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勇者は正義感が強いという固定観念はやめてくれ  作者: Umi
第4章 蜘蛛たちのスタンピード編
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第57話 最近は温度差が酷すぎて風邪を引きそうになる

「お前はヤるしかないのじゃ」


「何言ってんだおめぇ」


「はぅ、なんじゃ、その鋭い目は!」


 ……最初は正統派の魔族だと思っていたが、変態でマゾキャラとかいう救いようのないキャラクターじゃねえか! いや、変態もマゾも否定するわけではないが、四天王という地位に居る実力者が、変態を表に出して、内に眠るマゾも目覚めかけているなんて個性をてんこ盛りにしすぎだろ。


「お前はゴミだな」


 マゾ相手に罵倒するのが嫌になって棒読みになっちまった。


「何言っておるのじゃ?」


 気持ちを込めないと通じないのかよ。

 嫌だなー。俺の手で魔族、それも四天王をマゾに目覚めさせるなんて、今でも地に落ちている俺の評価がマントルまで行ってしまう。

 それに俺はSMなんて変態チックな趣味は持ち合わせていない。人の性癖のために無理して演じるなんて不自由な真似死んでもやりたくねぇ。


 だけどなぁー、ここで俺が罵倒して女王蜘蛛の気を逸らし続けないと、今ここでルナとヤるか、俺らまとめて殺されるのが確実なんだよな……人の命を背負ったSMってなんだよ、まったく。


「お前みたいなメ〇ブタの前でヤッてくれる奴なんているわけないだろ」


「はうあ!!――はぁはぁ、ヤらないと、こいつらもお前も死ぬんじゃぞ」


 気持ちわりぃ。罵倒されて気持ちよくなる意味が分からん。


「お前みたいに頭が湧いた奴に殺されるわけないだろ」


「湧いた!?――っ気持ちよくなんてないんじゃからな」


「気持ち悪いツンデレは止めろ!」


 ――ッ出せば出すほどこいつが気持ち良くなるだけなのに、勝手に口が動いて罵倒が出てきちまう。こいつが俺と出会ったことでドMに目覚めたように、俺もまたこいつと出会ったことでドSに目覚めたとでも言うのか!? いや、認めねぇ! 俺の中にドSの才能があったとしても、目覚めた理由は断じてこいつではねぇ!!


「はぁはぁ、気持ちよさが私を強くするのじゃ」


「まさか!? 俺の罵倒がお前の中にある性欲を倍増させて、お前に流れる女夢魔族(サキュバス)の血が魔力に変換しているとでも言うのか!?」


 こいつの気持ち悪さのせいで気づかなかったが、確かに最初出会った時と比べると魔力量が増えている。

 これ以上罵倒するわけにはいかない……だが身体が言うことを聞かない!


「……てめえみたいなのは強い必要ねえだろ。てめえに必要なのは俺の罵倒や攻撃に耐えられる頑丈さだけで十分だ」


「はうあッ!! 私はサンドバックしかできない無能なメ〇ブタですぅぅぅぅ!!!」


 女王蜘蛛……いや、メ〇ブタは完全に戦意喪失した。それと同時に俺の中にある何かが壊れちまった。


「ご主人、私はどんな命令でも遂行するのじゃ! だからご褒美に罵って欲しいのじゃ!!」


「俺に命令すんじゃねえ。まずてめえがやることはルナの拘束を解くことだろ」


「はうぁ、かしこまったのじゃ」


 ルナのことを執拗に攻めていた蜘蛛の糸がほどけていく。地面にペタリと座り込んだルナは、長時間の攻めによって体力を極限まで削られたらしく、息は上がり、顔を紅潮させている。そして何か求めるような顔でこちらを見ている。

 普段のルナからは一切感じられないなまめかしさを醸し出す今のこいつは、変態の相手をしたことで曲がった俺の性癖を王道へと押し戻さんとする。


「んっ助かったぞ」


「……お前の魔法があれば、蜘蛛の糸くらい焼き切れただろ」


「あっ、魔力を乱されていたから無理だった」


「…………蜘蛛の糸にそんな能力があったのか」


「んっ、決して私が未熟だったわけではない」


 いや、なんでこいつは解放されたのに喘ぎ続けているんだよ。あの蜘蛛の糸には魔力を乱す以外の効果でもあったのか? 無視し続けることが俺の身を守る最適解だな。

 それにしてもガルムはどこに行ったんだ?


