙々とやっているのかを聞いてみたかったが、
話せないと言っていたし、とても聞ける雰囲気ではなかった。
ネフィア(ほんと…不思議な人…)
オリバーに動きがあった。
この場所から移動するようだ。
ここからの移動は羽のように軽かった。
オリバーの風魔法で軽々移動できていた。
そして―――。
移動した先は教皇庁正面だった。
ネフィア(え…!?大丈夫なの…!?)
そこへ、女性聖職者が大柄の奴隷を引き連れてやってきた。
正門を守護していた騎士達はその門を開き、
その2人を引き入れる。
オリバーは堂々と、その大柄の奴隷の後ろをついていく。
また理解ができないことが起きていたが、ネフィアはそれについていく。
教皇庁潜入に成功した。
教皇庁の回廊は、思った以上に人の目があった。
すれ違う聖職者の視線が、一瞬だけヒルダと奴隷たちに留まる。
その中の一人が足を止めた。
聖職者「……失礼。見ない顔ですが…
どちら様でしたでしょうか?」
ヒルダは歩みを止めず、淡々と答えた。
ヒルダ「ヴァルグレイスです」
家紋を見せながら言った。
ネフィア(え、ヴァルグレイス…?)
その名を聞いた瞬間、
聖職者の表情、そしてネフィアの表情が僅かに強張った。
聖職者「…失礼致しました」
それ以上、何も言わない。
奴隷に刻まれた紋へ視線を落とし、
確認するように一瞥した後、視線を逸らす。
聖職者「通行をお妨げしました」
そう言って、一歩退いた。
背後で、他の聖職者が小声で囁く。
「……あの家か」
「関わらん方がいい」
ヒルダは何も答えず、そのまま歩を進める。
ジラトは無言のまま、鎖の音を鳴らして従い、
ネフィアは俯いたまま、その後ろを歩いた。
誰も止めない。
誰も深く見ようとしない。
教皇庁潜入は、
疑いの中で、だが何の問題もなく進んだ。
ネフィアだけが、何もわからないままでいた。
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