第四層:中枢
104話目です。
オリバーは、激しい戦闘による疲労と、
吸われ続け減っていく魔力により、
最早正気を保つことすら困難になっていた。
目が虚ろになり、足が動いているのかもわからない。
時折、躓くことで現実に引き戻される。
そして、何かにぶつかった。
オリバー『ぁ…。……ごめん……。ジラト……。
ぼーっとしてた………』
ジラト「……我は後ろにおるぞ」
オリバー『へ…?じゃあ…これは……?』
今まで何の物体にも遭遇せずぶつからず、
黙々と進み続けてきたその空間に、
初めて異物が現れたのだ。
ジラト「……人だ」
ヒルダ「…え?…街の…人かしら…?」
ジラト「わからぬ……が、何やら並んでおるようだな…」
極度に疲弊し判断が鈍っていた彼らに、一縷の希望が光射した。
ヒルダ「てか、ジラト…?
なんで剣を抜いてるのよ…」
ジラト「まあ、意味があるか分からんが…
地面に…穴を空けながら進んでおった…。
我の意識を保つ為でもあったが…何か目印になればと思ってな…」
オリバー『ずっと…綺麗に一列に…。
何かおかしいよこれ…』
ジラト「これらが街の者なら…この列の先に必ずおるはずだ…」
ヒルダ「幻じゃないのよね…?」
そう言いながら並ぶ人々を触っていく。
ヒルダ「ちゃんと手応えがあるわよ…!」
オリバー『そうだね…。もうすぐだ…!』
突如、霧が晴れた。
しかし、その薄暗さは変わらない。
列の先に赤いツンツン頭が見えた。
オリバー『ガッツだ…!』
何の警戒もなく走り出したオリバーを誰も止めることなく、
ヒルダとジラトもその後ろをついて行った。
オリバー『ガッツ!ガッツ!起きてよ!ガッツ!』
ジラト「やはり…深く眠っておるようだな…」
ヒルダ「…え。なに……?あれ……?」
オリバーとジラトは狼狽えるヒルダを見た後、
その目線の先に目をやった。
そこには、説明しがたい巨大な物体が浮かんでいた。
オリバー『………脳?』
空間の真ん中で、
巨大な人の脳みそが薄い膜に覆われて、宙に浮いているのだ。
そしてその正面と思われる場所に向かって一列に人々が並んでいた。
オリバー『こうやって…一人ずつ…一人ずつ…
食べていってるのか…?』
ジラト「オリバー。眺めている時間はないぞ…。
我々もいつ倒れてもおかしくないのだ…。
皆の協力が…皆の諦めない心が…
唯一の…帰還の希望なのだ…」
オリバー『…そうだね。…行こう。
…ジラト…いける?』
ジラト「ガッツだな…。幸い、鎧は着ておらぬからな…
なんと…!か…!持ち上げれそうだ…!」
ジラトが、大剣で地面につけた穴を頼りに、
一心不乱に外へ向かった。
目的は帰るだけ。
そういった単純な目的なら行けそうな気がした。
しかし、この迷宮はそう甘くなかった。
さっきほど怖くはない。
消耗はしているが感じてはいない。
帰りの方が元気だと思っていた。
しかし次第に体中が重く、立っているのがやっとになってきた。
一歩前に出すのに、これ程まで時間も力も使わされたことはない。
仕舞いには、四つん這いになっていた。
腕の力、足の力、使えるものは全て使ってでも進まないと、
その場で押しつぶされるような重みだった。
夢見る者はあの巨大な脳に奪われ、
正気を保つ者は、ここに潰される。
これがこの迷宮の性質なんだと悟った頃には、
もう何も動かせずに地に伏せていた。
オリバーだけではない。
ヒルダもジラトも薄っすらと意識を残されたまま、
体の自由だけを奪われていた。
朦朧とする意識、動かせない体。
助けもなく体は腐り、あの脳に精神を奪われるのだろう。
彼ら3人の冒険はついにここで潰えた。
???「アイツを一目見たヤツは全員こうなっちまう。
"オレ"もそうだったからな。
…よく頑張った。あとは、任せろ」
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