断界の山脈
53話目です。
断界の山脈に入ります。
選択肢は1つと言ったオリバーの言葉に一番反応したのはヒルダだった。
ヒルダ「1つって…。山に入るってことでしょ…?あの声聞いてよくそんな気になれるわね…」
ガッツ「俺は賛成だ!俺等三人なら何があっても大丈夫だ!」
ヒルダ「なんてノー天気なのかしら…」
オリバー『化け物と戦いに行くわけじゃないよ。あの咆哮…いや、叫び声かな。何かを襲う時の威嚇じゃなかったと思うんだ』
ヒルダ「まあ、リーダーのあなたが言うんだから逆らいはしないけど…命最優先だからね!」
オリバー『いつもそうしてるじゃん。それより僕リーダーだったの?』
ガッツ「そうだ!お前がリーダーだ!どこまでもついていくぞ!」
オリバー『じゃあ危ないかもしれないけどついてきてくれる?ガッツは絶対に攻撃をそらさないで。ヒルダはガッツを見てあげて。僕は全体を見てるから何かあったらティリルを飛ばすよ』
ティリル「ジャーン!久し振りの登場だよっ!アタシは戦う時以外出してもらえないのかなっ!?」
ガッツ「よっしゃ!いくか!」
そうして三人は山に入った。
断界の山脈は名前の通り、外界とは断絶された世界のようだった。
外から見ているとの中に入るのとでは景色も全然違った。
植物の異様な成長具合、見たこともない鉱物、土の色もこの辺りとは全く違う。
そこに住む生物も魔物も全く知らない姿形をしていた。
オリバー『これは…異様な光景だね。この山脈、麓にいるときから薄々思ってたけど生態系が狂ってるね。この辺りの気候では育たないものばかりだよ』
ガッツ「さすが研究者だな!まあ生態系がどうとか気候がどうとかはわかんねー俺でもここがおかしいのはわかるぜ」
ヒルダ「ええ、私も。ここに巨大な化け物がいてもおかしくないわ…。そもそも噂にもならなそうなくらい全部が巨大よね」
オリバー『今、ティリルがこの先と周辺を見てくれているからマッピングしていくよ。警戒よろしく』
ガッツ&ヒルダ「「了解!」」
オリバー『ティリルが戻ってくる。この先に兵士の死体がいくつか転がっているみたいだ。生死の確認まではしてないから死んでるかはまだわからないけど、死んでるみたいに動かないってことだろうね』
ヒルダ「それってもしかして…帝国の精鋭騎士じゃないの…?」
オリバー『とりあえず見てみないとわからない。あと、近くにその化け物がいるかも知れないから気をつけて』
三人はその現場に行った。
装備を見る限りやはり帝国騎士のようだ。
しかし、ここで屍になっているのは恐らく一部だろう。
本当の精鋭たちはもう少し奥のようだ。
少し奥に行った道中で1人の男が息も絶え絶えで横たわっているのを見つけた。
オリバー『大丈夫か?生きているか?何があった?』
兵士「き…みたち…は…はぁはぁ…冒…険者……か?この先は……だめだ……行…ば…竜……に殺さ……れ―――」
聖職者を連れながら祝福を与えられない三人はその男の最後に祈りを捧げるしかなかった。
ヒルダ「ごめん。こんなで…」
オリバー『竜…がどうって。竜じゃないけどそれっぽいのがいるみたいだ。だけど、静かだね』
ガッツ「化け物も騎士団も相打ちになったんじゃねーか?」
ティリルが帰ってきた。
ティリル「凄いのがいるのっ!多分あれが化け物の正体っ!だけどそれどころじゃないのっ!血をたくさん流して今にも死にそうなのっ!」
ティリルの案内する方向へ急いで向かった。
そしてそこに居た。化け物が。
体長は3mを超え、五体はその全長を長いと感じさせないくらいに太くたくましかった。
全身は鱗で包まれ、顔の形状、尻尾があることから…
リザードマン、いやあれは―――
竜人族だ。
そんなたくましい体躯の"おとぎ話に出てくる存在"が、
今にも死にそうな状態で倒れていた。
ご愛読ありがとうございます。
これからの投稿の励みになりますので、
宜しければブックマークと評価をお願いします。




