森の主、白蛇討伐戦
10話目です。
ガッツの言うバカでけー蛇は眠っていた。
その蛇は全身が白く、そして何よりデカい。
とぐろを巻いているから全長は分からないが、
眠っている姿でも2人の数倍は大きいことが、
離れていてもわかる。
オリバーはガッツに待機のハンドサインを出し、
偵察へと向かった。
ガッツ「おい、オリバー。やめとけ、戻ってこい」
しかしオリバーはいい考えがあると言いたげに胸を叩く。
オリバーは気配を消して大蛇にどんどん近づく。
その隙に魔法の罠を仕掛けていく。
踏むと小さな爆発を起こす罠を置いたり、
地面を泥沼に変えたり、
逆に地面が隆起する仕掛けも施した。
合図を出す為、ガッツの方をみたその時。
オリバーの横を何かが高速で通り抜けた。
(気配を隠しきれなかった…!)
オリバーが振り向くとそこには目を覚ました大蛇が、
尾を構えてこちらを睨みつけていた。
オリバーは一瞬恐怖を感じたが、瞬時に臨戦態勢に入る。
それを見ていたガッツも急いでオリバーの前に出る。
ガッツは右手に持った「魔盾『嚇』」を大蛇に向けたが、
いつものように敵視されている感覚がない。
盾が放つ脅威を全く気にしていない様子だ。
ガッツ「くそっ!おい!こっちだ!!」
必死に叫んでも見向きもしていない。
大蛇はただオリバーを睨みつけている。
オリバーとガッツは出会った時と同じく死を覚悟していた。
しかし諦めたわけではない。
オリバーはさっき受けた高速の突きを警戒していた。
しかし、どう警戒しても目で追って避けられるわけがない。
それぐらいの速さだった。
オリバーは大蛇との間合いを保ちながら沢山考えた。
自分の反応よりももっと速く反応する方法を。
そして…
(やってみるか…)
何かを思いついたように、
先程までは"隠していた"魔力を今度は放出する。
大蛇の周りの空気に自分の魔力を溶け込ませていった。
(これで僕が意識するよりも先に大蛇の動きがわかる…!
微細な体の動き、地面を擦れる振動…
全てを感じることができる…!成功だ)
いつも手遊びで使っていた風魔法を応用し、
空気のうねりを魔力を通して感じることで、
高速の突きに反応する戦法だ。
大蛇は何度も何度も連続で尻尾による高速の突きを放つ。
その度に地面が抉れ、木々が倒れていく。
オリバーはかすりながらも何とか致命傷を避けている。
(大丈夫、反応はできてる…。でもそう長くは保たない…!)
オリバーがそう考えていると突然、
物凄い地響きと共に魔力が拡散した。
ガッツ「さあ!こい!こっちだ!!」
叫びながら「宿命の重剣」を地面に突き刺した。
その瞬間、「宿命の重剣」から大量の魔力が拡散され、
地響きがなりだした。
これは「宿命の重剣」が持つ力の1つで、
「宿命の重剣」を中心とした円系の範囲に、
強い重力フィールドを作り出す力だ。
これは敵味方問わずフィールド内にいる全員に効果をもたらす。
オリバーは突然の地面に引き込まれる感覚に戸惑う。
ガッツはあまり重力の負担を感じていないようだ。
「オリバー大丈夫か!この剣のせいか!?
いや、それならあの蛇にもかなりの効果があるはずだ!」
ガッツの言う通り、
先程までは軽快に動いていたその大蛇の身体も、
かなり重く鈍くなっているようだ。
大蛇は身体のコントロールが上手くいかなくなり、
完全に感知して踏まないようにしていたオリバーの罠を、
少しずつ起動していくようになった。
そしてオリバーも大蛇と同様に身体が動かない。
しかし、咄嗟に風魔法で自分の五体を強引に押し動かすことで、
重力の影響を減らして動けるようになった。
(ふう…危なかった…これでなんとか動ける)
そしてガッツはまた大きな声で大蛇を挑発する。
ガッツ「おい!雑魚蛇!こっちだっていってんだろーが!!」
その声に反応したように、大蛇は急にガッツを睨みつけ、
重い身体を何とか動かしガッツに襲いかかろうとする。
しかし、敵に狙われて攻撃を受けるのはガッツの得意技だ。
大蛇の大きく重い攻撃も2枚の大盾で完全に防ぐ。
その隙にオリバーは無数の風の刃を大蛇に放った。
そんなこともお構いなく、
オリバーに向かって勢いよく尻尾を突き出して攻撃する。
「宿命の重剣」のおかげでさっきよりだいぶ遅い。
そして張り巡らせている魔力のおかげで、
相手の動きが手に取るように読める。
大蛇は自分の攻撃がこれ以上通用しないことを察したのか、
次は口を大きく開けて何かを噴射した。
ガッツ「これは…!たぶん毒だ!霧状になっていくぞ!
俺の後ろに来い!オリバー!」
その声でオリバーは瞬時にガッツの後ろに行き、
風魔法を前方に吹き付けるように放出し、
毒霧を大蛇の方に散らした。
オリバーはまた無数の風の刃を大蛇に向かって飛ばした。
さっきより集中できたせいか、
洗練された刃が大蛇の身体に初めて傷を付ける。
そしてオリバーは大蛇に接近し、
傷口に爆発の罠の魔法を設置した。
風の刃で傷をつけて、爆発の罠を設置する…。
これを何度も繰り返した。
その中で徐々に泥沼の罠に追い込んでいき、
大蛇の身動きを完全に封じた。
オリバーは大蛇の真上に大量の土を巻き上げた。
そしてその土はいくつもの小さな土塊へと変化し、
勢いよく大蛇に降り注ぐ。
大したダメージにはならない魔法だが、
目的はその土魔法によるダメージではない。
大蛇の身体中の傷口に仕掛けられた爆発の罠が次々に起動する。
ガッツは盾を構え、爆風から身を守る。
凄まじい爆撃と爆風が止み、
土埃が晴れた先に大蛇が倒れていた。
ゆっくりと近づき、ナイフを何度か突き刺す。
筋肉の弛緩を感じ、大蛇が死んでいることを確認できた。
ガッツ「おい!やったのかよ!!」
(……………)
オリバーは勝利を噛み締めるように深く頷く。
ガッツ「よっっっしゃあぁー!!!!」
勝利の雄叫びを上げた。
オリバーは仮面を外しながらその場にへたり込んだ。
オリバー「あぁー、疲れたぁー…死ぬかと思ったぁー…」
ガッツ「俺もだよ!…でも俺ら勝ったんだよな…。
雑魚でも死にかけてた俺らがこんなすげー奴に勝ったんだぜ?」
ガッツが嬉しそうに言う。
オリバー「成長したよね、僕たち。
よし、ちょっと休んだらギルドに帰ろう。
大蛇の戦利品と痕跡を持って報告に行かなきゃ」
ガッツ「そんで文句いってやろうぜ!
何が初心者用依頼だ!殺す気か!ってな!!」
オリバー「ははっ。そうだね。本当に死ぬところだった」
2人は大蛇討伐の報告にギルドへと帰るのであった。
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