出発
115話目です。
「挨拶もなしにいくつもりか?」
街の入り口でカイムが待っていた。
『ここに来ると思ってたから』
「ふっ。そうか。…もう行くんだな」
カイムは名残惜しそうに言った。
『うん。次の目的地は果てしなく遠いから』
「…全部終わったら、冒険譚聞かせてくれよ」
オリバーは仮面を外し、カイムの目を見た。
「ちゃんと帰ってくる。
それまで迷宮都市《レム=グレイヴ》は任せたよ」
「ああ。任せておけ。
ティナもここに連れてきたかったが…
あれはもう別人だからな」
「気にしなくていいよ。
記憶か肉体か精神か…何をもって個人とするんだろうね。
その答えもカイムなら導き出せると思う」
「ああ。楽しみに待っていろ。
ガッツ、ヒルダ。
お前たちも成長したな。
オリバー1人で出来ることなんてたかが知れている。
それは今回の攻略で身に染みているはずだ。
支え合って信じ合って、やっていくんだぞ」
「俺だって痛いほどわかったっての!
だけど、色々ありがとな!」
「あなたが居なかったら、
私たちはあそこで終わってたから。
本当に感謝してるわ」
彼らは、友との別れの言葉を交わし合い、
それぞれの旅路へと向かった。
迷宮都市《レム=グレイヴ》
『巨人の悪夢』
彼らはここで希望をへし折られた。
恐怖と挫折と絶望にそれがうわべだと思い知らされ、
本当の希望とは何かを教えてもらった。
彼らの人生観をも変えうる経験となったこの冒険は、
今後どう関わってくるのか。
それはまだ誰にもわからない。
彼ら自身の手で掴み取る未来が物語ってくれるだろう。
次の行き先は、古代迷宮『悪魔の策略』
この迷宮はまるで、
最初からここに辿り着くことがわかっているかのように、
彼らを待ち受けている。
東の果てを目指すオリバー一行は、
出発から2ヶ月後、
吸い込まれるように入り込んだ深い森の中で、
進路を失い彷徨っていた。
オリバー『ここ、どこだろ?』
ヒルダ「ちょっとオリバー!しっかりしてよ!」
ジラト「オリバーだけの責任ではない。
我ら皆、道に迷ったのだ」
ネフィア「こんなところで迷って大丈夫なんでしょうか?」
ガッツ「どこ行っても、森!森!森!
ったくうんざりするぜ…!」
『ティリル、この森に入ってからずっと静かなんだよね』
「オリバーが話すだけの道具になってるもんね」
ヒルダは心配そうにでもどこか茶化すように言った。
「いつもならヒルダと一緒になって、ぶーぶー言ってんのにな!」
ガッツもまたヒルダを茶化すように言った。
「私と一緒って…!ぶーぶーなんか言わないわよ!!」
ティリルは、昼にも関わらず眠り続けていた。
『どうやらここは、魔法によって空間を歪ませているみたいだ』
ガッツ「それってどういうことだ?」
『迷ったんじゃなくて、
誰かに閉じ込められてるってことだよ』
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