神罰と呪い
30話目です。
「何故―――」
「何故また私をこんな目に合わせるの…?私にはもう神罰は下ったじゃない。呪いを受けてもまだこんな仕打ちって……」
「―――やっぱりここにいたんだ」
月明かりの逆光でよく見えないけど、
この優しい声はあの仮面の少年だ。
私「やっぱりって…なんでここってわかったの?」
???「まあ…なんとなくだよ。それよりさ…神罰とか呪いってなに?」
私「聞いていたの…?それなら説明はいらないわね」
???「まあ、そうだね。全部わかったわけじゃないけど、呪いのせいで祝福の魔法が使えないんだよね?」
私「あなた…本当に不思議な子…そこまでわかっているなんて…でも―――」
???「ん?少し違った?」
私「少しね。祝福の魔法が使えないわけじゃないの。いや、もっと酷いわ。私の祝福の魔法は"反転"してしまったの」
???「反転…?」
私「私の祝福は人を傷つけ、弱体化し、毒や病気を付与するの。これじゃ"聖職者"じゃなくて"呪詛師"よね」
???(神罰…呪い…反転………。呪い…?反転…?)
私「あなた、聞いてる?」
???「あ、ごめん。ちょっと考えてた。君のその"呪詛"の使い道をね」
???「それは―――」
その少年はありえない話を続け、そしてとんでもない行動に出た。
またあの仮面をつけ、私の下へ来てナイフを取り出した。
そして………
―――そんなこと…ダメ!!!
突然起きた出来事、そして咄嗟の行動、想像とは違う結果で
わけがわからなくなっていた。
少年は仮面を外し、
???「ほら。僕の言ったとおりでしょ?」
私「いや、でも、そんなことって…!本当だった…!」
???「だからさ…僕達と一緒に来なよ。君の力は僕達なら活かせる…。僕の名前はオリバー。銅ランクの冒険者さ」
私「オリバーって言うのね。私の名前はヒルダ。ヒルダ・アウレリアよ。まあこの"アウレリア"って名前は今となっては名乗りたくもないのだけどね」
オリバー「じゃあ君は今からヒルダ。ただのヒルダだ。さあ一緒に行こう!」
ヒルダ「いや…一晩考えさせて。もしあなたについていくことに決心がついたら…お昼までに旅の支度を済ませてギルドへ行くわ」
オリバー「わかったよヒルダ。待ってるからね。じゃあまた明日!」
月明かりが雲で陰ると同時にオリバーは仮面をつけ、その場を去った。
ヒルダ「じゃあね。また…明日」
独り言のようにそう呟いた。
―――翌朝。
ギルドホールに聖職者の格好をした1人の少女がいた。
誰かを探しているように辺りを見回している。
そしてその"誰か"もそこへ到着した。
ガッツ「もう怪我は大丈夫なのか!?」
昨日までボロボロだった姿を見ていたガッツは驚いた。
ヒルダ「え、えぇ…まあね。オリバーはその仮面外さないの?」
ガッツ「これがオリバーの冒険者の姿なんだ。そしてこれが俺の!」
そう言ってガッツが腕を広げて鎧を見せる。
ヒルダ「…何か顔を隠さないといけない事情があるのね」
ガッツ「あ、そうだ!俺、ガッツ!よろしくな!」
ヒルダ「私はヒルダ。オリバーに誘われてあなた達についていくことにしたの」
オリバーの指輪が突然光り、小さな何かが現れた。
ティリル「アタシっ、ティリルっ!妖精っ!よろしくねっ!オリバーの代わりにアタシが喋るからっ!」
ヒルダ「妖精…!?ていうかなんでオリバーが話さないのよ」
ティリル&オリバー『この仮面をつけている時は話せないんだ。でもティリルを介してなら話せる』
そんな雑談をホールで繰り広げていると
カイム達4人が近づいてきた。
カイム「君は…昨日の子か…!もう大丈夫なのか!?」
その時の惨状を知っていれば
そう言った反応になるのも無理はない。
ヒルダ「ええ。回復のスクロールを使って薬も飲んだからバッチリよ」
ティナ「あんた昨日あんな状態だったんだから休んでたら?」
グラフ「ティナ!そう言うな。この嬢ちゃんにも意地やプライドがある!それを守る為にまた挑もうってことだ!そうだろ?」
グラフはヒルダを庇うように言葉を被せる。
恐らくティナはいつもその調子なのだろう。
ヒルダ「意地もプライドも別にないけど、オリバーについていくって決めたから。
またあのダンジョンに挑むことになってもね…。
あと…1つだけ言っておくわ。私は聖職者だけど世話できるのはこのパーティだけ。
そちらのことを気に掛ける余裕はないから期待しないでね」
ヒルダの歯に衣着せぬ物言いで空気が張り詰める。
リード「まあ一先ずここらへんにして、自己紹介でもしていきましょうか。謎の妖精を隠し持っていた人もいるようですから」
仕切ったかと思いきやリードもしっかり参加してきた。
全員の自己紹介を済ませ少し雑談をした後、
再び「異界の喉笛」へと向かった。
攻略への希望、好奇心、執念…
様々な思いが渦巻く冒険が再び始まる―――
節目にして仲間が増えましたね。
ヒルダはあっさりとパーティに入ったようにみえますが、
悩みに悩んであまり眠れていません。
ご愛読ありがとうございます。
これからの投稿の励みになりますので、
宜しければブックマークと評価をお願いします。




