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勇者は正義感が強いという固定観念はやめてくれ  作者: Umi
第4章 蜘蛛たちのスタンピード編
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第58話 コメディと戦闘シーンはスラスラ書ける

 どんだけ女王蜘蛛にヤられていたんだよ!


「これは街を守るためにやるんだから、この騒動が終わった後に訴えるとか止めろよ」


「んっ、分かった」


 俺はルナのことを背負った。やはり戦場を経験しているルナは筋肉量が多くて、この身長にしてはかなり重いな。


「今重いと思っただろ」


「今の俺に暴力を振るったら、お前をケツから落とすことになるぞ」


 こいつはバカだから殴って来そうではあるが……流石に非常事態でもあるから、殴って来なかったか。こんな非常事態に俺もふざけてられないから、ルナの拳でふらついたりしないけどな。


「お前も付いてくるのか?」


「当たり前なのじゃ! 私は主人に従順なメ〇ブタじゃからな!!」


「いや、俺の物じゃないだろ」


「はうあ! 物扱い――私のような魔族はブタですらないってことじゃな!!」


 めんどくせぇ! こいつは放置するのが一番マシな気がしてきた……いや、放置したらしたで、放置プレイとか言って興奮しそうだから、こいつに関わった時点で、俺の人生は一生ドМに絡まれる人生になっちまったんだな。


「もう、いいよ。お前は俺のメ〇ブタだから、蜘蛛系魔物の討伐を手伝え」


「かしこまったのじゃ!」


 女王蜘蛛は掌から蜘蛛の糸を射出して、生い茂る木々にくっ付けてはぶら下がり、くっ付けてはぶら下がりを繰り返して森の中を飛び回ってる。まんまスッパイダーメンの移動だな。

 それにしても目のやりどころに困る。何とは言わないがブルンブルンと大きな果実が上下に揺れて、蜘蛛の糸でできたサラシから実が(こぼ)れそうになっている。


「あー、エロいんだぁ! 勇者マサヨシエロいんだぁ!!」


「……あれだけ熱弁しておいて、俺に付いて来ねえと森も進めねぇのか?」


「ちっ、無視かよ。別に魔物なら俺一人でも簡単に倒せるが、お前に付いて行った方が楽だろ」


「やっぱりお前の方がクズの称号が似合ってるぞ」


「……」


 無視かよ。まあこっちも無視はしているから人のこと言えないが……いや、俺が無視したのはふざけた煽りみたいな、ネタみたいな言葉だったが、俺の言葉は物語の本筋に関わって来そうな言葉だ。この物語はクズをメインに据えた物語なんだから、クズって言葉が出て来たら返すのがこの物語の鉄則だろ!!


「メタいこと思うなよ。そもそもこの作品は伸びを気にしてコメディチックに移行したんだから、難しく考えなくていいんだよ」


「いや、お前の方がメタいだろ! そもそもコメディチックに移行したとはいえ、今は物語の本筋も本筋、それどころかこの章の一番盛り上がるところなんだから、難しく考えた方がいいだろ」


「今の発言は全てメタいぞ」


「それも」


「いやそれも」


 意味のない会話、俺たちの間にあるのは、相手より先に止めることは絶対にないということだけだ。


「はよ走れや」


 そんな言い争いに終止符を打ったのは、ようやく無限に続いていた喘ぎから解放されたルナの拳だ。なぜか関西弁と共にな。関西弁ってなんだ? 関西ってなんだ?

 そんな無駄な思考に頭を持っていかれたのは、確実にルナの拳のせいだ。


「もう動けるなら降りてくれないか?」


「ほら早く行け」


「無視かよ」


 そもそもこいつは初めて会った時から人の話を聞いていなかったから、特にツッコむ必要はない。こうやって言葉にしてみると、こいつも十分なクズだよな……サイカも職場の上司を殴ったクズだから、ウチに残った常識人はルーダとサイカだけか。ウチは奴隷の方がまともな稀有な――いや、奴隷を買っているような家はまともじゃないから普通か。

 

 これ以上ネタに走っていたら蜘蛛たちのスタンピードが街に辿り着いてしまう可能性があるため、仕方なくルナを背負ったまま、街を目指して走り続けた。



ネタで終わってしまいました。

次回こそはスタンピードとの戦闘が始まります――たぶん。


皆様に☆やブックマークを押していただけると、ルナの態度がほんの少しだけ和らぎますのでお願いします

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