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EP.1 夢の回想、隻眼の勇者。

よろしくお願いします

こちら私が中学時代に執筆したものです

当時から改変等はしておりませんので読み苦しい場面もあると思いますがお手柔らかにお願いします



降りしきる雪のような白銀の世界。


軋む(きしむ)身体。白衣を着た〝誰か〟


汚れ一つ見当たらないパールホワイトのベッドの上で、透き通るような赤い瞳はその神聖な世界を受け入れる。


恐ろしくも安楽な心を示す俺に、彼は小鳥の囀り(さえずり)のように穏やか声で、優しく耳を震わせた。


      ――思い出して――



八月上旬。


ジワジワと蝉が鳴く、うるさい田舎道。


この世界にまだ俺が居た頃、愛知県の郊外にある、【東二河高等学校】に通っていた普通の学生だった。


あぁ......名前が先だったな。


俺の名前は、柳瀬優馬<ヤナセユウマ>

バスケ部の[ポイントガード]として部に所属している。


身長は百六十センチと低い()だと言われていたが、運動だって勉強だって、血のにじむような努力をしなくても何だって出来た。


その能力があれば、身長が低いなどというものは俺にとっては[ハンデ]でも何でも無かった。


大学受験を控えた高校三年生だが、今はまだ十七。冬には誕生日を迎えるから、立派な大人の仲間入りとなる。はずだ。


何もしなくても付いてくる筋肉とは裏腹に、服を着れば女性に近いような中性的な顔立ちのせいで、[筋肉質]に見られたことは一度として無かった。


それに、ちょっと怖がりで臆病な一面があるせいで、本当に()()()みたいだと言われることもあった。女扱いされるのはいつものことだから、流石にもう慣れた。


そんな俺には他社には無い特殊な一面があり、カラーコンタクトを入れているんじゃないかと疑われてしまうほど、キラリと輝く宝石のような赤い瞳を持っている。


これが原因で、いじめられたこともあった。


だから、今は黒のカラーコンタクトで瞳を隠してるわけだが……そんなことはどうでもいい。


ある日の夏休み。


肌を焼くような灼熱の猛暑の中、部活動を終え既に正午を回った昼過ぎ。


昼食を済ませて帰ろうと、一人大通りを外れて寄り道をしていた。


鳴き喚く蝉の声が響く街路樹と、小さな羽虫がブンブンと飛び回るようなそこらじゅう虫だらけの通り。土と草木の混じったような香りが、火照る身体に熱をこもらせている。


俺は元々、田舎に住んでいたわけでは無い。


都会暮らしで自然とは無縁の生活だった俺は、虫という生き物がどうにも苦手だった。


この東二河に来てすぐのことなのだが、靴の中に[イナゴ]が入っていたことがあった。


それから虫だけは、本当に苦手になっちゃったんだよな。


そんな俺が何故、田舎暮らしになったのか?それは、俺がここに来る前の話だ。


十年前、まだ小さかった俺と妹を残して、いつも笑顔で元気だった父と母は、不慮の事故で亡くなってしまった。


両親がいない俺達を一人にするわけにはいかないだろうと大好きな叔母に引き取られ、このド田舎の平屋に移り住んだと言うわけだ。


現在は俺達を引き取ってくれた叔母と、中学生の妹と俺の三人暮らしなのだが、食器は()()()四人分あった。何故四人分なのかは聞かない。聞く気もない。どうでもいい。


いつも笑顔で迎えてくれる叔母と、人慣れしていない無口な妹だけど、そばに居てくれるから別に寂しいなんて思わなかった。


これで、一通りの自己紹介は終わりかな?


