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第9話 情報というのは得ようとしなければ手に入らない

「手がかりが無くなっちまったな」


「そうっすねぇ」


「そうっすねぇ。じゃねえだろ。それを探すのがお前の仕事だろ。必要最低限の仕事もしないならマジで雇わねえぞ」


「そ、そんな……完璧超人の私でも一切手がかりがない物を探すのは無理っすよ」


「その手がかりを殺したのがお前だけどな」


 ポンコツすぎて王国の諜報機関で幹部級になったどころか、所属していたことすら疑わしいぞ。


「私は……私は……」


 少し言い過ぎたか? だが俺は間違ったことを言ったつもりはないし、そもそもこんなにメンタルが弱くて王国の諜報機関で働けたのか? それにしても黒幕を探すために情報屋を使うしかないか……あいつ金にがめついから、頼りたくねぇんだよな。


「私はこの地上げ屋と繋がっている黒幕を知っているから、わざわざ調べる必要はないっす!」


 ……ん? 今こいつなんて言いやがった? 俺の聞き間違いじゃなければ、黒幕のことを元から知っているみたいなことを言ってなかったか?


「ぼーっとして聞いてなかったから、もう一度言ってくれ」


「黒幕をわざわざ調べる必要はないっす!」


「ふぅ、わざとか? 普通は最初から言えってことだと分かるだろ」


 ありがちなことしやがって、わざとやっているとしか思えないな。もしこれが素なら、ポンコツだけじゃなくて天然属性も持っていて、元諜報員とかいうキャラモリモリで、物語の登場人物みたいな人間だぞ。


「最初っからすか? 仕方ないっすねぇ。よぉーく聞いといて下さいよ」


 ふぅふぅ、抑えろ。ここでキレてたらまた話が止まっちまう。こいつの言葉は頭を空っぽにして聞くくらいがちょうどいいのかもしれないな……。いや空っぽで聞いていたら、真面目な報告が聞けねぇじゃねぇか!


「ふぅ、ちゃんと聞いてたっすか?」


「ん?」


 やべぇ、こっちから聞いておいて全く聞いてなかった。まあ、念の為聞いただけで大体分かっていたから、別に聞く必要はなかったから聞こうが、聞かまいが関係ないけどな。


「あー、お前が元々地上げ屋と繋がっている黒幕を知っているってことだろ」


「チッ」


「なんで舌打ちしやがった」


「話を聞いてなかったら、そこを突いて就職後の待遇をできるだけ良くするようにしようと思っていたっす!」


「はぁ、馬鹿正直に言う必要はないだろ。言わなきゃ分からなかったものの……」


 馬鹿正直なやつは諜報員に向いてないだろ……まさか全部演技で俺の事を嵌めようとしているのか? もしそうなら相当な女優だぞ!? ――いや、今のこいつを見て分かったわ。こいつはただの馬鹿だ。

 今のこいつは俺の言葉の意味が分かっていないのか、首を傾げてやがる。


「はぁ、まあいい。それで黒幕は誰なんだ?」


「それは……」


「なんで溜める必要があるんだよ!」


「マ、フィ、ア」


「可愛らしくマフィアと言ったところで、一切可愛くねえぞ。それどころか、なんかキモイぞ」


「あー! キモいって言ったすね!! 麗しき女の子にキモイなんて酷いっすよ!!」


 確かに麗しき女の子に違いないが、それは見た目だけの話だ。中身を鑑みると男と変わらないだろ。しかも自分に不都合なことがあると暗器を振り回すなんて、一般の男以上に危ないだろ。

 ……はぁ、それにしてもマフィアか。この街のマフィアは表の顔を持っているから、色々手回しに金がかかりそうだ。


「はぁ」


「なにため息ついてるんすか。私が居ればマフィア程度簡単に潰せるっすよ」


「俺はこの街に住んでて、これからも住み続けるつもりなんだ。だから諜報員と違って今後のことを考えて根回ししなきゃならないんだよ」


「根回しっすか? 私も同行するっすよ!」


「……面倒くさくなりそうだが、今後のことを考えると仕方ないか」


「声に出てるっすよ!? 私のこと面倒くさく感じるんっすか!?」


 俺は後ろでガヤガヤしているサイカを無視してスラムの道を進んでいく。

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