第56話 執拗に責める蜘蛛の糸
「これが勇者にとっての告白か?」
豊満な胸を蜘蛛の糸を何重かに巻き付けることで隠し、蜘蛛の糸でできたスカートに隠されたところから伸びるしなやかな下半身は、見ただけで分かる。あれは鉄をも砕く強靭な脚だろうな。
「そのまま遠距離からやっていたら勝てただろ、なぜ近づいてきたんだ?」
「ふふふ、近接戦闘なら私に勝てると思っているのか?」
「勇者なんでなっ――」
ギリギリで受け止められたが、女王蜘蛛の手刀が俺の首を狙っていた。魔法なんて一切関係のない攻撃でここまでの鋭さを出せるなんて、言葉通りの実力はあるのか。
「ほう、これを止めるか」
それに俺が剣で受け止めているのに対して、こいつは素手で攻撃している。つまりこいつの肉体強度は最低でも鉄以上ってことか。
「俺はまだまだいけるぞ」
「ではお言葉に甘えさせてもらうぞ」
一度俺から距離を取って、勢いに乗せて手刀を放ってきた。一度見ている攻撃を受けることはない。しかしこいつの身体能力を考えると油断はできないな。
「くっ」
「声が洩れておるぞ」
「ぶつかった衝撃で出ただけだ」
勢いに乗った手刀は見切るのは簡単だったが、その速度と威力が想像以上で、剣で受け止めた際にかなり押し込まれてしまった。
かなり拙いな。俺自身はこのまま続けたとしてもダメージを受けることはないだろうが、先に剣の寿命が来ちまう。
「お前も分かっているのだろ? 私の攻撃に剣が持たないってことを」
「……お前は何を求めているんだ?」
「私についてくれば分かるぞ」
確実に罠だろうな。だがこのままジリ貧で武器を失った俺が負けるのが目に見えている。ここは罠に掛かりにいった方がマシな結末を迎えられる可能性が高いか。
「どこに行くんだ?」
「これは予想外……付いてくるがよい」
女王蜘蛛はこちらに無防備な背中を見せているが、攻撃を仕掛けようとした瞬間に手痛い反撃が帰ってくるだろうな。
しかし本当に目的が分からない。確かに魔族は人間の商会を乗っ取ったり、目的のためならば人と協力するのも厭わないだろうが、俺の命を本気で取りに来ないことで近づける目的って何なんだ?
「おい、ルナ!」
「んっ、あっ、んんっ」
森をある程度進んだ俺が目にしたのは衝撃の光景だ。
四肢を蜘蛛の糸に縛られ、口には猿轡のように糸を突っ込まれ、身動きも声も上げることのできないルナ。そんなルナは身動きを取れないなりに身をよじっている。女王蜘蛛の意思で動く蜘蛛の糸たちは、胸や何とは言えない場所を執拗に責め立てている。
一時期は一緒に暮らしていた女性のあられもない姿、流石の俺でも――いや、何でもない。
「私は女夢魔族の血を引いている以上、人間の生気も栄養になる」
「つまり何が言いたいんだ?」
「私の前でS〇――」
「いくらモザイクが入るからって言わせねえよ!!」
「ヤッてさえくれれば命を助けると言っているんだぞ!? 話しに聞けば、お前らは一つ屋根の下で暮らしていたのだろ? ならずっぽりやっているのではないか?」
「ヤッてねえよ。お前は痴女みたいな格好して、中身まで痴女なのかよ!! 普通はキャラのギャップとか考えてどちらかは変えるだろ」
こいつは激ヤバだった。戦闘能力もそうだが、一番はこの性格だな。いくら女夢魔族の血が流れているからって、普通は人の性交なんて見たくないだろ。
「そんなことどうでも良いのじゃ。ほら早くやるのじゃ。女の方はもう準備万端じゃぞ」
「最初の時聞こえた時に思ったが、お前も語尾キャラなのか?」
「私のどこが語尾キャラなのじゃ? 私は普通の語尾だぞ」
「じゃ」が語尾に思えるが、戦闘の時は消えていたし、こいつは変な奴との認識が正しいな。
「私の語尾なんてどうでも良いのじゃ。こいつのここはこんなにぬ――」
「はいダメでーす!!! それ以上はここでやっていい範囲を超えているぞ!!!」
「ここでヤッていい!?」
「お前終わってんな!!」
ド下ネタでした。
次も下ネタが続きますが、読んでいただけると嬉しいです。
人間社会に溶け込んでいる魔族がいる以上、四天王が変態でもおかしくないですよね。マサヨシの周りにも魔族が――あっ、聞かなかったことにしてください。
皆様に☆やブックマークを押していただけると、何とは言いませんがルナの描写が細かくなりますのでお願いします。