車も人もほとんど通らないような表通りを曲がり、車一台がギリギリ横切れるような狭い通りを歩いていく。


バイクの排気音が聞こえてくる道を行くと畑が一望出来る綺麗な景色だが、そんなものには一瞥(いちべつ)もくれず、流石にもう慣れたものだとひょうひょうと歩く。


虫は得意じゃないというのは先程話したが、それ以上に人と話すのはもっと苦手だ。だから、出来るだけ人通りの無い道を選ぶ。


左肩に掛けた学生鞄に付いている【—教】と掠れた汚い文字が書かれた、パンダのキーホルダーがリンリンと音を立てている。


叔母さんにもらったんだけど......これが、なかなかうるさいんだよ。


ジワジワと耳を劈く(つんざく)蝉の鳴く声と、風に吹かれてザワザワと揺れる木々。遠くの方で、誰かが何かを叫ぶ声だけが聞こえる。


それ以外、何も無い道を歩き続ける。


蝉の声にかき消されたせいで聞こえなかったが、後ろから髪の長い小さな女の子が駆け寄って来ていることに、俺は気が付かなかった。


「おーーーい!!!優馬ー!!!帰ろうぜーー!!!!」


――――バンッ。


俺は、その強い衝撃でよろけた。


胸まで伸びるスペードを模したネックレスが、身体から離れるように大きく揺れる。


背中に走る、電流にも似たような衝撃。突如、全身を駆け巡る頭にまで響くような鈍痛に、一瞬何が起こったのかわからなかった。


あまりの痛みに顔を歪めた俺は、その痛みに耐えきれず、うずくまってしまう。


「いってえええええええ!!!この筋肉バカが!!!!」


「え。ひ弱かよ。さっき筋肉質とかどうとか言ってたじゃん。」


「運動は出来ても力はねぇ!それが俺だ!ってか、人のナレーション聞いてんじゃねえ。」


こいつは、幼少期に胸の発育を終えてしまった、可哀想な幼馴染の菊野陽菜<キクノハルナ>


俺と同じ東二河高校の三年生で、今はテニス部の『キャプテン』をやっている。種目は違えど、俺と同じく一年生で全国大会に選ばれるような実力者だ。


左腕全体に、目立つような大きな切り傷がいくつかある。昔色々あったようだ。深く詮索はしない。


だが、身長は俺の方が十センチも高い。チビすぎる。

いや、俺が高身長だから小さく見えてしまうのかもしれないな。


......[だが]の意味もわかんねえや。


小さくても全国大会に出るような実力者の彼女だが、何かと詰めが甘い。大事な場面で、大きなミスを犯してしまうことがよくある。


一年生の時に出場した大会。サーブだけが取り柄だと言っていた彼女は緊張から手が震え、繰り返すダブルフォルトが原因で敗北。悔しい涙を流した。


今はそのサーブに磨きがかかり、力をこめて打つと最高速度百七十キロにもなるらしいが、疲れが見え始めると全く入らなくなるノーコンサーブだ。


そんな超怪力に隙を突かれ、油断した状態で殴られると悶絶必死ってわけさ。


相変わらずの灼熱の暑さをものともせず、ふざけ合いながら彼女と狭い通りを歩き、やがて景色は代わっていく。

覆い被さるように木々が生い茂る通りを歩く。


他愛の無いおしゃべりで場が盛り上がっているのが、俺達が馬鹿である証拠なのかもしれないな。


馬鹿をやって。笑い合って。それが、一番楽しいんだよな。


陽菜は、突然思い出したように口を開いた。


「てかさ、今日から来てるバスケ部のマネージャーどうなの?結構可愛いって噂じゃん!」


「あぁ、いつものように俺には無視だよ。何でだろうな。妹も相変わらずだしな。」


「何でなんだろうね?カッコいいのに、女の子からは話しかけてもらえないよね?あっ!そっか!私が、とっっっっっても可憐な美少女だから、彼女だと思って話しかけられないのか!」


絶壁とはよく言ったもので、ゼロに等しい程平らな胸だが、確かに陽菜は整った顔立ちではある。学校でもよく噂をされるほどで、誰にでも優しく接していることから、周囲の人間からは【二河の天使】なんて呼ばれている。


俺如きが、彼女に釣り合うわけが無い。だから、好きでも告白なんてしない。


する気も無い。


何だかそう思うと胸が苦しくなるのだが、これ以上こいつの話に乗ると超絶鬱陶しくなるので、ここは完全にスルー。


「おぉ......無視か......そこを無視されると恥ずかしくなるんだが......」


「うるせえブス。さっさと飯行こうぜ。」


「いや、聞き逃せねえよ。行くけどさ。」


突き当たり。


車がぶつかったかのように押しつぶされてしまったガードレールと、大きく砕けたコンクリートの壁が目の前に広がり、その通りの別れ道を左に曲がる。


(あれ?こんな場所に道なんかあったか?)


