覚醒
108話目です。
そこは、以前とは少し印象が違った。
まるで真昼のように明るいのだ。
それも再訪者故なのか…。
そして敵は明確にそこにいるのに、その異常な見た目から、
何も手を出せずに立ち尽くしていた。
今、攻撃しているのか。
様子を伺っているのか。
そういう意思がないのか。
カイム「どうする…?」
オリバー『どうって…やってみるしかないんじゃない?』
オリバーは、指先に水弾を作り出し、
"巨大な脳"に向かって高速で発射した。
着弾したが反応はなく、効果があるのか無いのかもわからなかった。
カイム「やるな!オリバー!
次はオレの番だ!ふんっ!!」
カイムは片手で剣に力を込め、渾身の刃を振るった。
カイム「弾かれたような手応えはあるが…効いてるのか…?」
ジラト「オリバー!カイム!やめるんだ!」
オリバー『どうしたの!?』
ジラト「どうしたではない!
何故急に"味方同士"でやり合っておるのだ!」
その言葉で急に見ていた景色が変わった。
真昼のような明るさは、次第に元の薄暗さへと変わっていった。
何故気づけなかったのか。
そんな明るい空間でカイムと2人で共闘しているはずもないのに。
全てに気がついた瞬間。
カイムの体に激痛が走る。
オリバーの腹部から血が溢れる。
オリバー『うっ…!なんで…!?』
ヒルダ「今助けるから!ヴァーサキュア!」
オリバーの腹部の傷がみるみるうちに塞がる。
ティリル「カイムは私に任せてねっ!」
カイム「すまない。ありがとう」
オリバー『一体…なんだったんだ…?』
ジラト「幻影を見せられていたのだろうな。
ヤツを目にした瞬間からな」
ヒルダ「ほんと。びっくりしたわよ。
ジラトが止めなきゃ死んでたわよ…?」
オリバー『ごめん…』
"巨大な脳"の幻影により、
オリバーとカイムは攻撃を封じられてしまった。
カイム「……こんなんじゃダメだ……」
オリバー『ねえ、カイム。まだ正気だよね?』
カイム「あぁ。正気だ。
ヤツに攻め気を見せなければな」
オリバーは、魔法で氷塊を2つ作り、薄く細く精錬した。
そのうちの1つをカイムに投げやった。
カイムは受け取った"氷のナイフ"に目をやり、オリバーを見た。
オリバーもカイムを見ていた。
2人の覚悟はその時点で一致した。
カイムは腕がない方の肩に、オリバーは右の太ももに、
その"氷のナイフ"を突き刺した。
ヒルダ「あ、また!?
ちょっと!ジラト!早く止めてよ!」
ジラト「止める必要がどこにある。
これはケジメと覚悟の一撃だ。
そして、これより彼らはもう操られぬ。
まあ、見ていろ」
ヒルダ「そういうこと…?そんなの通用するの…?」
オリバーとカイムの動きは先程までとは違っていた。
2人とも手負いとは思えない身のこなしで、
"覚悟のナイフ"でそのまま"巨大な脳"切りつけていた。
オリバー『さっきまでとは全然手応えが違うね!』
カイム「あぁ!そうだな!」
しかし、敵に全く変化が現れず苦戦していた。
カイム「手応えが…あるのはいいが……」
オリバー『終わりが…見えないね…』
カイム「チッ。ただ痛いだけかよ」
オリバー『多分だけど、やり方が間違ってるんだと思う』
カイム「どういうことだ?」
オリバー『だってさ、こんなに攻撃してるのに、
なーんにも反撃してこないんだよ?おかしくない?』
カイム「確かに違和感はあるが…だからどうしろって言うんだ」
オリバー『コイツが今までやってきたこと、
今も尚、ずっとし続けていることを考えてたらさ、
なんとなく見えてきたんだ。ま、見ててよ』
オリバーはナイフを捨て、両手を広げ、目を瞑った。
再び目を開けると、また真昼の空間に来ていた。
オリバー『やっぱ、そうだよね…』
ゆっくりと"巨大な脳"に近づく。
オリバー『君が知りたいこと全部教えてあげるよ。
その代わり、君の名前を教えてよ』
そう問いかけながら、オリバーは"ソレ"に触れた。
オリバーの今までの知識、経験、選択、そして関係性。
オリバーの全てが"ソレ"に流れ込んでいった。
オリバーの頭の中に声と呼べない声、言葉と取れない言葉が、
ふわりと流れ込んできた。意味がわからないのに、意味がわかった。
オリバー『そうだったのか。あとは任せてよ。
僕が行くまで…』
―――名は、■■■■―――。
オリバー『ん?え?もう一回!』
―――あ……とう―――。
薄れ行く意識の中、最後にどこか心地よい言葉が聞こえた。
ヒルダ「オリバー!オリバー!」
意識のないオリバーに必死に呼びかけるヒルダ。
そして、オリバーの耳にようやく届き…。
オリバー『やあ、おはよう』
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