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第48話 一部分だけを見て批判してしまうのが人間である

 二度寝から目覚めた俺を待っていたのは、俺のことを心配そうに見つめてくるサイカたちだ。

 お前たちのせいで気絶したはずなのに、一切表情に出していないこいつらはギャグ作品のプロだな。


「なあルーダ、俺の記憶が家を出たところから飛んでいるんだが、なにがあったんだ?」


「あっ! 水を取ってきます」


 ルーダは俺からの質問に答えず、慌てて部屋を出て行ってしまった。何を慌てているんだ? 俺が生きているってことは、気にするようなことは起きていないだろ。


「なあサイカ」


「あっ! 買い物に行ってくるっす!!」


 サイカもなのか……あっ、転んだ。涙を堪えながら逃げるように部屋から出ていったな。

 

 本当に何があったんだ? もしかして俺が眠っている間にウチの資金が尽きたとかか?


「なあルナ」


「なんだ?」


 おっ! ルナは反応してくれるのか。ただルナは変だから俺の質問の意図を理解して、しっかり返してくれるかどうかが心配だな。まあ何が起きたかを聞きたいだけだから、分かってくれるだろ。


「家を出てからの記憶がないんだが、何が起きたか教えてくれないか?」


「なら教えてやろう!!」


「ルナさん!」


 俺たち以外で唯一部屋に残っていたカエデが大きな声を出してルナを止めにかかった。大きな声を出せるようになったんだなと感心しつつ、カエデが大きな声を出してまで止めなければならない事案って、本当に何があったんだよ。


「今教えなくても何時かは知ることになるんだ。だから今教えても構わないはずだ」


「うっ……」


 珍しくルナが論破してやがる……ここにルーダさえ居ればカエデが負けることはなかったんだろうが、あいつは水を取りに行ったから――いや、長くね? 水を取りに行くのなんて一分もあれば十分だろ!!


 それにサイカも買い物に行くと言っていたが、あいつ金を持ってないだろ。ウチの金は俺とルーダが管理していて、あいつは管理している場所を知らないはずだ。もしかして万引き――!!


「ご主人様、サイカさんは万引きなんてしないよ」


「いや、あいつならやりかねないはずだ」


「そんなこと――あるかも」


 俺の反論に呑まれたな。

 そう、サイカなら万引きをやりかねないんだ。あいつが悪だからとかではない。あいつは万引きをやりかねないアホなんだ。


「私はアホじゃないっす!!」


 ポンコツサイカが罠にかかって出てきやがった。


「おー、それならよかった。帰ってきたのなら教えてくれ。誰も答えてくれなくて困っていたんだ」


「おい、私は教えるぞ」


 騒いでいるルナを無視しつつ、サイカを詰める。


「用事は済んだんだから、教えてくれるよな」


「えっ、あっ、そのー」


「私が教えるぞ」


 騒いでいるルナを――


「私が教えるって言っているだろ!!」


 俺は重傷者だ。流石のルナもいつもの過激なツッコミをしてこないと高を括っていたが、こいつは俺の想像の範疇を越えるアホだったみたいだ――

 ルナのツッコミパンチを喰らった俺の意識は闇へと消えて行った。


 ◇◇◇


「はっ!」


 三度寝を終えた俺を待っていたのは、俺を心配そうに見つめる女性陣の姿だ。てかデジャブを感じるな。


「やっと目覚めたか」


「今回も、前回もお前のせいだろ」


「お前の身体が弱いのが悪い」


 ひっどい暴論だな!? それに俺の身体が弱いんじゃなくて、傷があるせいで敏感になっているだけだ!!


