旅立ち
50話目です。
3人は身支度を整え、街を出ようとしていた。
その道中でガッツがふと思い出したように言った。
ガッツ「そういやーさ、学院とか家族とか大丈夫なの?この旅っていつ帰れるかわかんねーじゃん?」
オリバー『うん、それなら王様がなんとかしてくれるみたいだから大丈夫。そっちこそ騎士団大丈夫なの?なんか任されてたんでしょ?』
疑問に思ったガッツもまた同じ状況ではあった。
ガッツ「あー、俺はもうやめてきた!騎士にはなれたし、これからはこのパーティを守る騎士になるからな!」
オリバーとヒルダは驚いた。
ヒルダ「あんなに騎士に憧れてたのに…このぼうけんがそれほどの覚悟ってことよね…。あ、私は別れるものなんて何もないから大丈夫よ。あんたたちしかいないし」
オリバー『ヒルダ…ありがたいけど、僕たちと会うまでほんとよくやってきたよね』
ヒルダ「うるさいわね!この話はもういいのよ!ほら!いくわよ!!」
そう言いながら、ヒルダはバイザーをおろした。
オリバー『一箇所だけ寄っていきたいところがあるんだけどいい?』
ガッツ「……あ。あそこだな?」
ヒルダ「あそこね」
闇商店へと向かった。
5年前から出世払いと言い、未払いのままになっていた商品の代金を支払った。
ガッツ「なんだかんだで俺らももう白金ランクだからな!これぐらい払えるぜ!」
オリバーは仮面を外して話し出した。
オリバー「ちょっと淋しいけどね。あ、あとこの仮面なんだけど…効果が違ったよ?本当の名前は"心眼の仮面"って言うらしい。たぶん何か隠蔽工作してあるからわからなかったんだよ」
店主「"心眼の仮面"…聞いたことねぇな。それに今も俺の目には"沈黙の仮面"と映ってる。てことは喋れねぇのは呪いじゃねぇんだな?」
オリバー「それはそういう仕様みたいだ。これを作った人の日記にそう書いてた。でも何らかの呪いはあるはずだ。ヒルダの反転した祝福をちゃんと受けられるから」
店主はオリバーの顔を覗き込んだ。
店主「…ほんとはお前さんに呪いがあるんじゃねぇのか?」
オリバー「それはないと思うよ。2人みたいにあからさまに不便を感じる部分はないし、そんな話も聞いたことないしね」
店主は納得がいってなさそうだ。
店主「まあ、気をつけて行ってきな。あと、これ。お守りだ」
そう言って店主はタリスマンをオリバーへ手渡した。
オリバー「ありがとう。…でこれはどんな呪いがあるの?」
店主「ハッハッハッ!さすが慣れたもんだな!ソイツは精神ダメージを完全に無効化するタリスマンだ。まあ…代わりに…受けた傷が治らなくなる…」
ガッツ「とんでもねーじゃん!お守りじゃねーよそんなの!」
ガッツは驚きと怒りで声を荒らげる。
それを制止するようにヒルダが冷静に話し始めた。
ヒルダ「無意味にそんな物を渡すわけないじゃない。そうでしょ?傷が治らなくなる…私の反転祝福以外では…。ってことじゃない?」
店主「その真偽は使ってみねぇとわからんが、恐らくはそういう事だと睨んでる」
オリバー「とりあえずありがたく受け取っておくよ。未知の冒険だから精神ダメージに悩まされる日がくるかも知れないしさ」
店主「まあ旅の餞別だ。取っておけ。ほら!いつまでもこんなところにいられたら困る!商売の邪魔だ!さっさと行きな!」
ガッツとヒルダは「シッシッ」とおいやられ、その後をオリバーもついて行った。
オリバー「あ、そうだ。あと1つ聞きたいんだけど…最近さ、"シグマフォース"のメンバー来る?特にカイムだけど」
店主「何年か前まではよく遺物を見に来たり持ってきたりしてたから見てたんだが…ここ最近、いや数年か。全く姿を現さなくなってな。まあアイツラのことだから全滅なんてことはねぇだろうが、どっかであったらヨロシク言っといてくれや」
オリバー「うん、わかった。教えてくれてありがとう。
また来る!じゃあね!」
そう言って3人は闇商店を後にした。
そして街の出口まで来たところで3人は振り返り、深く礼をした。
その姿を遠くの方で黒いフードを深くかぶった男が静かに見守っていた。
(師匠…行ってきます)
オリバーには見えないはずの距離だったが、2人は目を合わせて頷いた。
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