次の行き先
114話目です。
何も情報はなかった。
よく考えればわかることだった。
この迷宮都市《レム=グレイヴ》の人々の半数以上は、
記憶がなく人格も変わってしまっているからだ。
それについては一つ残酷なことがわかった。
奪われた記憶も精神も個人に紐づいておらず、
またセットにもなっていなかった。
記憶と精神はそれぞれバラバラに、
"人"という入れ物に、無造作に入れられただけだった。
ここで情報を得られないとしたら、持っている情報は1つ。
北の大陸東側に広がる古代迷宮『悪魔の策略』を目指すしかない。
「ということで、大陸を横断します」
「ちょっと待ってよ…オリバー。
転移地点からここまでもかなりの距離があったのに…
それがたったこの程度の西端だったのよ?
それが横断って…何年かかるのよ!」
ヒルダは地図を指さしながら駄々をこねている。
「もう行くしかねーよ!
ここにいたって何もねーし、今更戻れねーし、な!」
「この程度の距離なら大したことはない。
一年か二年程度で行けるなら案外すぐだな」
「アンタの時間の感覚なんて最初からあてにしてないのよ!」
「むぅ…。そうか。
やはり生きる年数が違うというのは難しいものだな」
ジラトは顎に手をあて、考え込んでいた。
「…私はもうついていくしかないので…。
何かお役に立てるように頑張ります…」
「よし!決まったね!
ま、かなり遠いけど色んな町に立ち寄って、
この北の大陸という世界を見てみようよ!」
宿でもう数日休み、
身支度を整えたら出発することになった。
「ねえ、ネフィア」
「お、オリバーさん…!どうしました…?」
「あまり気負わなくていいからね。
役に立とうなんて思わなくていい。
事実、一緒に旅してまだ短いけどさ、
ネフィアの察しの良さにはすごく助けられてるよ」
「そう言って貰えると救われます…。
私、本当はみんなみたいに戦えたのに…。
それができないのが本当に悔しくて…」
「魔法を使うことが戦いの全てじゃないよ。
この間、組手をした時も凄くキレのある動きで驚いた。
恐らく自分にかかる魔法はちゃんと使えてるみたいだ」
「オリバーさんも察しがいいですよね…。
私のどうしようもないこの呪いを、
ちゃんと使えるように解釈してくれて…」
「僕以外はみんなその体に呪いを受けてるから、
どんなものか分析するのも扱うのにも慣れてるだけだよ。
時間があったら、
みんなにもどう向き合ってるか聞いてみたら?」
「そうですね…。とても気になります。
オリバーさん、ありがとうございます。
少し安心できました」
「良かった。ネフィアも看病大変だったろう?
部屋に帰って休むといいよ。
僕はちょっとガッツのなまった体を、
動かす手伝いにいってくるよ」
「わかりました。ありがとうございます」
オリバーはネフィアと別れ、
ガッツの待つ街の外れの小高い丘へと来ていた。
「やあ、ガッツ。お待たせ」
「………あ?ああ…」
「どうしたの?」
「迷宮、なくなったんだなって。
俺が来た時と全然景色が違うから戸惑ってたんだ」
「まさか攻略した途端に、
跡形もなくなるなんて思ってなかったから…」
「次の迷宮はちゃんと起きてたい…。
俺だって活躍してーよ」
「頼りにしてるよ。
僕はガッツの盾のおかげで好き勝手動けてるんだからね」
「だよな。
俺さ、自分に期待しすぎてた。
俺にできることは最初も今も変わらないのにな」
「僕だってそうだよ。みんなそうなんだ。
自分のできることだけをやっていこう」
「だな。…じゃ、始めるか!」
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