「こんな時にも下ネタを考えるなんて、頭の中真っピンクっすね!!」


「いや、敏感を下ネタだと思っているお前の方が真っピンクだよ!!」


 全く、下ネタが苦手なサイカはどこに行ったんだか……。


「ご主人様のせいです」


 ルーダが何か言っているが、無視だ無視。


「全員揃っているから聞いておくが、俺に何があったんだ」


 部屋の空気がピシりと張りつめた。


「……お前らがここまで隠そうとしているのなら、相当なことが起きていることは分かっている。ならばできるだけ早く教えて対処した方がいいだろ?」


「ごにょごにょ」


 女性陣はルーダを中心に話し合ってる。いや、最初から伝えることに反対していなかったルナだけは参加していない。


「ふぅ、これから伝えることは、ご主人様にとって相当ショックなことだと思います。ですが復讐などといった無駄なことは考えないでください」


 代表してルーダが言うことにしたみたいだ。


「ああ、分かった」


 復讐だと? もしかしておばちゃんがやられたのか? しかしカタギのおばちゃんを直接手にかけたとなると、いくらペシムス商会であろうとタダでは済まないはずだ。だからこそ地上げと言うグレーゾーンを攻めたんじゃないのか?


「ご主人様が心配されているお店と店主は無事です」


「なら何があったんだ?」


「リンさんが亡くなりました」


「――ぇ?」


 耳に入ってきた言葉を頭は理解しようとせず、真っ白になるだけだった。そして理解すると同時に心は怒りで支配されていた。

 少し痛む身体を酷使しながらベッドから起き上がる。


「約束したはずです! 復讐などといった無駄なことはしないって」


 ルーダの言葉が俺の耳に入ることはない。俺の頭には怒りだけが存在している。


「ちっ、安静にしてろ」


 ルナの腹パンは俺を四度寝に追い込んだ。

 消えゆく意識の中、目の前で死にゆくリンを見た記憶が蘇っていった。


 ◇◇◇


「リン!」


「やっと目覚めたか」


「お前のせい――いや、お前のおかげで冷静になれた」


 四度寝から起きた俺を待っていたのは、ルナ一人だけだった。


「リンが斬られて、俺の目の前で倒れたところまでは意識があった。それ以降のことを教えてくれ」


「分かった。あれはあの日の朝――いや、もう昼頃だったな。いくつもの戦場を渡ってきた私の勘が、私もポテスト商会に行くべきだと言っていた。そして商館に着いた私を待っていたのは、すでに亡骸になっていたリンという女と瀕死のお前、そしてお前にトドメを刺そうとしている男だ」


「……俺が行く前は寝ていたよな」


「ああ、そうだな」


「もし起きていたら」


「リンという女は助かっていたかもな」


 頭に血が上り、ルナに掴みかかってしまった。


「あの女が死んだのはお前が弱いせいだろ」


「なんだと!?」


「お前があの戦争を生き残った英雄ならば、勝てる相手だったはずだ」


「なっ!?」


 俺は動揺で手を放してしまった。


「私は戦争で活躍すればするほど、大勢の人を守れる勇者に憧れた。だからここまで強くなれた」


 なぜ急に自分語りを……。


「そしてあの戦争を生き残った一人の勇者に憧れていた。憧れを知るため、貴族という立場を使って調べあげた結果、お前に辿り着いた」


「……そうか」


「だが戦争の英雄はクズと呼ばれ、その生活習慣もクズとなっていた。あの戦争に何があったんだ……何が、お前を身内を守れないようなクズに変えてしまったんだ」


「……俺は元からクズで、あの時は少し調子に乗っていたんだよ。だから今の俺が本当の俺なんだよ」


「あっそ。なら私は実家に帰らせてもらう。……世話になったから質問には答えてやるが、私はあいつを追い返しただけだ。せいぜい命を狙われる恐怖に怯えながら暮らしてろ」


 ルナは家から出て行った。



【解放奴隷編】終了になります。

勇者マサヨシが活躍して、結果クズと呼ばれるようになってしまった戦争は、もう少し後に明らかになります。


次回から【第4章 蜘蛛たちのスタンピード編】が開始です。


この章では新しいヒロインが出演します


大事なことなので二回言いますが、この章では新しいヒロインが出演します。


そして次回の話を投稿したら、二日に一回の投稿ペースになりますのでご了承ください。


皆様に☆やブックマークを押していただけると、マサヨシの心の傷が軽くなります。


これからもご愛読お願いします

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