オリバーの気がかり
42話目です。
第40話「王の気がかり」の裏側の話です。
『系譜録』を手にした途端に王に会ったり、研究室に師匠が来たり、バタバタしてしまったけど、冷静になって考えたら……
壮大な冒険の予感がするな。
とりあえず北に探索に行く前に今残っている依頼を全部やってしまおう。
翌日。オリバーは"隠れ家"に行き、"無言の仮面"へと着替えた。
そしてギルドホールに入ろうとした時―――
荒くれ者風冒険者「よお、こんな時間に珍しいじゃんかよ。俺たちと一緒に冒険してくれや」
獣人族の冒険者「いいだろ?お前らみたいにランクあげてーんだよ。手伝ってくれよ」
大柄な冒険者「まあこんなとこじゃアレだろ。こっちに来いよ」
"また"良からぬものに絡まれてしまった。
とりあえずついて行って…巻こう。
相手は口の割に大したこともなく簡単に巻けた。
そして隙を見てギルドホールに入った。
日中のこの時間は人が少なくていいな。
依頼を報告して報酬を受け取った。
しかし、掲示板にまた面白そうな依頼を見つけて受けてしまった。
これじゃいつまで経ってもタスクがなくならないな…。
『うわっ!!おい!シェイン!……』
ギルドの受付奥―――ギルド長室からイカズチのような轟音が鳴り響いた。
ギルド長が驚いた声だ。
その声に自分もびっくりしたが、あの人があんな声でびっくりするなんてどうしたんだろう?とびっくりした面もあった。
何があったのか見に行きたい気持ちもあったが、ここに長居をしていてはまた絡まれるかも知れない。
すぐにギルドを出て、街の外へと向かった。
その夜、昼間受けた依頼の報告にまたギルドへと出向いた。
「お、"ノクトラ"がきたぞ」
「相変わらずだな。あいつら」
ノクトラってなんだよ…。
―――僕たち3人のことだ。
元は何だったかな…そうだ、"ノクティストラン"だ。
夜にしか現れないかららしい。それを略して"ノクトラ"だ。
誰が呼び出したんだか…。
ヒルダ「…変な呼ばれ方で通っちゃったよね」
それを聞いた受付嬢はある情報を教えてくれた。
「ギルドで保管しているあなた方の資料にも元々無記名だったパーティ名に"ノクトラ"と記載しておきましたよ。あ、ちょうどここに。ほら!」
と言って"たまたま"そこにあった資料を見せてくれた。
確かにパーティ名や経歴など色々書いてある、
"無言の仮面"の資料だった。
なんでここにこれが丁度あるんだよ!と思ったその時、ヒルダが口を開いた。
「見せてくれてありがとう。でもなぜ、ここに"たまたま"この資料があるの?こんなの裏で保管しておくものじゃないの?」
受付嬢「これはギルド長のクセみたいなものなんだけど、気になった冒険者の資料はこっちに置いておくことがあるのよ。だからここに"無言の仮面"の資料があったの」
ヒルダ「私達2人のことは気にならないってことかしら?」
ヒルダが皮肉っぽく言う。
この人はいつもそうだ。
「いえいえ、そういうことではないんですよ!この資料が見たいって訪問してきた人がいたの!その流れもあったんだと思うわ!
……あと、コレここだけの話にしておいてくださいね…」
ヒルダ「ふんっ。なんで一言も喋らない"無言の仮面"が有名なのよ!もう、行くわよ!!」
そう言ってヒルダはギルドを出ていき、ガッツが後を追っていった。
誰か僕を調べてる…?
もしそうならまずギルドに来る回数をできる限り減らそう。
無言の仮面は掲示板に貼り付けてあったいくつかの依頼票を取り、無言でカウンターに出して受注した。
1人で探索している時間の受注と報告を全部夜にしてしまおう。
どうせ夜はここに来るしね。
こういうのでありきたりの、偶然のすれ違いと偶然の一致ですね。
次も続・オリバーの気がかりを描きます。




