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神罰の英雄たち ー神に選ばれなかった少年、神を欺き世界を駆けるー  作者: Anon
北の大陸編(前編)

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再会

71話目です。

ジラトとお姫様抱っこをされたヒルダは森の中に佇んでいた。


ヒルダ「ちょっと!もういいでしょ!おろしてよ!」


ジラト「あ、ああ。すまぬ…」

歯切れ悪くヒルダを地面に下ろした。


ヒルダ「ジラト、ボーッとしてどうしたのよ。

そんなに転移が衝撃だったの?初めて?」


ジラト「初めてだ……ったはずなんだが、

この感覚はなぜか初めてではないのだ。

我は過去に転移したことがあるようだ」


ヒルダ「え…気づかなかったの…?

いや、でもまあこれじゃ気づかないのも無理ないわね。

だって確かに転移したっていうのに何も景色が変わらないもの。

これじゃ知らずに転移して、

転移したって気づける方が異常だわ」


ヒルダは観察力はある方だが、

それでもわからないくらいに景色が似ていた。


ジラト「…我も気づかなかったようだ。

そしてこの様子ならあのガッツも、

気づかず突き進んでおりそうだな」


ヒルダ「そうね。あの真っ直ぐな男が気づけるはずないわね。

さて、どこに行けばいいのやら―――」




ヒルダ「…あっちね」

ジラト「…あちらのようだな」


ヒルダとジラトは同時に同じ場所を指差し、同時に言った。

何故なら明らかに人が通った痕跡が残されていたからだ。


ジラト「オリバーはガッツの痕跡を辿りながら移動し、

後を追うと見た我々にわかるような痕跡も残しておるようだな」


ヒルダ「そうみたいね!これを辿っていきましょ!」


ヒルダとジラトの2人は、

ガッツとオリバーの2人が残した痕跡を辿って、

森の奥へと進んでいった。

奥へ進むと道標のように、魔物の死体や戦闘の跡が残っていた。不自然に強引に切り拓かれた道を見つけ、

そこを進んでいった。



そして―――


 


ヒルダ「な、なによこれ…」


ジラト「ふむ…激しい戦闘があったようだな。

焦げ跡、薙ぎ倒された木々、鋭く隆起した地面…」


ヒルダ「オリバーの魔法でしょうね。

でもここまで激しいのは見たことがないわ」


ジラト「かなり苦戦したように見受けられるな。

あちらに進んでいったようだ。

小さい痕跡も同じ方向に同じ歩行間隔で続いておる。

恐らくこの辺りの原住民と打ち解けたのかも知れんな」



ジラトは残された2人の足跡とその周りにある複数の小さな足跡が、

同じ方向に向かって続いていることから友好関係にあるとみたようだ。



ヒルダ「これだけでよくわかるわね。

そうやって言われてみればわかるけど…

これだけじゃ私にはわからないわね。

ジラトがいて良かったわ」


ジラト「我も役に立てて良かった。

戦闘では使い物にならんのでな。ガハハハ!」

ジラトはそう言って大きく笑った。


ヒルダ「呪いのせいなら仕方ないわ。

私も同じようなものだもの。

でもジラトは伝説になるような強い戦士だったのよね?」


ジラト「自身で言うのもおかしな話だが、

確かにそのように評価はされておった。

神はその力を封じるように、

我から"時間"を奪ったがな…」


ヒルダ「神罰ってなんなのかしら?

そんなモノを与えられるほどの力があるなら、

いっそのこと殺せばいいのに…」


ジラト「全ては推測に過ぎないが、

力を奪うか与えることで死に追いやっているのをみると、

神は直接命を奪えないのだろう」


ヒルダ「やっぱそう考えるのが自然よね。

でもなぜ私たちが神罰を受けないといけなかったのかしら?」


ジラト「それは我にもわからぬ。

しかしお主らとの旅でそれが解明できると確信しておる。

まあ根拠はないがな」

ジラトは話しながら「ハッハッハッ」と笑っている。


ヒルダ「ジラト、何か集落が見えてきたわよ」


自分達の呪いの謎について話し合っているうちに、

いつの間にかかなり森を進んでいたようだ。


ジラト「やはり…小さいな。恐らく小人族の集落だろう。

ここにオリバーとガッツがおるのだな」



『その通り!』


頭上から突然聞き覚えのある声がした。

それは2人が探し求めていた声だった。

声の主はヒルダとジラトの前に降り立った。


ヒルダ「オリバー!!」

ヒルダは突然の再会に感極まって、

オリバーに抱きついた。


そして―――



「勝手なことしてごめん!

私のせいで大変な目に合わせちゃって…!

でも…生きててよかった…!」


オリバー『ちょっとヒルダ!苦しいよ!』


そう言って少し引き離すとオリバーは続けた。


『僕の方こそ悪かったよ。

術式の説明をせずに急に腕を引っ張って。

その勢いで自分が魔法陣に入っちゃったんだから僕が悪いよ』


そんな2人の掛け合いを全面的に肯定するようにジラトが話しだした。


ジラト「どちらも悪くない。

そんなことよりも生きて再会できた事をもっと喜べ。

そしてオリバー。

我はお主が生きていることを全く信じて疑わなかった。

それに、お主ならこうするだろう。

という推測を元にここまで来れたのだ。大したものだ…お主は」


オリバー『僕も2人のことを信じてた。

離れていてもちゃんと分かりあえて良かった。

2人こそさすがだよ』


オリバーとジラトは再会を称え合った。


ヒルダ「そういえばガッツは?見つかったのよね?」

ガッツの姿がどこにもないことに気づいた。


『ガッツは………』

そう言いながらオリバーは振り返った。


ヒルダとジラトがその振り返った先を見てみると―――



遠くの方で、ガッツが小人族に袋叩きにされていた。


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