リスタート
112話目です。
ガッツは眠っていた。
いや、恐らく寝たフリ…。
もしくは、眠ろうと必死なのかも知れない。
オリバーは何も言わず静かに傍に座った。
音のない時間が流れた。
沈黙で語り合っているように。
そしてその空間を揺らしたのはガッツだった。
ガッツ「…………聞いてくれるか?」
オリバー「うん」
ガッツ「俺さ、ずっと冒険をしてきたんだ―――」
どのくらい前からかわからないけどずっと。
仲間もいたけどいつの間にか一人だった。
名前すら思い出せなくなってた。
俺さ、聖剣……なんとか?ってやつを握ってたんだ。
勇者にしか持てない聖剣だ。
竜も一撃だった。魔法も使えた。
オリバーみたいにはできなかったけど、
凄く強い魔法だった。
一人で戦えてたんだ。
誰にも頼らなくても、
一人で考えて、一人で切り開いて、一人で倒して…。
楽しかった。これが冒険なんだって。
でも、急に景色が変わった。
病室。
見覚えのある顔。
いつもと違う服。
名前は思い出せた。
ネフィア。
最近、オリバーが連れてきた新しい仲間。
オリバー…。自然と頭に思い浮かんだ。
俺、忘れてしまってたんだ。
こんな…大切な……。
でも……。
もう"冒険"はできない。
ネフィアの言葉で思い知らされた。
あの"現実"が何もかも全て"夢"だった。
本当の俺じゃなかった。
勇者でもない。剣も持てない。一人じゃ戦えない。
頭も悪い。盾で何ができる。
足を引っ張ってるんだって気づいた。
俺はもう……。
「ここで冒険を辞めるよ」
オリバー「辞めるって…そんな……」
―――。
オリバー「それなら、僕も辞める」
ガッツ「……え?」
オリバー「僕もさ、気づいたんだ―――」
一人で冒険をしてたって。
でも、怖くて怖くて…何もできなかったんだ。
みんなを引っ張らなくちゃって思いだけはあったけど、
それがみんなの足を引っ張ってた。
全部空回り。嫌になっちゃったよ。
でもそう思ってたのは僕だけだった。
ヒルダもジラトも僕を頼りにしてくれて。
みんな助け合って、ちゃんと仲間と冒険をしてるなって思った。
恐怖に震えてた時も。
自暴自棄になった時も。
絶望に打ちひしがれた時も。
一人じゃ何もできなかった。
全部全部、仲間がくれた。
僕、やっと気づいたんだよ。
口では仲間が大切だと言いながら、一人で戦ってたって。
この"現実"が"夢"であって欲しいと願ってしまった。
一人じゃ何もできない恐怖を味わったから。
ガッツはずっとこんな恐怖と……。
どうやってここまでやってこれたんだよ。
心の底から思う。
すごいよ。ガッツは。
だからこそ言うよ。
「僕は君無しじゃこの先へは行けない」
ガッツ「俺、オリバーにまだ言えてなかったことがあった」
俯きながら恐る恐る言った。
オリバー「ん?なに?」
ガッツ「助けてくれてありがとう。
あと…。
………酷いこと言ってごめん」
そう言った後、ガッツは顔を上げてオリバーの方を見た。
オリバーは笑っていた。
涙を流しながら。
オリバー「僕の方こそ……ごめん。
確かに少し英雄気取りだった」
ガッツ「いいんだ。この街では間違いなく英雄なんだ」
オリバー「ねぇ、ガッツ。
1つ提案があるんだけど…」
ガッツ「提案?何だよ」
オリバー「僕と…冒険者やってみない?」
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