「なあ、もう一人の男はどこに行ったんだ?」


「知らんのじゃ。確かに男を捕まえはしたが、私の拘束を抜け出してどこかに行ったのじゃ」


 逃げただと? ルナでさえ抜けることができなかった拘束を、魔に対する圧倒的優位性を持つ光属性とはいえ、中級止まりのあいつが逃げ出せるわけがない。

 それに逃げ出したとして、何処に行ったんだ?


「なんだよ、誰も死んでねえじゃん」


「ガルム……蜘蛛の糸からの逃れた後、お前は何をしていたんだ」


「そりゃあ勝ち目がないから隠れていたに決まってるだろ。それでお前と戦って消耗した女王蜘蛛を討伐しようと思っていたんだがな」


「最初から俺たちは捨て駒だったってわけか」


 しかし腑に落ちない。

 魔力を乱す効果を持つ蜘蛛の糸から抜け出した方法と、それができる実力を持っているのにも拘らず、逃げていた理由。この二つを聞かない限り俺の警戒は解けそうにないな。


「そんなわけないじゃないか。俺は四天王を討伐した英雄だぜ」


「今回の行動を見るに、その実績すら怪しい」


「疑うなんて酷いだろ。確かに俺は四天王の一人、戦場の処刑人の首を取ったぞ。まあ、わざと遅れて行ったおかげで、相手は疲労困憊だったけどな」


「お前の方がクズ野郎じゃねえか!」


「でもお前がクズ野郎と呼ぶ男は劣勢に立たされた人族を救った英雄と呼ばれるようになった……この世は過程じゃなく、結果が大事なんだよ。どれだけ過程が清廉潔白でも、結果を残せなければ意味がない。逆にどれだけ過程がクズ野郎だとしても、結果を残せば実績になる。そこに必要なのは、結果を残すために行った行為を隠し、良く見えるように飾り付けることなんだよ」


 こいつはクズなんかじゃねえ。自分のことしか考えられない自己中野郎だ。


「お前はあの戦争で英雄のような行動を取ったが、結果だけを見るとクズ野郎のように見える。お前が真逆の行動を取っていれば、お前もクズ勇者なんて称号ではなく、英雄と呼ばれていただろうな」


「……俺はお前みたいに英雄症候群に患った中二病患者じゃねぇんだよ」


「負け惜しみか?」


「いつお前に負けたんだ?」


「人生と言う最大のゲームで負けてるだろ」


 人生をゲームと言うか……確かに人生はゲームだな。遊び方は人それぞれあって、過程を楽しむ点が最も合っているな。


「お前が言うように人生がゲームならば、称号に縛られて、自由に生きることができないお前よりも、人からの評価など一切気にすることなく自由に楽しんでいる俺の方が勝ち組だな」


 これ以上こいつと話していても時間の無駄だな。


「お前はそうやって人の努力を喰らうスネカジリとして生きて行けばいいさ」


 ルナは良いとして、こいつはどうしようか……。


「ご主人」


「なんだ? 罵倒ならしてやらねえぞ」


「はう、冷たくされるのも気持ちいいのじゃ……じゃなくて、主人の罵倒で私に流れる女夢魔(サキュバス)族の力が強まったせいで、蜘蛛の力が弱まったのじゃ」


 すごく嫌な予感がするな。


「つまりなんだ?」


「私の配下だった蜘蛛系の魔物たちが自由になったのじゃ」


「……自由になったらどうなるんだ?」


「本能のまま、人を襲うために一斉に動き出すのじゃ」


「つまりスタンピードってことか……ルナ!! 早く戻って街の防衛をするぞ!!」


「あっ、まだ身体が自由にならない」


 まだ喘いでるのかよ!!



前半と後半の温度差で風を引くお話でした。


そして今回の章で出てくると言った新ヒロインは、暴食の女王蜘蛛さんでした。


彼女は変態、ドM、最強系ヒロインです。


順調に個性的なヒロインが増えて来ましたが、この作品が完結するまでにヒロインは何人まで増えているのでしょうか。


次回から本章のメイン、蜘蛛たちのスタンピードが始まります。


皆様に☆やブックマークを押していただけると、女王蜘蛛の性癖が多少マシになりますのでお願い致します。

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