数歩歩いた後疑問に思った俺達は振り返り、別れ道の反対側に目をやった。すると、視界の先に何やら見慣れないものがある。


「こんな所に......踏切?」


踏切だ。確かに、そこに踏切がある。


彼女の言葉でその存在に気付いた俺は、踏切が気になり近づいて行くことにした。それは汚れやサビが目立ち、今にも崩れてしまいそうなほど古びている。


それに踏切のバーは折れてしまっており、線路も草木に隠れてほとんど見えない。

整備をされているような様子はないため、現在は使われていないのだろう。


――――カラン。


固い何かが地面にぶつかる音が聞こえ、すぐにそちらに振り向く。


少し距離があって見えづらいのだが、踏切を挟んで向こう側に、無造作に置かれたサビだらけの棒のようなものが転がっていた。


確かに気になりはしたが、かと言ってこの線路を越えるつもりもないので、近づいてみるようなことはしない。


「凄いね......何か汚い。」


「向こう側に道も続いているみたいだ。絶対に行かないけど。」


そう言いながら線路内に入り、踏切の向こう側にまで行こうとしていた陽菜の腕を掴み、線路の内側まで腕を引っ張った。


暑さにやられてほのかに顔の赤い陽菜は、恐らく脳味噌まで焼け焦げているので何をしでかすかわからない。

それに、今まで気付かなかったのもおかしいと思うほど不気味な場所だから、絶対に余計なことをするべきでは無かった。


踏切を挟んだ向こう側の景色は木漏れ日で照らされ、木や草の生い茂る明るい道になっている。だが、見えるのはそこまでで、その先は何も見えないほど真っ暗。更には周りは山に囲まれていて、とにかく虫が多い。


風ではない何かが草をかき分けたせいで鳥肌を立ててしまい、この暗さより大きめの虫がいるかもしれない。

この場所の方が視界が開けている分、生き地獄だと思えてくる。


触らぬ神に祟り無し。この無乳を引きずり回してでも、ここから離れなければ。


「早く行こうぜ。腹減ってんだよ。」


平静を装いながらも鳥肌が隠せない俺と、それに気付かない陽菜。

バレたら恥ずかしいと思う気持ちは、しっかりと隠しておこうと思う。絶対にイジられる。


だって、虫は気持ち悪い。でも、虫が嫌いなのはバレたくない。

高校生らしい可愛い悩みだよな?な?


「面白そうなのになぁ。あれ?何か向こうから来.........」


列車だ。


今は走っていること自体が珍しそうな黒い車体は、所々塗装が剥がれ落ちている。その古ぼけた列車は警笛を鳴らしながら、こちらに向かって走ってくるではないか。


それも異様な光景だったが、今は使われていなさそうな場所を列車が通っていることが、一番の驚きだった。


警笛の音が鳴り響くが、その場から動けない俺達。



――――ドンッ!



その時、誰かに背中を押された気がしたんだ。



や――ろ――に――り――すな――



何か大きな声が聞こえた気がする。



俺が地球で、最後に見た光景は......



割れたランプ。



必死に俺の腕を掴んで線路外に出そうと、引っ張る陽菜。



その背後にうっすら見える小さな影。



大きな音を立てて、向かって来る列車。



全身が焼けるように熱い。



何で......



こうなったんだ?


***


「思い出した?」


人影……?

