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神罰の英雄たち  作者: Anon
北の大陸(後編)

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123/168

地底の狩人

122話目です。

オリバーは空を飛んでいた。


しかしそれは想像していたものほど心地良いものではなかった。


理解のできない痛みに気がついたからだ。


今まで魔物の奇襲がなかったことから、

完全に警戒を解いてしまっていたオリバーは、

反応が遅れてしまった。


足元からの衝撃を感じた頃にはもう遅かった。


それでも全く反応ができなかったわけではない。


もしそうならオリバーは今、

上空から広大な荒野を見渡せてはいないからだ。



(何をされた?

どこにいる?

どこをやられた?

くそっ。痛い。)


上空へ放り出されたオリバーは、

風を動かしてバランスを取り戻し、状況整理していた。


荒野がよく見えた。

どこから来たのかもどこへ向かうのかも、

それだけではわからなかった。

それでも、よく見えていた。

異様なほどゆったりとした展望だった。

こんなに先が見えているのに何も見えない。

しかしその時間は、絶望を見る前の猶予に過ぎなかった。


そして整理が終わった途端、腹に強烈な痛みが走った。


腹部が引き裂かれていたのだ。



(あの一瞬で腹を…?

"コイツ"は知っている…。

ダメだ…。痛い…。意識が……誰か…)


オリバーの意識が薄れるにつれ、制御していた風もなくなっていき、

オリバーはただ地面に叩きつけられるのを待つだけの人形と化した。


自らの死を覚悟もできず眠ったまま迎えることになった。


特別な人間が特別な死を迎えるとは限らない。

死は何の形も持たずに突如として訪れることを、

オリバーが身をもって表していた。


しかしそれは、

上空から落ちるその身体を受け止められる仲間が、

そして地上で傷を癒してくれる仲間がいなければ、の話だ。


オリバーは蘇った。

仲間がいたからだ。

一人の旅だったなら、確実に死んでいた。

何もできない自分を助けてくれる仲間がいた。


「みんな…ありがとう…」


「…空は美しかっただろう?」


「ジラトの景色だった。最高だね」


「そんなこと言ってる場合じゃないわよ!バカなの!?

ガッツが"アイツ"を食い止めてくれてるの!

さっさと起きて戦いなさい!オリバー!」


地上にいた仲間たちは、

オリバーが上空にいる間のほんの数秒の間に状況を整理し、

臨戦態勢に入っていたのだ。


「ほんと、頼りになるよ。

もう痛くないし…」


『ごめん!遅れた!次はこっちの番だ!』


仮面を装着したオリバーはもう死を待つ人形ではなくなっていた。


「大丈夫か!?オリバー!

"コイツ"賢いぜ。力もつえーしな。

久しぶりに楽しめそうだ」


『そうだね。

ガッツはほんと久しぶりだよね、戦うの。

だからといって手加減はしない。

ちゃんとついてきてよ?』


「任せとけ!

…っていねーじゃん!"アイツ"どこいった!?」


『多分…下だね。

僕達の攻め気と油断を読んでくるよ!

みんな気をつけて!』



「察知なら私に任せてください」

目を瞑り、集中するネフィア。


皆が、固唾を飲んで見守っている。


「ガッツさん!足元!来ますよ!」


「了解だ!ネフィア!」


ネフィアが言った通りの場所とタイミングで"ソイツ"は現れた。


地面から体を半分まで出してガッツに攻撃してきた。


いや、それが半分かは定かではない。

何よりデカいのだ。

それが"半分"と思ってしまったのは、

率直にそれより大きいわけがないという固定概念の表れと、

願望だったのかも知れない。


そんな願望もすぐに潰された。


"ソイツ"の全貌が現れたが、全貌が分からないほど大きな…。


"何か"だった。


『なんだ"コイツ"!

デカいし、足多いな!』


「だろ?俺も最初はびっくりしたぜ!

あと、あの尻尾攻撃には気をつけろよ!

さっきちょっと食らっちまったけど、多分…毒だ」



『わかった。ありがとう。

ちょっと攻めてみるよ!』


オリバーの一閃は、その危険な尻尾を真っ二つに切り離した。

これはオリバーの腕力ではない。

"開拓者のタクト"、オリバーが愛用する短剣の特性だ。


一撃目の威力が高いが一度使用すると戦闘が終わるか、

一定時間経過するまではただの短剣と化してしまう。


それほどのリスクを負ってでも初撃を叩き込む必要があった。


その巨大な何かは、耳をつんざく程の叫喚を上げていた。


『効いてるな。

よし、次だ』


オリバーは風を操り、体の重量を感じさせない身のこなしで、

敵の周囲を駆け回り、跳び回っていた。


風の刃が、炎の球が、氷の槍が四方八方から敵に襲いかかる。


しかしオリバーの放つどの魔法も、

傷一つ、汚れ一つもつけられずに無に帰した。


この一連の戦闘で唯一分かったのは、

"開拓者のタクト"の異常性のみだった。


『異常な硬さだね。

それでも牽制し続けるしかないか…』


オリバーとガッツの少し後方で様子を見ていたジラトは、

次の出方を伺っていた。


「ふむ。オリバーの魔法が通用しないとなると…

我らも出るしか無さそうだな、ヒルダよ」


「私、聖職者で別に戦闘要員じゃないんだけど?」


「今更何を言うか。

その様な並外れた戦闘能力を有しながら、

戦わないとは贅沢なものよ。

さて、我は前へ出る。

後方支援は頼んだぞ。ヒルダ、ネフィア」


「はい!察知と指示は任せてください!」


「はいはい。私もやりますよーだ!

反転祝福―――"ヴァーサ・アーマ"」


その直後、ジラトの大剣による洗練された美しい一太刀により、

敵の鎧ともとれる分厚い装甲の一部が切り裂かれた。


「お二人とも!良いコンビネーションでした!」

ネフィアの称賛がジラトとヒルダに注がれる。


「ジラトが上手いのよ」


「いや、ヒルダのあの魔法だ。

我が想像していた質感とはかけ離れていた…。

ヒルダよ、何をしたのだ?」


「ぼ、防御魔法をかけただけよ…」


「ふむ。良い判断だ。

しかし、相手もタフだな。

まだガッツめがけて暴れておる」


「いや、ガッツの方がタフでしょそれは!

あんな巨体の攻撃を…笑いながら受けてるのよ…?」


「そのおかげで我らの余裕ができておる。

確認はここまでだ。いくぞ!」



「危ない!!」


ネフィアの叫びが届く直前に、ジラトの身体が吹き飛ばされた。

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