ガッツの成長
73話目です。
小人族の長から話を聞いた日の夜―――
ジラト「そうか。それでガッツは落ち込んでいるのだな」
"小さな"宿のバルコニーにて、
ジラトはオリバーから森の悪魔との戦いについて聞いていた。
オリバー『それが僕たちの戦い方でもあるんだけど、
今回は僕が油断して攻撃を受けちゃったからさ…』
オリバーも落ち込んでいる様子を知ったジラトは、
笑いながら話し始めた。
ジラト「ふっ…。友というのは良いものだな。青春ではないか。
大いに悩め。必要ならばぶつかれ。
切磋琢磨し成長し合えるのが友というものだろう?」
オリバー『ふふっ…。確かにそうだね。
別に悩むことじゃないんだけどね』
オリバーはジラトの言葉につい笑ってしまった。
ジラト「ガッツにはヒルダがついているようだぞ」
オリバー『じゃあ大丈夫だね。
あ、そうだ。ジラトももう友達だからね』
ジラトは普段は鋭い竜の眼を丸くした。
ジラト「そうか!我も友か!ガハハハ!
歳も種族も関係ないか!」
オリバー『そうだよ。まだ日は浅いけど、
もう一緒に"大陸"を渡ったんだから友達、仲間だよ』
ジラト「大陸を渡った?どういうことだ?大陸とはなんだ?」
オリバーはこの世界の仕組みを、
『古記録』と
『系譜録』を見せながら説明した。
ジラト「なんと壮大な…!そしてこの記録者達の根気も見事だ。
そんな旅が出来るのは光栄なことだな」
オリバーとジラトは談笑しながら夜を更かしていた。
それと同時刻、小人の里の外れにて―――
ヒルダ「ガッツ、こんな所にいたの」
ガッツ「ヒルダか…。なんの用だよ」
ヒルダ「珍しく落ち込んでるじゃない。
いつものバカで明るいガッツはどこいったのよ」
ガッツ「ふん!俺にだって悩みの1つや2つあるんだよ!」
ヒルダ「ふーん…悩みって、昼間話してた勇者の話?」
ガッツ「あぁ…」
空を見上げながら頷いた。
そこから少し沈黙が続いた。
そしてその沈黙を破ったのはガッツだった。
ガッツ「俺さ、何にもできなかったんだよ。
狙っても貰えなかった。
あの魔物からしたら何の脅威でもなかったんだ。
そりゃそうだよな。武器もねーし、攻撃もしてこねーし、
盾構えてるだけの奴なんて誰が…」
悔しそうに腿に拳を打ちつけた。
ヒルダ「私もガッツとは少し違うけど、気持ちは分かるよ。
この呪いのせいでずっと嫌な思いをし続けてきたもの」
ガッツ「でもお前はこのメンバーなら輝けるじゃねーか。
唯一回復ができる聖職者だろ。俺とは違う。
俺はあの時、使い物にならなかったんだ。絶望したよ」
ヒルダ「でも…だからって、落ち込むことないじゃない。
ガッツのことだからさ、
いつも通り全力でガムシャラでバカ正直で……
あんたはあんたなりに頑張ったんでしょ?」
ガッツ「頑張ったって…何もできなかったんだぞ?
ただ守ることすらできねぇ…」
ヒルダ「それでも!
あんたがいたからオリバーはあの魔物を倒せたのよ。
あんたがいなきゃ、
オリバーだってまともに攻撃できないでしょ?」
ガッツ「…それでも俺は…結局オリバーを傷つけちまった」
ヒルダ「いつもが上手くいきすぎなのよ。
それで油断してた"あんた達2人"が悪いわ。
それにオリバーはあんたのこと責めたりしない。
きっと自分が油断したせいだって悔しがってるわよ」
ガッツ(確かに…オリバーは、俺を責めたりはしないけど…)
ヒルダ「さあ、そろそろ顔上げなさいよ。
落ち込んでばっかじゃ前に進めないわ。
明日も、あんたの盾でオリバーを、私たち全員を守るんでしょ?
それに…私もあんたたちに引け目を感じてるのよ。
一緒に強くなろ?オリバーにもっと頼ってもらえるようにね」
ガッツ「…ああ、分かったよ。ありがとう、ヒルダ。
俺、どうかしてたな!勇者勇者って持て囃されて…
ほんとは違うのにって…そんなこと考えても仕方ねーのにな!
俺にできることなんて1つしかなかった。
みんなを守ること!!その為にもっと強くならなきゃな!!」
ヒルダ「うん、そうだよ!頑張ろ!」
(…これでいつものバカで明るいガッツに戻ったかな…)
聞こえないようにそう呟いた。
ご愛読ありがとうございます。
これからの投稿の励みになりますので、
宜しければブックマークと評価をお願いします。




