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第46話 成り上がるためには圧倒的才覚か、暗いところに手を出す蛮勇が必要である

「地下に会長はいる」


 刺客のあとを付いて行くが、会長ってのはどちらのことを指しているんだろうか。

 もう乗っ取られているらしいから、ペシムス商会から派遣された奴が会長をやっているのか、元々ポテスト商会を運営していた奴が今も会長職を持っているのか、どちらにしても警戒する必要がありそうだ。


「よく来たアル」


 その語尾は聞き覚えあるものだった。

 服装は黒いロングコートと見た事のないものだが、その中に存在している肢体は見覚えのある恵体だ。


「リン、お前が会長だったのか……いつからだ?」


「勘違いしないで欲しいアル。私は普通に奴隷としてマサヨシさんに買われて、解放されると同時にこの商会に入ったアル」


「……会長になったのはお前の才覚ってことか?」


「それも違うアル」


「なんだと?」


 意味が分からないな。ポテスト商会は、才覚のない奴が成り上がれるほど、小さい商会じゃないだろ。

 色々考えてみて、1つの結果に辿り着いてしまった。もしかしてポテスト商会が乗っ取られた原因って……。


「たぶんマサヨシさんが考えている通りアル」


「お前がポテスト商会で成り上がるためにペシムス商会の手を借りて、その見返りとして傘下に入ったのか」


「その通りアル。会長という立場になれるとは思ってなかったアルが、成り上がるためにペシムス商会の手を借りたアル」


「……金には困ってなかっただろ。なぜそこまでして成り上がりたかったんだ?」


「金は大事アル。金さえあれば奴隷になんてならずに済んだアル」


 ……やっぱり奴隷になったことを悔やんでいたのか? だが、俺は不自由がないどころか、普通の家庭よりいい暮らしをさせていたぞ。


「ご主人様には分からないアル。いくらいい生活を送れたからといっても、奴隷という身分には変わりないアル。人はマウントをとる生き物で、口には出さずとも随所随所で行動に出るアル。私にはそんな生活が耐えられなかったアル」


 心からの本音を言っているからなのか、俺の呼び方がご主人様に戻っている。

 リンはこんな気持ちを抱えて俺のところにいたのか……。


「言ってくれさえすれば……」


「ご主人様は優しいアルから、助けてくれたと思うアル。でもそんな惨めな私にはなりたくなかったアルヨ」


 ……リンは奴隷になっている自分が弱いともあれば、最底辺の人間になると思っていたのか。


 確かに奴隷は平民から落とされてなる身分だが、それでも犯罪奴隷以外は平民に戻れるし、奴隷差別は国が禁止している。

 それでも奴隷からしたら、肌で感じる差別的な言動があったのかもしれない……。


「……あの時、お前が俺を切る決断をしたのか?」


「急アルね……そうアル。私が命令して、マサヨシさんから魔物の素材を買い取らないようにしたアル」


「もう世間話はいいだろ。そろそろ本題に入れ」


「……そうアルね」


 ペシムス商会の刺客の男がリンと俺の会話を切って、本題を話すように促していた。

 やはりペシムス商会のおかげで会長になれたこともあって、頭が上がらないのか。


「私がマサヨシさんを呼んだ理由は1つアル」


「俺を専属で雇うためじゃないのか?」


 絶対に建前なのだろうが、皮肉るためにも言ってみた。


「地上げに協力するアル」


 完全にスルーされた。悲しい。


 現実逃避をしつつも、現実を見なければならない状況だ。俺が地上げを止める側の人間であるにも拘わらず、地上げに誘うということは、俺が乗らざるを得ない状況に追い込まれている可能性が高い。


「断ると言ったら?」


「穏便に済むはずの地上げが、痛い目を見る地上げになるアル」


 ……力ずくか。この男が地上げに来るのであれば、俺1人では守りきれないな。だが、今の俺にはルナやサイカが居る。あいつらの実力も加味すれば、守り切れる可能性が高いな。


「断る」


 刹那、俺の首を狙って刃が迫っていた。

 出会った時に全力を出せば勝てると思っていたが、俺が驕っていたみたいだ。


「くっ!?」


 攻撃してくることはある程度予想していたから受け止められたが、何度も止められるとは思えない攻撃だ。


「マサヨシさんを殺したくないアル。だから協力するアル」


 リンの悲しげな顔を見ると心が揺らいでしまうが、俺は全てを守れるほどできた男じゃねぇ。昔と今を天秤に掛けるのであれば、俺は今を守る。


「会長の言う通りだ。このままいけば、お前は死ぬことになるぞ」


「こんなクズでも勇者なんで、簡単には死なねぇよ」


 息巻いてはみたが、かなり劣勢に立たされている。

 俺は、男が放つ斬撃に対して後手後手に回り、攻めに転じることができていない。それどころか少しずつ斬撃を受け止めきれずに掠め始めている。


「チッ、魔法のカラクリさえ分かれば」


 そう、こいつの動きは魔法を使っているとしか思えないものだ。俺から見て右側から攻めてきたはずなのに、斬撃を受けたのは左腕だ。そんな攻撃がランダムに飛んでくる。

 

 逆に言えばカラクリを見破らない限り、俺は攻めに転じることはできない。


「出血が増えているぞ」


 血で濡れた口を拭った。



刺客さんは強いですが、魔法がない剣術だとマサヨシの方が圧倒的に強いです。

この世界の魔法というのは、かなりのアドバンテージになります。


次回も戦闘が続きます。


皆様に☆やブックマークを押していただけると、リンが報われますので何卒お願いします。

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