無限の森
116話目です。
彼らはずっと森を進み続けていた。
見覚えのある木々。
数分前につけたはずの目印。
彼らの足跡。
過去に刻んだ跡が、何度も行く先で待ち受けている。
『やっぱり嵌ってるねこれ』
オリバーはそう言いながら顎に手を当て一点を見つめている。
「冷静に考察してる場合じゃないわよ!
進めないし戻れないじゃない!」
いつものように文句を垂れているのはヒルダだ。
「何か方法を見つけねばここで餓死というわけだな」
空気を読まず、不安を煽るのはジラトだ。
「こういう類の魔法には必ず法則性や糸口があるはずです…!」
冷静に前を向くのは、魔族の少女ネフィアだ。
「俺にはわかんねー!考えるのは任せた!オリバー!」
全てを放棄し、ついていくことに決めたのはガッツだ。
皆、一つの状況に対して様々な反応をしていた。
「我もガッツに同意だ。何をどうすれば良いか見当もつかん」
洞察力が高く、見聞が深いジラトにも分からないことはある。
『ティリルが反応しないのが気になるんだ。
眠ってるんだけど、僕の魔力は通るし声も出せる。
だけど、ティリルは眠ってるみたいなんだ』
「この森とティリルは何かしらの関係があるのかな?」
ヒルダはオリバーの違和感に仮説を立てた。
『うん。そんな気がするよ』
オリバーも同じことを考えていたようだ。
オリバーとヒルダが話している横で、
ガッツは俯いて小さく「うーん」と呻いていた。
それに気づいたジラトはガッツに声をかけた。
「ガッツよ。珍しく考え込んでおるな?
考えるのを放棄したのかと思っていたが?」
「うーん。なーんか引っ掛かってるんだよ…。
ここはティリルの森なんだよな?」
いつものガッツらしく少しズレた解釈をしていた。
『まだわからないけど、
今のところはそうかも知れないね』
オリバーは否定も肯定もせずに上手く答えている。
「だよな。なんか前にもこんな話…しなかったっけ?
妖精だとか魔法だとか…。
ジラトが話してた気がするんだよ」
「我が…か?そんなこともあったようななかったような…?
それも確か…森の中だったな」
ジラトが話した時、ガッツの目が一際輝いた。
「そうだ!手記だ!あれを読み解けるのは森族だけだって!」
それに反応したのはヒルダだった。
「それがどうしたっての―――」
『お手柄だよ、ガッツ!』
ヒルダの反応を遮ったのは、確信が込められた強い声だった。
オリバーはフィエルの手記取り出すと、仄かに光っていた。
その光は閉じられた手記の中の術式が放っていた。
『やっぱり…。これが意味ないわけないよね』
オリバーはそう呟きながら術式の発動を試みた。
その術式は未完成の為、発動はしなかった。
何も反応がなかったことにヒルダとネフィアはがっかりしている。
しかし、オリバーだけはその発動に手応えを感じていた。
もう一度、未完成の術式の発動を試みた時。
オリバー達の視界を完全に奪うほどの眩い光が森の奥から放たれた。
その光は次第に大きくなりオリバー達を完全に飲み込んでしまった。
彼らの視界に色が戻った時、
そこは先程まで居た森とは信じがたいほど、
色鮮やかで光に満ちた森となっていた。
極度の方向音痴でさえこの森では迷うことはないだろう。
道の先がしっかりと見え、
目的地へと続く道がはっきりと示されている。
『ようやく抜けたみたいだ』
オリバーのその一言を皆が理解するより前に、
ティリルが何かにつられるように、
音もなくゆっくりと飛んでいってしまった。
オリバーにはそんなティリルの姿が、
誰かの手招きのように感じてならなかった。
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