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神罰の英雄たち ー神に選ばれなかった少年、神を欺き世界を駆けるー  作者: Anon
魔導学院決闘大会編

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22/73

再戦

21話目です。

オリバーが目覚めてから1週間が経った。


オリバーは完全に回復し、大演習場にてエリオットと対峙している。


観客も大勢入り、最上階には学院長と国王もいる。

その2人だけでなく、そこにはその他の偉い人が並んでいた。




オリバー「やっとちゃんとやりあえるね」


エリオット「ああ、そうだな。―――僕はあの時、君を初等部の子供だと舐めていた。今日は本気でいかせてもらうよ」




―――始め!!



合図と同時にエリオットが動いた。

2つの魔導書を開いて宙に浮かべた。

魔導書に魔力を込めて初級火魔法の攻撃をしながら、

何やら詠唱をしている。



オリバーは放たれた攻撃を全て相殺した。


オリバーは魔導書も魔導具も使えるが今回はそれは使わない。

向こうが本気ならこっちも本気でいく。



オリバーは魔法使い相手ならもう誰にも負けない自信があった。

この1週間、ミルドに一方的に死ぬ寸前までボコボコにされたあの時のことが忘れられず、ずっと考えていた。

色んな勝利パターン敗北パターンを考えて魔法を試した。

もうミルドは居ないから試すことはできないが、ここで全てを出し切る。



オリバー「まずはあの魔導書が邪魔だな…」

小さな声でそう言って動き始めた。


いつものように空気を動かし、高速で移動する。

今までよりも速くそして正確に。


そのままエリオットに突っ込み、攻撃をしかける―――


―――と思いきや、エリオットではなくその近くに浮遊している魔導書に触れた。1つに触れた勢いを利用してもう片方の魔導書に飛び移りそっちにもしっかりと触れた。


それと同時に、エリオットの魔導書は地に落ち、完全に機能を停止した。


エリオット「何が起こった…!?魔導書が…なぜだ…!」

エリオットは困惑し、何度も魔導書に魔力を送った。

しかし、魔導書はただの本と化し、その場で静かに眠っている。


オリバーは困惑したエリオットの隙をついて次の行動に出た。


エリオットから少し間合いを取り、エリオットに向かって指を差した。


エリオットは声を発することが出来なくなったと同時に、

何かに縛り付けられるように身体が動かなくなった。



これで詠唱、魔導書、魔道具、そして降参することすらも封じられ、成す術がなくなった。



オリバーは頭上に手のひらを掲げ、自分の身体が余裕で入るほどの大きな火球を作り出した。


初級火魔法の"ファイアボール"だったが、そんな大きさのファイアボールは誰も見たことがない。



そして会場中の空気が熱に歪み、

魔力の奔流が音を失わせる。

誰もが息を止めた。



――そして、オリバーはその手を振り下ろした。




それと同時にその火球は、もの凄い速度でエリオットに一直線に向かった。


声も出せず動くこともできないエリオットはその火球を見て死を覚悟した。

もうダメだと思い目を瞑ったその時。

エリオットの頭上で大きな花火が上がった。


エリオットは何が起こったのかわからず呆然と見上げていると

オリバーがやってきて耳元でこう囁いた。


オリバー「大きな声で"降参する"って叫んでみて」



エリオットはどうせ出ないだろうと思って渾身の力で「降参する!」と叫んだ。



―――会場中にその声が響き渡った。




オリバーは完全勝利した。


観客も一瞬の出来事過ぎて気持ちの整理ができていなかったのか、ゆっくりと一つずつ一つずつ拍手が増え、次第に大歓声へと変わっていった。


歓声の中でエリオットもまた混乱した頭の整理をし始める。


エリオット「え?なんで?声が出る…!身体も動く…!」


オリバー「そりゃあね。沈黙付与なんて強力な魔法、そんなに長く持続できないよ。あ、ちなみに魔導書も使えるからね」


オリバーにそう言われたエリオットは落ちた魔導書に魔力を送る。

魔導書はいつものように浮かび上がり、エリオットの元へと帰ってきた。



エリオット「完全に負けたよ。本気で行くつもりが何にもさせてもらえなかった。最後のあの魔法はなんだ?もう死んだかと思ったよ」


オリバー「ああ、あれね。"ファイアボール"ならぬ"ファイアワークス"だね。オシャレな勝ち方でしょ?」


 エリオットは呆れたように笑った。

エリオット「ははっ!そりゃー敵わないわけだ」



オリバー「じゃ、とりあえず戻ろうか。また後でね」

 オリバーはそう言い残し、控え室へと帰った。




最上階の観覧席で試合を見ていた学院長は国王に問いかけた。

院長「―――あれは、魔法ですか…?」


国王「なんか前にもこんなことあったよな。でも今回のアレは魔法だ。お前でも知らない魔法があるんだな」



院長「確かに知らないけど予想はつく…禁呪の類でしょう?あれは」

学院長は何かを確信したような表情で言った。



国王「まあ、そんなところだろうな。学院では禁呪なんて誰も教えられないだろうから、多分自分で考えて作ったんだろうな…」



「なーんか、誰かさんみたいなことをしますねぇ…。でも―――」


「失礼します!!」

運営スタッフが国王と院長を呼びに来た。


国王「まあまたゆっくり話そう」

 国王はそう言いながら、立ち上がり観覧席を出た。



―――そして今大会の表彰式が始まる。



次の話で2章が終わり、3章に突入します。

ちなみに禁呪とは何の伏線でもなく国と学院で取り決めている

禁止指定呪文のことで、状態異常に陥れるものの総称として呼んでいるだけです。今回のオリバーの魔法は禁呪に似ているだけで禁呪じゃないので何もないです。



いつもご愛読ありがとうございます。

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