ぼやけてはっきりとは姿は見えない。


ハッとして起き上がろうとしたが、身体はおろか、指一本動かすことが出来ない。


指先だけでも何とか動かせないかと暴れてはみるものの、あまりにも重くなってしまった身体は、まるで言うことを聞いてくれそうに無かった。


その状況に、俺は激しい焦燥感を覚えていた。


「ここはどこだ?陽菜はどこに行った?俺はどうなった?死んだのか?」


動かせる部位は全て動かそうと、全身に力をこめて暴れた。今思えば、人を殺すかと思うくらいには目が血走っていたと思う。


しかし、こいつは俺の問いに応えようとはしなかった。


淡々と話を終わらせたいという気持ちが、ヒシヒシと伝わってくる。


こいつは絶対に名乗らない。


そう分かるほどに、俺に対して何の興味も示していないことがわかる。


だが、名前が無いのはどうにも不便だ。


姿は見えず声以外の判断材料がない……


モブAという意味を込めて適当に【アルファ】という名をつけることにした。


ギラギラとした眼をする俺にあくびをしたアルファは、感情を棄てたロボットのように無機質に問いかけた。


「取り乱してる所悪いが、説明をさせてもらいたい。冷静に話を聞いてもらっていいかな?」


俺の目の前に何かが現れた。


荒らげた声と激しい焦りを一息に抑え、落ち着けと念じながら深々と呼吸をする。


どこからか差し込んでくる眩い光を受け、顔は見えずともその穏やかな声と清潔感のある真っ白の白衣が彼の輪郭を創造していく。


(高音域な.........男性?)


男女どちらにも聞こえてしまうその声は、自らの死に直面した俺とって、救いの手のような心地良さを感じる。


先程の溢れかえるような激しい焦燥感はいつの間にか消え去っており、乱れた呼吸は安らかな呼吸へと変わっていった。


「落ち着いたね。早速だが、説明をさせてもらうよ。」


心地の良い声で話す彼は、俺が寝ているベッドから少しだけ離れた位置に立っていた。俺は耳を澄まし、その声を聞き逃すまいとアルファに全神経を注ぐ。


「君はこれから、別の世界に転生する。【アスレア】という世界だ。その世界は、剣と魔法で溢れている。そこで、君は魔の根源を断つ。」


「ちょっと待『これは建前だ。』」


彼は有無を言わさない態度で俺の話を遮り、その上で話を続けた。


「本当のことを言うと、君にはアスレアに行ってもらいたくないんだ。」


「……はぁ!?」


彼の衝撃的な言葉に、思わず目を丸くしてしまった。


白いベッド以外は何も無かったこの空間の中で、どこからともなく現れた、背もたれの無い椅子に腰を掛ける。


バサっと広げた白衣が、ダラリと床に触れた。


「え......じゃあ、何で俺ここにいんの......?これは......あれか。間違えて死んだパターンで、最初からチート能力的なあれだろ?間違いない。」


「そうだ。私が未熟だった。私のミスで君がここに呼ばれてしまったんだ。本来なら呼ばれるべきでは無かった君と、君の幼馴染も同時に転生された。そして二人は時空の列車に轢かれた。だが、運良く彼女は君と同じ道を辿ったようで、一足先に、アスレアへと向かった。」


(なんだ。俺ら二人共、間違いだったのか。まぁいい。陽菜に会えたら、後は何とかして帰る手段を探せばいいだけだ。)


この時の俺は、彼の心地良い声の影響でリラックスしてしまい、この状況を少し楽観的に考えてしまっていた。


故に、これから先のことなど微塵も頭になかった。


「そうだったのか......アスレアに着いたら陽菜を探したい。どこに行けば会える?」


「私は、転生者の案内役だ。その後のことは、私にはわからない。自力で探すんだ。そして、彼女を救ってやるといい。問題は......」


会おうと思えばすぐに会えるなんて安堵していた俺に、少しだけそっけない声で応えた彼は、うめくような難しそうな声で話を続けた。顎に手を当てている姿は、いい知らせでは無いようにも思える。


しかし、ここで俺のセンサーが発動した。チートセンサーだ!


