北の大陸
76話目です。
北の大陸編の続きが始まりました。
北の大陸――
中央大陸から見ると世界の果てとも言えるこの地は、
広大な森林と湿地が入り混じり、
想像を超えたスケールの魔物たちが闊歩している。
木々は異常に背が高く、枝や蔓が絡まり合って道を覆う。
森の中では、普通の植物でさえ人の背丈ほどに成長しており、
踏み入る者を容赦なく阻む。
湿地帯には瘴気が漂い、
立ち入るだけで身体に異変をもたらす場所もある。
ここには二つの大迷宮が存在する――
『悪魔の策略』と『巨人の悪夢』。
それぞれがこの大陸の自然や魔力を異常に変質させ、
未知の危険を秘めている。
この大陸が中央大陸と違って極端に広いことは、
このスケールが物語っていた。
そして数ある国の中でも一番の大国が、
ここ「変生樹海」の付近に存在する。
―――アルカ=ヴァリス教皇国。
これから向かうべき最初の目的地だ。
ここでさらなる情報を仕入れることができるだろう。
これが、この三か月間、オリバーたちが調べ上げた全てである。
そしてなぜここが北の大陸だと断定できたのか――
その答えは、『古記録』に記された
大迷宮『悪魔の策略』の特徴と、
目の前に広がる森の様子が著しく酷似していたからである。
大陸の広さ、密林の異常な発達、そして未踏の湿地帯――
それらが記録と符合した瞬間、オリバーは確信した。
オリバー「ここが、北の大陸だ…」
みんなで集めた情報をオリバーがまとめ、
オリバーの見解を交えた結論をみんなに話した。
ジラト「ふむ。よく分析されておる」
ガッツ「なんかもうワクワクがとまらねーよ!」
ヒルダ「まず向かうのはその国なのね」
それぞれが反応をした。
オリバー「そのアルカ=ヴァリス教皇国が、
どんな国かまではわからないけど、
教皇が一番偉くて、聖職者や騎士も、
かなり上の地位にいそうだよね」
ヒルダ「なんか…複雑な気持ちだわ…」
ガッツ「ヒルダの秘密が知られたら良くなさそうだな」
ジラト「人前でそうそう祝福を使うことなどないであろう」
オリバー「でも助けてあげられる場面で、
何も手出しをしなかったら非難されるだろうね。
そこから聖職者を騙った呪詛師だとかなんとか…
言われ出すかもね」
ヒルダ「オリバー…けっこう辛辣ね…」
ヒルダは何となく行きたくなさそうだ。
ガッツ「まあでも行くしかねーな!
そこで情報集めてとっとと違う国に行けばいいさ!」
ジラト「そろそろゆくか。
ここ、小人の集落には大変世話になったな。
それもこれも2人が森の悪魔を倒してくれたおかげだな」
ヒルダ「ほんとそうね。
それが無かったらこんな異常な森で野宿よ?
考えただけでツラくなる…」
話しながら身支度を終えた4人は長の家へと向かった。
長は身支度を整えた一行を見て察したのか、
集落の小人たちを全員広場に集めた。
長「もう、ゆくのですね。
もう少し居てくれてもよかったのですよ?
いや、旅の御方をとめてしまうのはよくないな…。
どうか、お気をつけて。
アルカ=ヴァリス教皇国は、
ここから西に行ったところにありますからな」
仮面を被り、盗賊風の冒険者の装いとなったオリバーは、
召喚した高位妖精ティリルを介して話し始めた。
オリバー『今までありがとう。凄く助かったよ。
それに小人族との戦闘訓練も凄くためになった』
続いてヒルダとジラトも感謝を述べ、最後にガッツがゆっくり話し出した。
ガッツ「その、なんというか…ありがとな。
色々と。俺はお前たちの伝承の勇者じゃねーけど、
似てるって言われて…少し…嬉しかったよ。
俺が新しい"勇者の伝承"を作って帰ってくるから、
それまで待っててくれよな!」
小人たち
「新しい勇者の伝承!」
「新しい勇者だー!」
「勇者ガッツー!」
「早く帰ってきてねー!」
ゴホンッ―――
長の咳払いでその場は静まり返った。
長「いつもいつも騒がせてすみませんな。
オリバー殿、大したものも持たせられませんが、
これを持っていってください」
そう言われて手渡されたのは薄い本だった。
オリバー『これは…?』
長「それは、少し前にここを訪れた、
"赤子を抱えた旅の者"が置いていったものです。
名は…なんといったか…フ…フエ…フィ――」
「長…フィエルです…」
長「おー!そうだ!フィエルだ。
フィエルという旅の者はそう言った手記のような物を、
色んなところに残しながら旅をしておったらしいです」
オリバー『へぇ〜…フィエル……か。
…なぜそれを今僕にくれるの?』
長「森の悪魔を討ち、
我々を呪縛から解放してくださった貴方方なら、
託せると思ったのです」
オリバー『なら受け取っておくよ。ありがとう』
長「貴方方がこの三ヶ月間調べておったことに、
関わることも書いているかも知れません」
オリバー『かもって…中身知らないの?』
長「………読めぬのです」
オリバー『ん?読めない?』
そう問い返しながらオリバーは手記をパラパラと捲ってみた。
これは―――。
オリバー『これは確かに読めないや。
書いてあることが難しすぎるね』
長「ん?オリバー殿、書いてあることがわかるのですか?
我々には書いてあることすら何も理解できないのですが…」
オリバー『え、ああ。僕もそうだよ。
なんて書いてあるか分からなくて難しいって思ったんだよ』
長「そういうことでしたか。
これから旅の中で読める者に会えるやも知れませんな」
オリバー『うん、そうだね。そっちも探してみるよ』
オリバーたちは小人族に見送られながら次の目的地――
アルカ=ヴァリス教皇国へと向かった。
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