「君のスキル......君自身が持つ力が、問題なんだ......君に力が無いわけではない。無いわけでは無いんだが......」


(おぉ!それそれ!待ってましたよ!最強の力を俺にくれよ?アルファさん?)


彼の仕草といい落ち込んだ声といい、確実に良い知らせでは無い......

はずだが、人の話をまともに聞かないという特別なスキルを持っている俺は、[力]と聞いてワクワクしていた。


ゲームはRPGしかしたことが無いし、転生物の小説はほとんど読まないが、その単語1つが俺にとっては、何とも嬉しい言葉だ。


「どんな力が......眠っているんだ......?」


ゴクリと唾を飲み込み、気付けば俺は子供がおもちゃをねだるように、キラキラした真剣な眼差しを彼に向けていた。


「君は、一度でも見たことのある魔法を、見た通りそのまま使うことが出来る。アビリティネームは、【不完全認識】<コードゼロ>」


(ふおぉぉぉぉううええあああえい!!!来た来た来た来た来た来た!!!!!)


「だが、初撃はそんなに強いものでは無い。正直、何の意味も無いくらいだ。二撃目で大きく力を発揮する。その威力はとてつもなく絶大だが......三撃目を発動した際には、その魔法は失われてしまうんだ......」


一度見るだけで、魔法が使えるチート!これは、なかなか凄い能力じゃないか!.........ん?魔法が使えなくなる?


「例えば、君が【ファイア】という魔法を覚えるとする。一撃目のファイアは、威力がとても低い。もはや、火をつけるくらいしか出来ないだろう。」


アルファは、その場で使い捨てライターほどの弱い火を指先から出現させてみせた。とてつもない雑魚能力に、少しガッカリしてしまう。


そして彼は火をつけたまま、アビリティについての説明を続ける。


「だが二撃目の威力が、そこら一帯を焼け野原にするほどだ。ああ、勿論一度目に発動した時の魔法の詠唱は[一言一句]間違えてはならない。」


彼はその場で火の威力を強くし、俺の顔と同じくらいの大きさまで火を伸ばす。


納得出来たような出来ないような顔をする俺に、アルファは気にせず話を続ける。


難しい顔をする俺の目の前まで歩いてくるが、相変わらずその顔は光に包まれて視認することが出来ない。


彼の顔を見ようとすればするほど、視界がボヤけてたちまち何も見えなくなる。


そして彼は火を灯したまま、俺の顔の前でその火を消してみせた。


「三撃目を放とうとしても、発動されない。二度と発動はされない。それに君のアビリティはクールタイムが酷く長いんだ。」


あぁ......はぁはぁはぁはぁはぁん?


「じゃあ魔法自体、大事に使うってこと?」


「ん?私の話を聞いているのか?クールタイムがあるからすぐに使えと言ってるんだ。アビリティのクールタイムを無視して使おうとすると、更に威力が弱まる。だから、一撃目は転生直後にどんどん使っておかないと、いざと言う時に強い魔法を放つことは出来ない。あぁ、ちなみにクールタイムは[一ヶ月]だ。本当は、そこまで干渉してはならない決まりなのだが......そこは私のミスだ。」


え、なにそのゴミアビリティ......一ヶ月間ってそんなことサラッと混ぜてくんなよ......じゃあ、最初はどうやってもまともに戦えないってこと......?魔の根源ってことは、RPGよろしく魔物とか出るってことだよな......?


ほぼ、魔法無しの異世界転生......一ヶ月生き残れるかな......


そんな不安げな俺の様子を察したのか?彼は優しい声で語りかけてくれた。


「もちろん、手助けはする......さ。さあ、そろそろ時間だ。目を閉じて。それでは行くぞ。是、散ルハ我ノ夢ノ理カ、疑ウハ今、友ノ毱ノ花カ。【リィンカーネーション】」


言われるがまま、瞳を閉じる。


次第に、暖かい風に包まれ......


意識を手放した。


何も変わらない平凡な日常がどれだけ幸せだったか。


この時の俺は......


知る由も無かった。


これから起こる......


地獄に。


これから起こる......


最期に


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